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第8話 地雷?責任?

 

 「つかない、一向につかない。」


 リアカーを引きながら、真顔で少し怒りがこもった声で一言吐露した。

 ただでさえ昼間の騒動で疲れているのに、そこから歩きっぱなしだった。少しずつあたりも暗くなってきた。夕暮れ時って感じだ。

 一方のツィアは、道の方角を教えた後、歩き始めてから(何もしなくていいのかな)と言った表情で、おどおどした感じで、時折こちらをチラチラとみてくる。少し申し訳なさそうにも見える。

 確かに、こういったことは奴隷の仕事なのかもしれない。だが、

 (20代の男が、小、中学生ぐらいに見える女の子に、荷物を引かせている光景もなぁ。むしろ自分も見たくない。というより自分がそうなりたくない。)

 そう思ってここまで自分で引き続けていた。そういった部分は異世界に合わせるのではなく、あくまで転生以前からの価値観を引き継ぎ、持論で行こうと思った。ましてや、ツィアの主人になったわけでもあるまいし。

 そんなこんな、おもいつつも歩き続けていると、もう日が沈みかけていた。

 とりあえず、今日は切り上げるかと思い、足を止めた。

 そして、ツィアに「今日はもう切り上げよう。」といい一夜を超す準備を始めた。


 とりあえず、近くの丸太などを使い簡易キャンプ場っぽくできるだけ、環境を整えた。

 運がいいことに、毛布やらは昼の連中の馬車から何個か見つけてきた。本当に馬車を捨ててあの連中は大丈夫だったのだろうか。一応、自分たち分の物しかとらないようにしてきたが。

 (まぁ、襲ってきたのはあっちだし。)

 そう思い気にしないことにした。考えてもどうしようもない。

 そういったことを考えながら、食事の準備をした。多分、パンのようなものと何らかの肉と果物があったのでそれを焼いた。

 そして、食事を準備している際に気づいたことがある。果物も一応食料として積んできたのだが、食事の準備中に仕分けをしていると、傷んでいるものがあった。その傷んでいる部分を見ると、変なオーラが出ていた。これが、スキル欄にあった洞察力というものと気づいた。

 そして、食材が焼けツィアの分と自分の分を分けた。

 俺は、異世界なので変に思われるかと思い心の中でいただきますと言って、食べ始めた。

 

 まぁ、予想通りの味だったが久しぶりに食べたご飯だったのでとてもおいしく感じた。調味料なしで、あまり調理できなくても、極限状況に食べるとこんなにおいしいのだなと思った。そうやって、感動に浸っていると、全然ツィアが食べていないことに気づいた。

 「どうしたんだツィア、全然食べていないけど、体調でも悪いのか?」

 と問いかけた。すると、両手をこっちに振りながら、

 「ご、ご主人様と一緒に食事するなんてとても恐れ多いです!一緒に座っているだけでも本来罰則になるぐらいなのに...」

 そういって一向に食事を食べようとしない。

 だが、こちらとしても一方的に食べているのは、申し訳なくなってくるし、z正直、食べにくい。そのため、

 「これは、命令だと思ってくれてもいい。頼むから、ツィア一緒にご飯を食べてくれ。」

 と言った。そういわれたツィアは、動揺していたが、

 「ご、ご主人様が、そこまで言われるのなら。」

 といって、食べ始めた。すると、


 「うぅ、ぅ」


 とすすり泣く声が聞こえてきた。

 (ご飯が、口に合わなかったか?確かに別にうまくはないからな。)

 と俺は思った。前の世界の嫌な給食の献立の日を思い出して、心がきゅっとなり少し申し訳なくなった。なので俺は、

 「大丈夫か?口にあわなかったか?いくら命令っていったって、無理して食わなくていいからな?本当に。」

 と申し訳なさそうに言った。自分が命令などと言ったからという罪悪感もあった。

 すると、

 「ち、違うんです。こんなちゃんとしたご飯を食べたのは久しぶりで。」

 と涙を拭いながら言った。

 俺は、さっき(うまくないから)などと言った自分を殴りたくなった。いや、心の中で殴った。それと同時に、自分がいかに甘えていたかを悟った。(俺ってツィアと比べるとカスだなほんと)

 そして、

 「そうか、ゆっくり食べなよ、おかわりだって好きにしていいぞ。君はもう自由の身なんだ。もっと、自分のしたいようにしていいんだ。もっと、わがままも言え、俺に出来る範囲なら受け止めてやる。」

 と心ばかりに薪の火を見ながら言った。ツィアは、

 「はい!!」

 と泣き止んだすぐの顔で言った。そして、またご飯を食べ始めた。

 一生懸命、ご飯を食べているツィアを見て、この程度でいいなら、少しでも彼女に幸せを与えよう。そう心の底から思った。


 そして、夜ご飯を食べた後から時間が経った。

 ツィアは反対側の座った丸太に寝ている。俺が毛布を掛けてやった。相当、腹が減っていたのだろう。ご飯を食べた後も、俺が寝るまで待っていた。これも、奴隷時代に躾けられたせいなんだろうなと思った。

 空を見上げるととても星空が綺麗だった。

 そして、目をつむると今日の出来事が思い出してくる。

 (新しい必殺技ような技を身に着けて敵を追い払ったり、奴隷を見つけて呪いを解除してあげたり、最強なスキルを覚えていることを知ったり......ん?)

