少女は、旅に出る。
旅に出ます!
「鈴~! 朝だよ~起きて~!」
と、リルのとっても元気な声で目が覚める。
「リル、おはよ。ふぁ~~」
あくびをしてググーッと体を反らして腕を伸ばす。
「ほら、今日は出発の日なんだから~」
あ、そうだった。昨日突然決めた旅立ちの日でした。学校の日じゃない! バンザイ! もう学校なんてものに縛られなくていい!
今日は旅立ちを後押ししてくれるように心地よく温かい晴天だ。
「よーし! これからたくさんの妖精に会いに行く! 出来たらでいいけど仲良くなりたい!」
「うんうん。とってもいい考えだね。」
妖精に囲まれるのは小さいころの夢だった。そんな夢を今思い出して、今はそれが叶えられるかもしれない環境にいるから今度は夢ではなく私の目標になった。
「じゃあ昨日のうちに準備を終わらせたから、あとは身支度を整えてご飯を食べて出発するだけだね」
そして昨日準備した動きやすい服装に着替え、リルが出してくれた瑞々しい野菜を食べてから。
「じゃあ、レッツゴー!!」
「れっつご~」
そうして私たちの冒険は今、幕を開けた──
***
はず。
なぜはずなのかというと、旅を始めてから、今までずっと、変わったところは植物が増えてそこら中にいっぱいあるというだけの、人が住んでいたころとほとんど変わらないであろう街をあるいているからである。
どうやら妖精たちは特に街並みは変えていないらしい。
これでは街を散歩しているだけの気分になってしまう。なので旅または冒険をしているような気分になるように歩く場所を変える。
今こそ、私達が発明した転移魔法を使う時!
でもここら辺の地形は覚えていないのでここら辺の地形を理解しているであろうリルに尋ねる。
「ねえリル~ここら辺つまらないから森に行きたいの。森ってどこら辺にある?」
「えっとね~……うんとね~……う~ん..................東のほう!たぶん!きっと!わかんないけど!」
「いやわかんないんかい!」
ついツッコんでしまった。
「え~だってそんな覚えてないんだもん!」
だもん!って言われましても。
「とりあえず転移してみよう。そこがちゃんと森だったらもちろんいいけど、どこかわからないところに出ても、それもワクワクの冒険だね」
「うん。役に立てないのは悲しいけどどこに出るのかわからないっていうのもドキドキのワクワクだね!」
それ悲しいと思ってる?と思うようなわくわくした様子を隠し切れないリルが言っていた。
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