表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リモート会議してたらダンジョン管理者になって、改善してたら魔王に定義されました  作者: 遠藤 世羅須
第二章 魔王編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/31

第二章 第4話 死んだらどーなる

シズクの厳しい訓練の最中、直人はまた衝撃の事実を知ることに。魔王は忙しい。

訓練の合間。

シズクは当然のように「休憩」を宣言した。

宣言だけは、優しい。


「補給します」

そう言って、銀のトレーを出す。

湯気。椀。

そして、また“鮮度”。

挿絵(By みてみん)

直人は椀を覗き込んで、無表情で言った。

「……これ、動いてる」

シズクは即答。

「鮮度です」

「鮮度って言葉の概念よ」


ミリアが横から囁く。

「直人さま♡ 魔界は“食べる=制圧”です♡」

直人が即切る。

「制圧ってそういう概念?」


直人は椀を持ち上げた。

湯気が頬に当たる。

匂いはうまそうだ。悔しい。

一口飲む。

うまい。さらに悔しい。

「……味は普通に良いんだよな」

シズクが淡々と返す。

「当然です。死にたくないので」


直人は止まった。

「ん?」

直人は椀を見つめて、喉の奥で嫌な想像を転がした。

ここは異界。魔王。魔物。

回復スープ(鮮度)。

危険要素しかない。


直人は真顔で聞いた。

「もしこれ食べて死んだら?」

「死にません」

シズクが即答する。

ミリアがニヤッとする。

「良い質問♡」

直人が睨む。

「良い質問なのか?」


シズクが、事務的に答える。

「異界の魔王さまは、異界の魔王さまです」

「それ答えになってない」

「なります」


直人は椀を置いて、低い声で言う。

「俺が死んだらどうなる」

空気が少しだけ締まる。

ミリアの煽り笑顔が、ほんの少し真面目に寄る。


シズクが淡々と告げた。

「復活します」


直人は眉を寄せる。

「復活?」

「魔界仕様です」

「いつ?」

「いまは短いです」

「短いってどれくらい」

シズクは一拍置いて言った。

「一年」

直人は固まった。

「一年」

「はい。異界の魔王さまはLv1なので」

「一年もいねぇのに“短い”って」

「魔界基準です」


ミリアが小声で付け足す。

「現実の一年じゃないかも♡」

直人が即座に顔を向ける。

「ミュートすれば短い…か」

ミリアは肩をすくめる。

「条件次第♡」

「どういうこと?」


シズクが言い直す。

「異界の魔王さまが“死ぬ”ほどの損害を出すと、現場が一年無人になります」


直人は息を止めた。

ここを1年空ける。

その間に扉が無防備になる。


そしてすぐに計算した。

仮に「ミュート中」に死んだとして、

こちらの1年は、現実では約30時間にしかならないが、

それは――現実の家庭で30時間も居ない。

完全に「行方不明」じゃないか。

仕事もあるが、何より妻と娘が残る。

そして扉の残留。

それらが“無人”になる。

さらに、ミュートが切れると、丸々1年……

挿絵(By みてみん)


「……死ねないな」

シズクは即答。

「はい。死なないでください」

直人は苦笑しそうになって失敗した。

笑えない。

「それは、俺が異界人だからか?」

「いいえ、魔界規定です」


ミリアが、珍しく煽りを抑えた声で言う。

「直人さま♡ だから訓練です♡」


直人は小さく頷いた。

「……分かった」


直人は椀を持ち上げ、飲み干した。

鮮度は最後まで鮮度だった。

目を逸らした。


直人は訓練部屋の魔物たちを見る。

止め方が分からない。

でも、止めないと壊す。

壊してばかりで装備使えなければ、戦えない。

「討伐」され死ぬかもしれない。

死んだら一年いない。

一年いないのは、絶対にダメだ。


直人は唇を噛み、シズクを見る。

「あんた、強すぎる。俺が魔王なのに、俺より強い」

シズクは平然と返す。

「当然です。異界の魔王さまはLv1です」

「そこを殴るな」

「殴っていません。評価です」


直人は息を吐いた。

そして、最も現実的な問いを口にする。

「……どうやったら、レベル上げられる?」

ミリアが、待ってましたとばかりに笑った。

「聞いちゃいましたね♡」

シズクは、武器に手を添えずに答える。

「まず、異界の魔王さまは――」


そこで、訓練部屋の奥で何かが大きく跳ねた。

魔物の炎が他の魔物を焼いたようだ。

遊び場の音が戻る。

会話が寸断される。

直人は拳を握った。

答えが欲しい。

答えがないと、次も事故る。


「続きを」

直人が言うと、シズクは一歩だけ近づいて、淡々と告げた。

「その前に訓練です」

「容赦ないな」


「……少しだけな」

シズクが即答する。

「はい。少しだけです。壊すので」

「壊さない」

「確定的未来です」


シズクが淡々と告げる。

「課題。泣かせず止める。三十秒」

「短っ」

「異界の魔王さまの集中が三十秒しか持たないので」

「俺弱」

「評価です」


直人は“触れずに止める”を思い出し、角に意識を向けた。

魔術。出力制御。

やり方は分からない。

でも――“圧”なら分かる。


直人は小さく息を吸って、吐いた。

「……落ち着け」

声じゃない。感覚で。


魔物たちの動きが、ほんの少しだけ鈍る。

スライムの跳ねが低くなる。

ゴブリンの木剣が止まる。

「お」


直人が手応えを感じた、その瞬間。

床の石が、ミシ、と鳴った。

直人は慌てて出力を引っ込めた。

「やばっ」


シズクが即答。

「はい。やばいです」

「床が?」

「床もですし、異界の魔王さまもです」

「俺が危ない?」


ミリアが横で、まだ少し不満げに口を尖らせている。

「夜にしないから、雰囲気が……」

直人は即切る。

「廃止」

ミリアが露骨に拗ねた。

「……は~い♡」


「次回です。異界の魔王さまは、今日はもう壊しそうなので」

「くっ」

ミリアが、ぬるく笑う。

「壊すの得意♡」

「うるさい」


訓練部屋は今日も賑やかで、

直人の胃だけが静かに重くなっていた。

挿絵(By みてみん)

(つづく)

段々紐解かれる呪縛。魔王の仕事はまだ端緒についたばかり。次々と「仕事」が続く。

相変わらずシズクにディスられる直人。よく胃がご丈夫で(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
読ませていただきました。 最新話まで読ませていただいたのですが、直人が巻き込まれ、魔王になっていく展開が斬新で面白かったです。 ミリアちゃん、ビジュも、言葉使いも可愛くて推せました。 面白かったのでブ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