 その瞬間、あの四文字が自分の頭に全力疾走してくる。

 (これって、もろ()()()()では!?)

 俺は、固まってしまった。あれだけな〇う系にはならまいと息巻いておいて、ここまでの流れは思いっ切りな〇う系だった。

 俺は、頭を抱え、まるで頭痛にもがき苦しんでいる人に様にショックを受けた。

 だが、な〇う系の主人公ほど、善者の様に『誰でも僕の力で助けてあげよう』という感じはなかったはずだ。また、そういった思いで行動はしていなかったはずだと思った。

 だが、そこからまた気が付いた。

 「カハッ」

 その瞬間、ある二文字が胸を貫いた。

(な〇う系から、善者ぶりを覗いたらたたの()()では?)

 これが、な〇う系の世界の力なのだろうか、な〇う系の主人公と逆行しようとすればガチクズになる。これが、この世界の摂理なのだろうか。

 だが、動機はどうであれ、

 (ここまで人としての道を踏み間違えるようなことはいていないはずだ。ツィアもどうにか助けたし。)

 と思いどうにか自分をなだめた。

 しかし、これからどうするかが悩ましい。

 (助けた美少女の奴隷と一緒にイチャイチャしながら旅をするなんて、それこそな〇う系の王道の展開だ。だからと言って、ここにツィアを置いていくような、人道を外れたことはできない。)

 どうするかと悩んだ。だが、よく考えれば、

 (よく考えれば、ツィアは俺の奴隷なんかじゃないじゃん。元々ドワーフの村で奴隷にされたらしいし、ドワーフの村に帰りたがってたもんな。それを、今送り届けに行ってるわけもんな。何を舞い上がってるんだ俺は。)

 と一人で顔を赤くして恥ずかしがっていた。これじゃ、まんまな〇う系の主人公だなと思って反省した。

 

 まず、自分がやるべきことは一つ。ツィアをドワーフの村に無事に送り届け、家族のもとに帰すこと。これだけだ。

 だが、それと同時に、そうなれば、ご主人様呼びは他のドワーフの人たち誤解を与えかねないと考え、やめさせた方がいいなと思い、明日訂正させることにした。

 そう結論付け、奴隷商の馬車の中にあった、服に着替えることにした。スーツがだいぶボロボロなのとこの格好だと目立ってしまいそうだからだ。スーツを馬車から持ってきたカバンに入れ、服を着替えた。

 そして、いつの間にか寝てしまっていた。


 「起きて、起きてください、ご主人様。」

 ツィアの声が聞こえる。

 「んあ。」

 目が覚めると、朝になっていた。どうやらまた眠ってしまっていたようだ。 

 「おはよう、ツィア。起こしてくれたのか。」

 と背伸びしながら問いかけた。

 「もちろんです。こういったことも、奴隷の仕事ですから。」

 と言った。

 「あぁ、そのことなんだけど。俺のこと別にご主人様呼びしなくていいよ。」

 と言った。すると、ツィアの顔が真っ青になり、

 「な、なんででしょうか。私に、粗相がありましたでしょうか。」

 世慌てふためくように言った。そのため、

 「い、いや。そんなに慌てなくても。ただ、ツィアは俺の奴隷じゃないからそんな特別扱いしなくていいよ、って話なだけで。」

 というと、その瞬間ツィアは額を土につけ土下座をして、

 「私に粗相があったのでしたら、すぐに直します。なんでもいたします。だから、どうか...どうか...おそばに.......」

 泣きそうな声で懇願してきた。俺は、ツィアに近づき、ツィアの土下座をやめさせようとしながら、

 「ちょ、やめっ、やめっててば!お願い、お願いだから。土下座なんかしないで。」

 (こんな状態、人に見られれば、〔俺が〕殺されそうだ。少なくとも社会的には死ぬ。)

 そう思い、必死に土下座をやめさせようとする。どうやらまた、俺は軽はずみな発言をしてしまったようだ。

 「わ、分かったから、俺がツィアを捨てるなんてことはしないから。と、とりあえず。頭を上げてくれ。お願いだから。」

 というと、ツィアはゆっくり頭を上げ、

 「ご主人さまぁ~~~」

 とか弱い声で言い、目はウルウルしており、今にも泣きそうだった。

 俺は、

 「とりあえず、座って、絶対にツィアを捨てたりしないから。」

 そういって、二人座った後に話を始めた。

 

 そして、ツィアをドワーフの家族のもとに帰すこと、ドワーフの村ではご主人様呼びは良くないんじゃないかということなど、昨日、今後のことについて考えたことを話した。

 そして、あらかた話し終え、俺は最後に、

 「どうだ、今後の話?昨日一日考えたんだ。」

 言った。ツィアは下を向いていた。そこでおれはどうしたんだと問いかけると。

 「...ゃです」

 とボソッと言った。俺は、「えっ?」と聞き返すと。ツィアは、下をみながら、手に力をいれ、

 「嫌です。私は、ご主人様と一緒にいたいです。そのためなら、奴隷でも何でもいいです。」

 と言った。俺は、思いがけない回答に、

 「どうしてだ、あんなに家族を大切にしていたじゃないか?」

 と言い返すと、ツィアは、

 「確かに家族は大切です。ですが、私がそこに住んでも、主人のいない奴隷として連れていかれる可能性が高いです。もしかしたら、また同じ商人に襲われる可能性だってあります。」

