紙ひこうき大会、開催。~競技編~②
ドアを開けて外に出ると、鮮やかな草木の色と、そこから滴り落ちる雫の輝いている様子が視界に広がる。
そして、足元にふわっとした何かがあるので見てみると。
「もう。やっと止んだ~。雨の日は眠くなるから今日の審査はどうしようかと思ってたよ」
と、さっきまで寝ていたらしく、あくびをしながらアルテアが言っている。
話せるし魔法も使えるけど、猫だからね。
「はーい! じゃあ続きをやるよー!」
手を振りながらそういって、競技を続行する。
──よし。ついにこの時が!
やっと私の番がきたのでみんなの前に立つ。そうすると、周りの目が一気に私に集中する。
緊張の一瞬。周りが私の一挙一動に注目している気がする。
私が手を振りかぶって思いっきり紙ひこうきを飛ばすと、紙ひこうきはまず羽ばたきながら上に昇り、くるりと1回転する。うん。まず最初は成功。まだまだそれだけじゃない。
今度はゆらゆら右に左にと飛び、大きく一周してから私のもとに戻ってくる。
それを私がパシッとキャッチすると同時に、拍手喝采が起こる。
これは……優勝なのでは?
そう思ったけれど、まだ後にも参加者はいるので、緊張しながらそれを見守る。
でも、私の鳥ひこうきより過ごそうな紙ひこうきはなかったから一安心。
すると、リルが勢いよく話しかけてきた。
「すずちゃんすずちゃん! 紙ひこうきすごかったね!! 頑張って作ってるな~とは思ってたけど、流石にあれは絶対予想できなかったよ! どんなのを作ったかいろいろ考えてたけど、予想のはるかに上を行く紙ひこうきだった! 本当にすご~い! やっぱりこれは絶対優勝しちゃうって!!」
「あ、ありがとう」
と、いつもより興奮して少し前かがみなリルに、気圧されながらも称賛を受け止める。
そこから少しして、高度部門が始まり、それからまた時が経った。
その時、少し周りがざわっとした。何だろうと思いながらその元を探してみると、1人の妖精を見つけた。
その妖精は、確かに紙ひこうきを持っていたのだが、それは炎を纏っていた。そんな紙ひこうきに周りはざわめいたのだろう。
まあ確かに飛ばす前の紙ひこうきに、魔法をかけたら反則とは言っていないから、一応ルール違反ではない。
「リル……あの紙ひこうきすごいね。目が釘付けになるくらいインパクトがある。見た目では負けたわ」
「うん。流石にあれには勝てないね。よくあの子こんなの思いついたね……」
燃えた紙ひこうきを持った妖精の正体は、エルラだった。
「あっ、こっちに気づいたみたい」
エルラは、驚いている顔で見ているであろう私たちに気が付くと、何だか誇らしそうな笑みを浮かべて手を振った。
何も言われていないけど紙ひこうきを思いっきり自慢されたような気が…。
エルラの紙ひこうきは見た目がすごいだけではなかった。
上に飛ばすところは他の参加者と同じだったのだが、どこまで上に行くか見ていると、いつの間にか米粒ほどになっていた。
え、すご。語彙力が急になくなったんだけど。
どういう仕組みになってるんだろう。後で聞いてみようか。
そして出番が終わったエルラは、私たちのところへ飛んできた。
「すーずちゃん! どうだった?」
「すごかったよ、本当」
エルラはとっても上機嫌で聞いてくるけど、もう普通のことしか言えない。
私の語彙力! もう少し頑張れないのか!
「やっぱりね! 最初に燃える紙ひこうきで注目を集めて思いっきり上に飛ばす作戦! 大成功!」
「仕組みを伺っても…?」
「紙ひこうきの仕組み聞かれちゃった! 聞きたいー?」
「もったいぶらないで早く教えてよ~」
そういったリルの隣で私は首をブンブン振って頷く。
あんなのを見せつけられちゃ、気にならないわけないでしょ!




