取引と、思い切り。
落ち着いて見ると、このルアラスさんは紫群青の瞳で、今更気づいたが顔立ちがとても整っている。低く澄んだ心地よい声で、背も高めだし、まるでアイドルのようだ。リアルではこんなきれいな人は見たことがない。
「私がここになぜ来たか。妖精から、森に妖精たちを集めて暮らし始めた人がいると聞いて気になったので、どんなものかと思いまして。それから君は魔法の才能があるようなので、少しだけ私に協力してほしいのです。…おや」
コンコン、とドアがノックされた。
そしてアルテアが入ってきて、私の向かい側に座っているルアラスを見て。
「お邪魔するね。久しぶり、覚えてる?」
「アルテア様、お久しぶりでございます。こちらにいらっしゃったのですね」
「うん、そうだよ。この子が気に入ったからね」
私の隣に座りながら言う。
「私も一緒に話を聞かせてもらってもいいかな」
「もちろんです」
私も頷く。
「話を戻しましょうか。協力してほしい、とはお願いしましたが、もちろんタダでとは言いません。協力してもらう代わりに、君がまだ知らない魔法をいくつか教えるのと、技術の向上のサポートというのはどうでしょうか」
新しい魔法と技術の向上ね。悪くはないけど協力する内容を聞いていないからなんとも言えない。
「ところで、協力の内容とは何でしょう」
「…僕と妖精についてなのですが」
「……」
あまり話したくない内容らしいが、しばらく長い間が空いたのち、小さな声でルアラスが話す。
「僕にかけられた呪いを解いてほしいのです。正しくは僕の血筋に、ですね」
の、のろい…呪いですって⁉
不穏な響きだ。全然少しじゃない様な…。できればそんなにかかわりたくないけど…。隣を窺うとアルテアは私の判断を待っている。
そして私の好奇心が顔を出してきて、思い切った決断をしてしまった。
「……良いでしょう。引き受けます」
私がそういうと、ルアラスは途端に安心したようで、そっと息を吐く。
「本当にありがとうございます。ですが僕がいくら頑張っても解く方法が見つけられなかったものなので、解けなかったとしても責めたりはしませんのでご心配なく」
今まで大変だったんだろうな。必死に解く方法を探し回ったり。
「あの、聞いて良いのかわかりませんが、呪いって痛かったりするんですか?」
「ああ、いえ、普段は特にありませんね。ごくたまに発作みたいな感じで一瞬苦しくなったりしますが」
そんなことを聞いたらますます大変だったんだろうな、と思う。早く解く方法が見つかればいいな。
その後お茶を飲んだりしてゆっくり落ち着くと、ルアラスが真剣な顔で話し出す。
「さて、僕が呪いにかかって縛られている経緯をお話しましょうか」