 俺はそれを聞き、こういった。

 「そうかぁ、うまく住んでいけるようにどうにかできないものか。」

 と言い考える。だが、ツィアは、

 「ご主人様は、私のことが嫌ですか?」

 と言った。俺はとっさに、

 「いや、全然。むしろ、そこまで言ってくれてうれしいけど。」

 (マジでそう思う。ただ、こんな美少女相手にすぐOKするのも下心丸出しになるからなぁ。ましてや、当たり前に奴隷として連れて行くなんてどんなマッチポンプだよ、キモッてなるからな。)

 俺は、心の中でそう思っているように、いろんな欲を抑え込んでいた。ある意味、転生前の世界のおかげで、草食系で少し女性恐怖症にもなっていたのも抑えつけられた要因になっているかもしれない。

 それに反し、ツィアは、急に座っていた自分に抱き着いてきた、

 その瞬間、俺は、体が固まる。ツィアは、座っている俺に飛び乗るように、抱き着き、密着している。そして、俺の胸に向かってしゃべり始めた、

 

 「私の人生は、あのまま奴隷として呪いに蝕まれて死ぬ予定でした。ですが、ご主人様に助けていただいたことにより、その運命が変わり私は此処にいます。本来、死人だった私を生きた私として作ったのはご主人様なんです。なので、私の一生はご主人様に使ってほしいのです。もし、私のことが嫌で一緒にいたくないのであれば、ここで切り殺していただいて構いません。私は、その覚悟です。その覚悟でもう一度言います。奴隷でも何でも構いません。どんなことにだって使ってもらって構いません。私をそばに置いていただけないでしょうか?」

 そう、俺に泣き止んだ後の鼻声で抱き着きながら言った。

 俺は、正直、

 (お、(おめ)ぇ~)

 と思ってしまった。はっきり言うと、こんな覚悟なんて決めていない。切り殺すなんて絶対にできない。逆にツィアと一生添い遂げる覚悟なんてできていない。だって、ツィアをドワーフの村に帰してハッピーエンドと思っていたんだもの。そのように考えていたのにどうしてこうなった。

 「私、昨日ご主人様に『わがままも言え、俺に出来る範囲なら受け止めてやる。』言われてとても嬉しかったんです。奴隷になる前でさえここまで私のことを思ってくれる人はいなかった。だから、ご主人様に言われたように、もっとわがままになろうと思ったんです。ご主人様にもらった人生最後まで一緒にいたいって。それなら今殺されても構いません。」

 俺は、自分が原因だったことに抱き着かれたのを忘れるぐらいに悩んでいた。多分、顔は少しひきつっていたと思う。

 

 ここは、どうにか逃げなければと思い、

 「で、でも、ツィアの家族は」

 と話し出そうとすると、ツィアが耳元に、

 「私のこと、殺すのですか?それとも殺さないのですか?」

 とさっきまでの、やさしくておしとやかなツィアはどこへやら、ドスが聞いた低い声で囁いた。

 俺は驚き、「ひっ」と情けない声が出てしまう。怯えながらも、

 「い、いや。殺すなんてそんなことはしません。」

 まるでナイフを首元に近づけられているみたいだ。おれは、情けないぐらい怯えて、敬語で答えていた。

 そして、ツィアは続けてささやく

 「でしたら、ご主人様の所有物として最後まで責任もって、所持していただけるということですよね、ね?」

 耳元で重くささやいた。もう、抱き着かれている恥じらいどころか恐怖しか感じない。

 すさまじい圧力を感じ、俺は、

 「は、はい」

 と小さな声で怯えたまま、強盗に二つ返事するような感じで答えた。

 すると最後に、

 「これから、よろしくお願いいたしますご主人様。ちなみに、これから何があっても離れませんから。責任持ってくださいね。」

 と耳にささやき。ツィアは、抱き着くのをやめ、浮いた足取りで荷台の方に出発の準備をしに行った。最後に囁いたあとはもう、いつものツィアに戻っていた。


 俺は、魂が抜けたように放心状態になっていた。思考が動かない。

 ただ一つ感じたこと。


 (もう何も信用できない)


 こうして、彼の物語は、まるで、な〇う系の神を怒らせたかの様におかしくなっていく。


 


 

 

 

 


 

 

 

 


 

早く投稿できるよう頑張ります。


評価・感想・ブックマークいただけると本当に嬉しいです。モチベにつながります。どうか、ご検討いただけるとありがたいです。また、評価、いいね、ブックマークしていただいた方、本当にありがとうございます。




※ちなみに、こんなタイトルですが、作者はな〇う系が嫌いなわけではないです。

 そういう主人公の設定です。

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