プロローグ
この作品を見つけていただきありがとうございます。
連載スタートです。
至らぬ点もあるかと思いますが、お付き合いよろしくお願いします。
「…きて……起きて…」
ん?珍しいな。誰かが私を起こすなんて。今日も学校か……そう思いながら瞼を開くと、目の前にはやわらかな黄色い髪と桃色の瞳の、羽がついた小さな女の子がいた。小さいし、羽で飛んでるし、妖精? いや、そんなわけないか。ここ私の部屋だし。
「やっと起きたぁ。鈴ちゃん、寝坊しすぎだよ?」
「あなたは誰?何で私の名前を知っているの?」
そう、私の名前は一条鈴。ロングの黒髪を持つ、学校に行くのが面倒な中学生。ちょっと背が低い。ちょっとだよ。いえ、嘘です。
「あ、自己紹介がまだだったね~。私はリル。花の妖精だよ!」
リルはそう言いながらくるっと回った。
花の妖精…ホントに妖精だった。確かに頭に花が飾られているし、服も花びらっぽい。
「何で名前を知っているかというと、私はずっと鈴ちゃんを見守ってたからだよ!つ、ま、り、ずっと一緒のお友達!気軽にリルって呼んでね!」
お友達かぁ。なんでそうなるのかはわかんないけど、ま、いっか。
「見守ってたって言われてもあなたのこと見たことないよ?」
「妖精は普通の人には見えないの。でも、鈴ちゃんは寝ている間に覚醒して魔力が増えて、私が見えるようになったの~」
覚醒して魔力が…か。魔力ねぇ。いかにもファンタジーな世界って感じ。でも寝てる間って…そう簡単に覚醒しちゃうの?
リルにそう伝えると、リルは顎に手を当てながら話した。
「鈴ちゃんの場合は少し特殊だからなぁ」
リルはしばらく黙った後に言った。
「ほら、外を見てみてよ」
私は目覚めて初めて外を見た。そこには崩れた建物と、その上に広がる植物があった。これこそ、世界が終わった後といったの風景だ。
私の部屋はいつもと変わらずにいるというのに。
「あなたが知っている『世界』は無くなりました。もう行動を縛るものは無くなったから、これからは好きに生きちゃって! ……って言われたらど〜する?」
「えーー…………。どうするも何も……、それなら好きに生きるしかない、んじゃない? 状況がいまだによく分からないけど何があったか説明してくれる?」
「いいよ~。言いにくいんだけど、」
リルは説明を始めた。
「あのね、この世界は人間がいなくなって、動物も減ったの。だから私たち妖精が、生態系が崩れないようにそれぞれ役割を決めて、世界を支えているの~。短く言うと、こんな感じだよ~」
わあ、突然人類滅亡の事実発覚。私だけ残されて生きている? でも全然驚かない。逆にすごい話すぎて冷静な気もする。
まあ、たぶん現実を現実として受け入れたくない私の脳みそが、無意識に現実とーひしているだけ。絶対に信じたくないのね、と他人事のように思う。
でも流石に、次に聞いた話には驚いた。
「そして、今はそこから200年くらい経ってる。」
「……ん?」
しばらくの沈黙の後、自分ごととして、今度はちゃんと内容を理解した私は、
「えええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
と、思いっきり叫んでしまった。もちろん頭の中はパニックだ。どうしよう! じゃあ私は今何歳? 何歳なの? 少なくとも200歳は越えてるよね! どうしよう!
「リル、私、死んじゃうの?」
そうだったら困る! 青春も社会人も楽しみ切れてない!
「その心配はないよ~。肉体年齢はそのまんま。生きた年数が多いだけ」
リルの言葉と、やわらかいのんびりとした口調のおかげでほんの少し気持ちが落ち着いた。
お読みいただきありがとうございました。