幕間 『神託の男神(アポロン)』2
幕間 委員会2
「『絶望』との初戦は無事済んだようだな」
「はい。未来予測と逸脱した結果は見受けられませんでした」
「初の有人機戦ということでもっとも危惧していたのだが、安心したよ。……だが、最初に操縦席のハッチを開き合ったのはどういう訳だね?」
「『絶望』の意図ははっきりしません。しかし、前後の会話から考えて彼を軽く見ていたことからかと」
「確かに、この会話記録からすると、彼を舐めていたようだ。では、彼の方は?」
「何も考えていないからでしょう。相手が開けたから自分も、その程度かと」
「……無茶苦茶だな」
「はい、無茶苦茶です」
「しかし、……いや、いい。同じことを言っても仕方が無い」
「はい」
「……ところで、戦闘中に彼の人格が換わっていたようだが」
「いえ、普段からこんなものです。……ですが、確かに性格にある程度の偏重が見られたのは確かです。『戦闘』に直峙したのが最大の原因だと思われますが、恐らく、操縦技術を脳に直接書き込んだのが要因となったのでしょう。その記憶部分が使用された場合に戦闘意欲が刺激され、このような結果をもたらすのであろうと。現在、脳神経と精神の双方からの調査が行われています」
「問題はないのかね?」
「問題と言いますと?」
「つまり、そのことによる計画への影響や、最悪彼の命にかかわることにはならないのかね? 今彼を失う訳にはいかないのだが」
「生命への影響は、現在のところ考えられません。計画への影響ですが、好戦的になり勝利に対して貪欲になると言うのは、むしろ望ましいと思われます。検査の結果を待たねばなりませんが、いずれにしてもさしたる問題ではないかと」
「そうか。検査結果はこちらへも回してくれたまえ。今回は以上だ。では、より一層の努力を期待する」
「はい」