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やっと、新たな風景が......。



 

 どうしようかっていうのはね、ほら、私ってさ、なんか朝起きたら異世界にいました、みたいな状況なわけで。

 それはまだいい。

 でももっと大変なのは、成り行きでここまできてるってこと。

 とりあえず好きなことをやっていた。思いついたらすぐに行動しているし、やりたいことはやっていると思う。みんなでわいわいね。後先考えずとも平和に過ごせていた。


 でも、今はどうかというと。

 ひとの呪いを解こうとしてる、それで危険な場所に行こうとしてる、すごそうな闇の妖精とやらに会う、光の巫女と言われた、そして務めを果たせとのこと。などなど考えればいくらでも出てきそう。

 もう後戻りができないよね。

 そろそろいろいろ考えなくちゃ。

 でも、私がもともと生きた二百年前とは全然違うから、分からないことがたくさん。というかたぶん違う場所に来てる。いつどこでどんなことが起きるのか予想ができない。

 一度死んだみたいになって、もう一度違う世界で生きてるから異世界転生みたいなものよね。でも、別に帰りたいとは思わないから不思議なものだ。


 これからどう生きるのか。

 それを一応考えてはみるけど、それが果たして自分で決められるものなのかは、まだ分からない。

 本当に、何もわからない。なにを考えればいいのか、も。

 そもそも私って….....何歳なんだろう。二百歳超えてるとか言われたっけ。そしたら百年前に私はすでにいなくなっているはず。

 なのに生きてる。そしてシワシワにもヨボヨボにもなっていない。私は何者? 


 そう、滝行をしながら思った。


「す~ずちゃ~ん。何してるの?」

「みればわかる通り、滝行だよ」

『さすが主!』

「こういう時にしかできない、精神統一の一種! これで自分自身を見つめなおすの!」


 と言ったつもりだったけど、ちゃんと私の言葉が届いているのかは定かではない。



「すずちゃん。もう私たち寝るからね」

「もうそんな時間か」


 自分探しの旅に出て悩み過ぎててわからなかった。


「うぅ、さむ〜。もう寝よ。風邪はひきたくない」


 やっぱりよくわからなかった。

 とりあえずいまのところ保留にしておこう。


 私には心強い味方がいるから失敗してもフォローしてくれると信じて、私はひたすら私の人生を突き進むのみ!



***



「ねーねールアラス! あとはどんなお花持ってるの?」

「そうだなあ……。食虫植物にとどまらなかった食人植物とかあるよ」


 私が頼むと、ルアラスが見せてくれたのは、パック〇フラワーそっくりの緑の花──なのかすらよくわからないもの。

 食()だよ!? 怖すぎない? 見てる間にも、バックンバックン大きな口を動かして私を食べようとしてきてるんだよ!?


「持ってて大丈夫なの?」

「頭を上から押さえると……ほら、動かなくなるから」

「わぁぁ……! すごい! 怖くない!」


 最近、仲良くなったから? か、いろいろ育てているものを見せてもらえるようになった。前に空間魔法を教えたら私よりも使いこなしているようだ。今までどうしていたんだろう……?


「私もやってみたい!」

「……すずちゃーん。楽しんでるとこ悪いけど、このところ小さな子供にしか見えないのよ。いいの?」

「はっ!」


 アルテアに言われて、慌てて乗り出していた体を元に戻す。

 ……確かに、少し行動を振り返ってみると、この頃私は年上のお兄さんに懐く幼子のように見えなくもない。


「危ない危ない……。あっ! そうだ、ルアラスが私をちっちゃい子どもにしようとしてるんだ!」

「そうね、ルアラス。甘やかしすぎはダメよ」

「かわいくて断れなくてですね」

「わたしはすずちゃんの性格だと思うな~」

「……子どもでいいもん!」

「あ、開き直った」


 懐いているとは思われたくないが、仕方ないが、事実な気がする。


「お兄ちゃんを慕って何が悪い!」

「わたしもそう思う~。やさしいもんね~」


 同意する者を見つけて首を縦に振る。

 一緒にいて仲良くなるなというほうが無理なのでは?

 

「お兄ちゃんだって」

「そう、ですね」

 

 もう、私、精神年齢は小学生ですもん! いいもんね!



***



 そして日が昇って沈む。また日が昇り、沈んでいく。

 それが二十回、三十回と繰り返されたとき、やっと、久々に、山と壁以外の景色を見ることができた。

 抜けた先は、山の中腹。

 

「やっと脱出ーーーー!!!!」

「お疲れさま〜」

「もしかしたら終わりがないんじゃないかと思ったな」

「さすがに長かったわね」


 私は元気よく叫んだが、やはり精神的な疲労を感じる。いつかは出られると分かっていてもいつまで歩き続けるのかと思い続けながらだったからね……。真っ直ぐなわけじゃないから先が見えなくってさ……。


 ロディニアたちはまだ残りたそうだったが、長くレンだけにうちを任せておくのは心配だと言って帰ってもらった。なので戦闘力と移動スピードがだいぶ下がった。

 ロディニアたちには本当にお世話になった。ずっと乗っていたわけではないが、結構楽をさせてもらった。


 この山脈デカすぎでしょ……。闇の妖精とやらにも()()感謝はするけどさー。


 今いるここの標高はまだ高く、気温も低いが、山の斜面には青々と背の低い高山植物が生えていた。そして少し下には綺麗な小川があって、空も広いし空気はおいしいし。


 もう少し進んだところには草原になっていて、大きな岩がごろごろ転がっている。ここら辺の山、噴火とかするのかな。

 もっと遠くには、少し山に隠れているけど、立派なホントにファンタジーな洋風のお城がうっすら見える。


 私は思わずその場に座ってボーッと景色を見ていた。


 いつまででも見ていられるよ、この景色……。


「あ、次ってどこに行けばいいの?」


 私としてはずっとここら辺にいてもいいんだけど。

 

 返事がないので横に立っているルアラスを見上げた。

 遠くを見つめるその表情は複雑で、悲しそうな、苦しそうな、でもどこか柔らかい部分もあるような、なんとも言えない顔をしていた。

 方向からしてお城の方かな。


 これは絶対に何かある。行ったことがあるくらいじゃこんな表情にはならない。




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