第6話 気になる商品の正体
樽の中には赤い髪の毛の女の子が拘束されていた。
「はっ、え?なにこれ?」
脳の処理が追い付かない、俺はその場で完全にフリーズしてしまった。
正直、防具の密売かなにかの物を売っていると思っており、呪いの防具とか呪いの本とかが出てくると思っていたため、固まってしまった。
そして、どうにか自我を取り戻し、もう一度よく確認する。
樽の中には、赤髪でボロボロの布切れを着ており、目隠しと口に拘束具を付けられ、はだしの女の子が横たわっていた。どうやら、体の動きを見る辺り、呼吸はしているようだ。だが、俺は、
「ど、どうしよう、なに、110番?」
と樽の周りをぶつぶつ言いながら歩き回っていた。異世界にいるのに110番と言っていることからうかがえるように、俺は完全に気が動転していた。
それもそのはず、転生前の世界では女性と付き合うことなどなかった。べつに、普通に接してはいるのだが、深く踏み込んだことはない。そのため、女性の身体を触ることなどほとんどなかった。
そのような、人間である俺が、急に布切れ一枚の拘束された女性と対面したらこうなるのは必然的であった。
その上、女性だからというだけでここまで混乱しているわけでなく、この様な、状態なら元の世界であれば、事件性を感じざるを得ない状況であることも、その混乱を後押ししていた。
「と、とりあえず助けるか、」
そして、びくびくしながらも樽をゆっくり横にする。すると、その子も驚いたのか、体をビクッとさせた。
「すいません、失礼します」
と俺は言いながら、女の子の肩を持ちゆっくりと樽から引きずり出した。
その間、驚くほどその女の子は全く抵抗をしなかった。
こういった扱いに、慣れているのだろうかと思いつつも、肩を持ち、その女の子を立たせた。俺は、
「危ないから動かないでね」
といった。すると女の子はコクコクと首を上下に振った。
そして、まず目隠しと口の拘束具をナイフを女のこの後頭部から体を傷付けないように切り、拘束を解いた。
すると、目の前に現れたのは、赤い髪で緑色の瞳がぱっちりと輝いた、身長は150cmあるかないかぐらいで、全身に縄のような紋章が入っていたがのとてもかわいらしい女の子だった。
「あ、あなたが私の新しいご主人様でしょうか?」
その女の子は、少し緊張し、警戒したような感じで第一声を放った。
優しそうな声で、少し大人びた声の様に感じた。また、警戒はしているがとても落ち着いていた。
「いや、俺はそういうのじゃないんだけど...」
と俺は、答えた。少女は、頭に?を浮かべたように首を傾げていた。
(いや、俺の方こそどういう状況か聞きたいんだけど...)
と俺は心の中で思っていた。そして、話がかみ合わないまま少しの間、沈黙が続いた。
俺はとりあえず、その後、森から旅してきたこと、男たちを追い払ったこと、着替えを求めてこの馬車を漁っていたことなどを説明した。もちろん、女神様のことや自分の使命、スキルのことは隠して。
そして、ある程度の説明を受けた女の子は、
「なるほど、それでわたしを見つけて助けていただいたということですね?」
「あぁ、そういうことだね。」
と俺は返し、続けた。
「君は、一体どうしてこんな樽の中につかまっていたのかな?」
すると女の子は、下を向き話し始めた。
「話すと長くなります。私は、元々あるドワーフ族の家族の長女でした。そこで、基本は、農作業を中心に普通の暮らしをしていました。ですが、ドワーフ族は人間の国に宣戦布告を受け、戦争状態となってしまいました。その、人間の国の目的は、ドワーフ族の作る武器でした。
そして、戦争状態になり、ドワーフ族も人間相手に勇敢に戦ったのですが、ドワーフの先方は単騎型、人間の集団先方に苦戦を強いられ、ついに敗戦を期しました。」
「君はそれで奴隷か何かに?」
俺は女の子の話の後に質問した。
すると女の子は、
「そうなるのですが、直接、この状況につながるわけではありません。」
と言い話を続けた。
