紙ひこうき大会、開催。~結果発表編~②
「みんな~ただいま~」
と、みんなに手を振りながら帰って来たものの、さっきの盛り上がりは何だったのかと思うほど、いつも通りの風景が広がっていた。
「あれ?」
「あら、すずちゃん。おかえり」
「アルテア、これはいったいどういうことなのでしょうか」
「紙ひこうき大会? 終わったよ?」
がーーーーーん。
私はその場で固まってしまった。
「け……結果発表は?」
「終了です」
「全部? 本当に?」
「うん。……ふふ」
なぜかアルテアが突然笑い始めた。
「え? なになにどうしたの?」
その時、横から
「はーい、ドッキリでした~」
という声が聞こえた。
「リル? どういうこと?」
「だ~か~ら、ドッキリだよ~」
出てきたリルもくすくす笑っている。
「こう言ったらどんな反応するのかな~って思ったから、みんなで作戦考えて、驚かせてみたの。ふふ、そうしたらすず、固まっちゃうから……っふふ」
話している間にも笑いが止まらないリル。
「じゃあまだ終わってないの?」
「いやいや、主催者を置いて勝手に終わらせるわけないじゃん」
「そ~だよ。何を勘違いしてるの~?」
妖精が集まってきた。その妖精たちも笑っている。
「──あんたらのせいだろー!」
「わ~すずが怒った~」
「にーげろ~」
「まてー! 私の悲しみを返せー!」
追いかけっこが始まった。
最初は怒りの気持ちが強かったけど、だんだん楽しくなってきた。
「ふふっ。楽しいなぁ」
「それはよかったね~」
と、いつの間にか隣にいたリルが言った。
「いや、楽しいけどまだ怒ってるから」
許していないからね、という思いを込めてリルを睨んだつもりだったけどリルは笑顔を崩さない。
「まあまあ。分かってるよ~」
「絶対に分かってないー!」
「はあっ、はあっ。疲れたー!」
「そうね……ふぅ」
「捕まったときはどうしようかと思ったよ~。みんな、ありがと~」
「いいよいいよ~」
リルとたくさんの妖精ははハイタッチをする。
さっきリルを捕まえたと思ったら、他の妖精たちに邪魔されて逃がしてしまったのだ。
その後は妖精がたくさん混ざってきて、ほぼ一対たくさん、の状態になった。
少し私に味方してくれた子もいたけど。
「あとちょっとだったのになぁ~」
「またやろうね」
「そうだね~。楽しかった~」
みんなで顔を見合わせて笑いあった。
「それでは仕切り直して、結果発表を続行したいと思います!」
「はい、さっきも言ったので知っているとは思いますが、飛び方部門の1位はすずさんです。まあ、あれに勝とうとは思いませんね。おめでとうございます。そして高度部門の1位は、こちらも分かっているかもしれませんが、エルラさんです! エルラさんは雲まで届きそうな高さまで紙ひこうきを飛ばしました!」
おお~。そこまで飛ばしてたのね。どこまで飛んだのか見た子もすごいわ。
私のところ適当じゃない? アルテア?
「そしてそして~、お次はかわいさ部門、ユニーク部門、かっこよさ部門、一気に1位を発表しまーす」
「かわいさ部門1位は、リルさん! 花をイメージしたデザインと、ふわふわとした飛び方が魅力的な紙ひこうきでしたね」
さっすがリル! 色も形も飛び方も、リルの性格が表れてるみたいで素敵だからね。
推薦したのは私だったんだけどね。別に身内贔屓みたいなのはしてないから! 本当にいい作品だから!
「ユニーク部門、ここでもすずさん! 確かに『紙ひこうき』と言っても、飛行機の形をしなくてはいけないことはないですからね。鳥の形がユニークでかわいい作品でした」
やっぱりねー! 自分のは流石に自分で選ぼうとは思わないよ。審査員のみなさん、ありがとうございます。
「かっこよさ部門、マックスさんです。ジェット機のような形が格好良いし、なんか輝いてましたね」
誰だろー。ジェット機ってすごいよねー。え? 輝くって何? どうやって輝かせたの? 格好良さマックスってこと? うん、ウケないよね。自分で恥ずかしくなったわ。
その後の結果発表では数人だけ知っている気がする子がいたくらいで、飛距離部門とか滞空時間部門には、特に仲良しはいなかった。
時々司会とか結果発表とかをしながら、こんな感じで紙ひこうき大会は無事に……ではないけどとりあえず終了した。




