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久しぶりに、飛んでみた。



「….....ごめん….....」


 場の空気を読み取ってか、ルアラスが謝っている。

 私からすると、ルアラスがいなかったら何も知らずに通り過ぎてたことになるから感謝したいくらいなのに。


「まあ、この子にずっと隠し続けるのは無理ってこと、わかってたし….....」

「──山に着いたらみんなで探しに行こう!」

「あ〜あ〜、やっぱこうなるよね〜」

「ここから真っ直ぐ進んだら見えてくるよね。じゃあ、飛んでいっちゃおう」

 

 疲れちゃうかもしれないけど、竜のため!

 そう思って早速行こうとしたけど、そういえばルアラスが風魔法使えるか知らないな。


「ルアラスって風魔法使って飛べる?」

「風魔法は得意じゃないから、飛んだこともないな」

「そっか。ううんっと、それなら私が連れてくから大丈夫。あ、ちゃんと掴まってないと落ちるから、手は絶対離さないでね」

「え、ちょ、もう飛んでくことになってる? じゃあ僕は手をつないでいればいいんだね? 信じてるから落とさないでよ」

「大丈夫! 万が一落ちたとしても魔法が使えるなら相殺できるはず!」

「空飛んだことないのに大丈夫なのかなあ」


 ルアラスは心配そうだけど、魔法を使えなさそうなら私の魔法技術で落ちても助けに行けるから大丈夫。

 ラレットにもらったコートを着て、せーのっと地面を蹴って空に飛び出す。そうすると、とても広い大きな森がどこまでもひろがっていた。

 広ーい! あんなに遠くまで木があったんだ! 思っていたよりも森の範囲は広いし、植物の大きさも形もいろいろ。私の知っている世界はぜんぜん狭かった!

 ひさしぶりに飛んでみたからとっても楽しくて、高揚感を感じる。そういえばこんなに楽しいことがあった。

 楽しすぎてくるくる回って、速度を上げてしまう。

 それでもラレットのコートのおかげで高度を上げても寒くないし、風を身体にまとっていると、吹いてくる風もあまり感じない。

 空は高く広く澄んで、どこまでも進めてしまえるとわかる。

 ….....ずっと前に進んでいればみんなが言う山脈が見えてくるはずだよね。

 高いところを飛ぶと、少し後ろに私が少し前までいた家が小さく見えて、雲は今なら掴めそうなくらい近い。その真っ白な雲のすぐ近くを、リル、アルテア、ルアラスと並んで風といっしょに空をひたすら進む。

 ──あ! ルアラスと一緒に飛んでたんだ! 

 我に返った私は、慌ててルアラスの方を向く。


「そういえばルアラスは大丈夫!?」

「──わあぁー。….....意外と飛べてる気がする」


 ルアラスは、飛ぶのは初めてなはずなのに、少しすると両手を広げて上手に体のバランスを取り始めた。

 少し酔っていそうな様子もあったけれども、目の前にいた鳥もヒョイっとよけているほどだ。


「心配はいらなかったかな〜?」

「普通の人ならいるはずなんだけど、才能があったのかな….....?」

「あのすずちゃんについていくとは〜….....正直びっくり」

「さっき回転してたときはさすがに目をまわしかけていたけどね。あと、ちょっと寒そう」

「まあ楽しいくなっちゃうのはわかるな〜」

「でもこれはちょっと速すぎるんじゃない? 今は周りに何もないからいいけど、突然何かでてきたらすずちゃん、すぐにぶつかっちゃうよー」


 私たちを横目にリルとアルテアが話していることは、気にしない。だが聞いていたことには聞いていたので、最後の意見にはうぐっとつまってしまう。

 でもわたしの様子を気にしている感じはなかったから、気づかれなかったと思う。





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