「このように、私が奴隷になってしまったのには、理由があります。先ほど、話したようにドワーフ族は人間との戦争に苦戦を期しました。
そして、その影響は、村の住民にも及びました。そして、私の家にも人間の追手が飛び込んできました。そのため、私は長女として追手から家族を守るために家族を部屋に閉じ込め、追手に立ち向かいました。ですが、案の定、まったく歯が立ちませんでした。
そして、その追手も運の悪いことに黒魔術師と呼ばれる魔術師でした。その、黒魔術師は私に呪いをかけました。それは、呪いにかけたものの力を抑制する魔術の様で、禁忌の魔術とも呼ばれるものでした。そして、呪いの結晶と呼ばれるクリスタルを私に植え付けたのです。そして、黒魔導士は次の獲物を求め去っていきました。」
と女の子は話を続ける。俺は話が予想以上に重くなってきていて、気持ちはは最底辺だった。
そして、女の子は話を続ける。
「そして、その後は戦争が終わった後に続きます。その後、勝利した人間の国は、下手に属国にすると他の国に目を付けられるため『ドワーフ族に格安で一定量、武器を収め続けることを条件とし、人間国は、ドワーフ族の領地を認め、同盟国となる。』という契約をドワーフ族と結びました。その後、ドワーフ族は、負担が増えど、名産である武器づくりなどを再開し、どうにか平和が少しづつ戻ってきました。」
と女の子は語る。俺は、ここからどうして奴隷に?と思いつつも女の子の話に耳を傾ける。
「その後、ドワーフ族は少しづつ、いつもの日常に戻っていくのですが、私はそうもいきませんでした。先ほどの、黒魔術師の呪いが本領を発揮し始めたのです。ある時から、高熱が出てから力が出なくなっていったのです。ドワーフ族は、かなり腕力が強いといわれている種族なのですが。私は、人間に勝てないぐらい力が抑制されていきました。
そして、その呪いの恐ろしさはそれだけにとどまりませんでした。その呪いがひどくなり、体中に紋章などが広がり始めてから、ある時、気分転換にペットのモンスターに餌をやっていたのですが、ペットを抱き上げクリスタルに合ったった瞬間に、胸のクリスタルが光り、ペットにも、クリスタルが移植したのです。その時、私は確信しました。この呪いは伝染するのだと。」
そう語る女の子の瞳からは、涙が流れていた。手をぐっと握り、悔しさをにじませているのがよくわかる。かなりつらかったのが伺える。
そして、女の子は泣きながら続ける。
「そして、このことを私は、家族、村の人にすぐさま話しました。ですが、誰一人、私を邪険に扱わず。いつも通りに接していました。
ですが、私はありがたみを感じると同時に怖かった。誰かに、伝染してしまうのではないかと。
そう思いながらも暮らしていると、ある日、人間の盗賊グループでしょうか、ドワーフを奴隷に捕まえにやってきました。運悪く私たち家族はそのグループと鉢合わせてしまいました。
そこで、私は家族をうまくだまして、家族を逃がし、私は時間稼ぎをしました。呪いにより、苦戦させることぐらいはできましたが、簡単につかまってしまいました。その後、私の家族が応援を読んだため私だけがつかまることとなりました。そして、その後はむごい調教をうけ、奴隷にされましたが。呪い持ちということで全く売れず今に至るわけです。」
と女の子は歯を食いしばりながら涙を流し鼻水も垂れながらでも、必死に教えてくれた。
(は、話が、お、重たすぎる。)
俺は、言葉が出なかった。女神様に教えてもらったように奴隷制はあるのを理解していたが、実際に現状を見ると言葉が出なくなる。
それと同時に異世界転生すると女神様に格好つけていた自分を殴りたくなる。
それと同時に、奴隷であることが分かっていたが、予想以上にことが深刻すぎる。
(前世で、イエスマンの様に首振って仕事してたやつに、この子をどうしろってんだよぉー!!)
そう俺は心の中で、現実の表情を変えないよう、泣きながら叫んでいた。
(と、とりあえず何か返さなければ...)
