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リモート会議してたらダンジョン管理者になって、改善してたら魔王に定義されました  作者: 遠藤 世羅須
第一章 定義してください

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第17話 そして面接

何やら求人サイトがあるのか、スカウトメールが飛んで、候補者が面接に来る。直人は管理者として面接に臨む。

呼びかけに答えて来たのは2人(2匹)だった。

まずは1体目。

面接室に、巨大な影が現れる。

鱗、翼、金の目。ドラゴンだ。

ドラゴンは座らない。ホールから動かない。

机のある場所は天井に頭がつかえるからだ。

直人は即座に理解した。

(狭い)

ドラゴンが開口一番、言った。

「狭い」

挿絵(By みてみん)


直人は言い返す。

「……すみません」

ミリアが耳元で囁く。

「直人さま、“すみません”♡」

直人はハッとして口を閉じた。

「……いや、違う。狭いのは仕様だ」


ドラゴンは鼻を鳴らす。

「安い」

直人はホワイトボードを見る。

(名誉、昇進ポイント、時々肉)

「待遇の話なら、調整――」


ドラゴンが被せた。

「飯がまずい」

直人が固まる。

「……飯?」

ドラゴンは真顔で言った。

「焼けてない肉は嫌いだ。焦げも嫌いだ。骨は抜け。ソースは二種。あと、量が少ない」

ミリアが小声で言う。

「グルメクレームです♡」


直人は低い声。

「世界の最強生物が、社食に文句言うな」

ドラゴンは続ける。

「あと、空がない。飛べない」

「ここダンジョンだぞ」

「不満だ。辞退する」


淡々と、ドラゴンは姿を消した。

ホワイトボードに赤字で表示が出る。


【選考結果】ドラゴン:辞退(理由:狭い/安い/飯がまずい)


直人は机に額を当てた。

「何でダンジョンと分かってて来たんだ?」

「面接ってこういう地獄だったか」

ミリアが明るく頷く。

「はい♡ よくある♡」

「ない」


4 第二候補:デーモンロード


空気が変わった。

温度が、少し下がる。

影が、きれいに揃う。

次に現れたのは、背の高い男――いや、“男の形をしたもの”だった。

角、黒衣、静かな威圧。

目が笑っていない。


ミリアが楽しそうに言う。

「第二候補♡ デーモンロードさまです♡」

直人は囁く。

「“ロード”って、上位互換じゃないか」

「しかも、そのまんま『魔王』じゃないのか?」

「デーモンロードは“魔王”ではありません♡ この迷宮の“鍵”を持っていないので」

「採用できるのかよ」

挿絵(By みてみん)


デーモンロードは椅子に座り、指を組んだ。

「貴様が魔王か」

直人は即答した。

「違う」

ミリアが即答した。

「魔王です♡」

直人が睨む。

「やめろ」

デーモンロードは口角だけ上げた。

「ふむ。面接か」


直人は現実の言葉に寄せる。

「採用の一次です。条件は――」

デーモンロードが手を上げて遮る。

「条件など要らん」

直人が眉をひそめる。

「……では何を」


デーモンロードは淡々と言った。

「勝負だ。

貴様が私に勝てば、私は働く。

貴様が負ければ――私が魔王になる」

直人は一拍遅れて理解した。

「採用面接じゃない。乗っ取りだ」

ミリアが嬉しそうに拍手する。

「面接っぽいですね♡」

「どこがだ」


直人の脳が仕事モードに入る。

勝負を避けたい。

しかし避けると、園に開いた入口が広がる。

最悪だ。


直人は一度だけ、現実のミュート表示を確認した。

ミュートはON。時間は稼げる。

だが無限じゃない。


「勝負の定義は」

直人が言うと、ミリアが息を呑んだ。

デーモンロードの目が細くなる。

「ほう。定義を求めるか」


直人は続けた。

「殺し合いは却下。現実側に影響する」

ミリアが頷く。

「コンプラです♡」

直人が小声で言う。

「そこで使うな」


デーモンロードは笑った。

「ならば、支配だ。

この迷宮を、いかに早く“掌握”するか」

直人は即答した。

「KPIが嫌だ」

ミリアが囁く。

「直人さま、KPI好きなくせに♡」

「好きじゃない。慣れてるだけだ」


デーモンロードが言った。

「ルールは単純だ。

貴様は“管理者の杖”を使え。

私は素手で行く。

このフロアを、先に自分の色に染めた方が勝ちだ」


直人は嫌なことに気づく。

(杖がある=権限がある)

(権限を使う勝負=現実の仕事と同じ)

(俺が一番得意で、一番嫌いなやつ)


直人は低く言った。

「……わかった。勝負する」

ミリアが拍手する。

「魔王さま、宣戦布告です♡」

直人が睨む。

「煽るな」

デーモンロードは立ち上がり、薄く笑った。

「負ければ、貴様は“管理者”ではなくなる。

ただの人間に戻れ」


直人は、その言葉だけは許せなかった。

「……戻るのはいい。

だが娘の幼稚園に手を出すなら――勝負じゃ済まない」

一瞬、デーモンロードの空気が重くなる。

しかし次の瞬間、愉快そうに笑った。

「よい。怒りは強さだ」

ミリアが直人の耳元で囁く。

「直人さま、感情が燃料です♡」

「やめろ、燃やすな」


5 勝負開始


面接室が消え、迷宮フロアが“盤面”のように俯瞰表示される。

管理者の杖のUIが、勝負モードに変わった。


【対戦開始】

直人:管理者(杖あり)

デーモンロード:候補者(杖なし)

勝利条件:フロア掌握

禁止:現実側干渉(※努力目標)


直人は思わず呟く。

「努力目標って書くな」

ミリアが笑う。

「書きやすいので♡」


迷宮の奥で、デーモンロードがゆっくり歩き出す。

触れただけで影が伸び、空気が変わる。

“支配”が、始まっている。

挿絵(By みてみん)


直人は杖を握り直した。

修繕のための権限。

形状変更のための権限。

そして、現実を守るための権限。

「……やるぞ。迷宮を“管理”する」

ミリアが、最高に楽しそうに言った。

「はい♡ 魔王さま♡」


現実では、幼稚園の朝はまだ終わっていない。

その裏で、直人の“採用面接”は、勝負へ変わった。


次回、第18話。

デーモンロードとの“掌握戦”が、迷宮そのものを変形させていく。


(第18話に続く)

怪我療養中だったのですが、2月から仕事に復帰することになりまして、何とか本作「第一章」を終わらせようと思います。あと数話です。よろしくお願いいたします。

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