と思い、俺は、質問した。
「君、名前は?」
女の子は、涙を拭いながら、
「ツィアーナと言います。村では、ツィアと呼ばれていました。」
「そうか、詳しく話してくれて本当にありがとう」
「いえ、わたしも、すっきりした気がします。誰かに、話したかったのかもしれません。」
とすっきりした顔で、返事をしてくれた。
(よかった、少しは希望が見えてくれたようだ。)
と俺は思い安堵した。
「そうかそれならよかった。とりあえずその手枷を外さなきゃだな。」
すると、ツィアは少し悲しげな症状をしながら、
「いえ、いいんです。私は、この呪いがある限り、生きていると迷惑をかけてしまいます。だから、この山で身投げしようと思っているんです。」
と言った。
(全然、良くなかったどうすりゃいんだよ、泣きそうだ)
急な落差のジャブを食らい、俺自身もガチ泣きしそうになっていた。
また、「駄目だよ」と言い返そうと思ったが、何も言えなかった。この子は、よっぽど呪いによりつらい経験をしてる。なんの力にもなれない俺が言い返していいのかと迷ってしまった。
だが、このまま見殺しにしたら女神のもたらした転生者として失格な気がする。というよりも、もし、見殺しにでもしたら消されそうな気がすると思い、ましてや(話を聞くに死にたい気持ちは痛いほどわかるけど、俺にとっては、冒険の始まりが見殺しなんて、今後、冒険していける気がしない、頼むからやめてくれ)と心の底で思った。
動機は自分勝手化で最低かもしれないが、前世の記憶から、人間なんてそんなもんだろと思い、
「ツィアーナだったかな?俺も協力する。やっと、自由の身にもなれたんだし。どうせ死ぬなら一緒に方法を探すだけ探して死なないか?」
と真剣な顔で最低限サポートぐらいはしようと思いこんな提案えおし、擁護しようとした。だが、ツィア首を横に振った。
そして、
「だから、ダメなんです。この呪いのクリスタルがある限り!!」
強い口調で言い返した。そして、胸の部分を強く引っ張り破き、クリスタルを露出させた。
「ちょ、ダメだって。」
とっさに顔を後ろにむけ、周りに人がいないかを確認してしまった。
(やばいっ!犯罪だけは犯さないよう、まじめに生きてきたのに!)
そして、よくよく考えるとここは異世界だったことを思い出し、自分の小物ぶりを恥じた。この子は必死になっているのにダサすぎる。
そして、女の耐性が無いながらも、ゆっくりとまじめな顔でツィアの方を向いた。
そのクリスタルは禍々しく光っていた。
さっきの事は完全に忘れ、クリスタルに顔を寄せていった。
俺は、
「こいつが原因のクリスタルか...」
と手を伸ばした。ツィアは
「触っちゃダメッッ!!」
と隠そうとするが、間に合わない。
後になって考えても思う、あれだけ伝染するといわれたのに軽率になぜ触ったのかと。さっきの状況で完全にその記憶が抜けてしまったのだろうか。
「エッ?あっやべっ!」
シリアスな状況の中、気の抜けた声で言ったのもつかの間、ツィアの胸のクリスタルに手が当たる。
その瞬間、ツィアの言った通り呪いが発動した。クリスタルが禍々しい光り、そこから呪いの紋章の様なものが移ろうとしてきた。そして、俺の手に呪いが移ろうとした。
(あぁ、終わった。ツィアがあれだけ忠告してくれたのに...)
だが、その瞬間、すさまじい閃光のようなまばゆい光が俺の手から光始める。そして、その光はだんだん強さを増していった。俺とツィアは、耐え切れず後ずさりし、その場に倒れこむ。
そして、光がやみ、何とか意識を保ち立ち上がる。
そして、正気を取り戻し、
「ツィア大丈夫か!!」
と問いかけ、駆け寄る。
返事がない、そしてツィアに近づくとジュワァァァというう音が聞こえてきた。
ともかく、ツィアに手を引き立ち上がらせる。そして、立ち上がると、
ガタンッ!ゴロゴロゴロ....
という音がした、そして下を見るとツィアの胸にあったクリスタルらしきものが、黒焦げになって落ちて転がっている。
それに、気づき、俺は、顔が真っ青になり放心状態になる。
(もしかして、ツィアを殺してしまった?もしかしてそうなったら、なろう系のよく言うなんか俺、やっちゃいました?ではなく、なんか俺、やらかしてしまいました?になっちまう、それじゃ馬鹿にしていたな○う系以下じゃないか、なんてくだらないこと言ってる場合じゃない人を殺してしまったんだぞ俺は。どうしよう。どうしよう。どうしよう。)
わざととは言わないが、俺は人を殺してしまったというショックで完全に頭が回らなくなっていた。
すると、俺が腕をつかんで力が抜けた状態で立っていた、ツィアの方からしくしくと鳴き声が聞こえてきた。
俺はそれに気づき、体中が安堵しながら、
「ツィア無事か!?しっかりしろ!」
と興奮気味に叫んだ、するとツィアは泣きながら、
「呪いが...なくなってる...」
とか細くつぶやいた。
11月はこの調子でどんどん更新していくつもりです。
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どうか、ご検討いただけるとありがたいです。
※ちなみに、こんなタイトルですが、作者はな〇う系が嫌いなわけではないです。
そういう主人公の設定です。