第5話 異世界での初めての出会い
「はぁ~、ほんとにここ異世界かよ。」
俺は、ため息を吐きながらひとり呟いた。
それもそのはず、川に沿って、川の流れる方向に歩きだしてから、かなり時間が経っていた。その上、ここは森の中、さっきのスライム以降、幸いなことにモンスターにも出会っていない。せいぜい、鳥の様なものが空を飛んでいるのをかすかに確認できる程度だ。
正直、元いた世界の森と何ら変わらない気がする。そんな光景が続いていた。
そして、疲れも少し出てきた、その上、スーツ姿のままなのが悔やまれる。
だが、文句が出ようと今は山を下るしか選択肢がない。
そう言い聞かせて山を下ってきたが、出口が見えず段々不安になってきた。
「ほんとに、この森から出れてくれよ。」
そう弱音を吐きつつも歩き続けた。
そして、それからまた、1時間ぐらいたっただろうか、休まず歩いてきたが、そろそろ、本格的に心配になってきた。
できれば、暗くなる前にこの森を出たいそう思って出発していたが、恐怖になってきた。
一日目は、何とか襲われず一夜過ごせたが、あの寝ていた状態でスライムに見つかってでもいたらと思うとぞっとする。何も、知らない状況だからこそあのような命知らずの行為ができたが、スライムと戦った後の今となってはあのような真似は到底できない。
だから、なんとしてもこの森を抜けたかったのだが出られない。
そう悶々と、下を向きながら考え、歩いていると段々恐怖が増してきていた。
「神様、女神様、お願いですから、今日中にこの森から出してください。」
そう神頼みし始めたころ。
川の先に橋が見えた。
「おっしゃぁー!!!」
心の底から声が出た。今まで生きてきて、人工物にここまで喜んだのは初めてかもしれない。
そして、今までの疲れが飛んだかのようなテンションで、端に駆け寄った。
あまり、大きくはないが煉瓦でできた橋、まぎれもなく人工物だろう。
そして、端に沿って、切り開かれた道ができていた。
きっと、この橋を利用して人が行き来しているはず。ということは橋に続いている道を通ればきっと人が住むような場所に出ることができるはず。
そう思い、疲れを忘れ山が少なそうな方向に、その道なりを歩いていくことにした。
そして、少し歩き続けたころ。
少し、開けた場所が出てきた。
久しぶりの開放感のある場所だ。そう考えると嬉しくなり、スーツ姿の大人の男がスキップまがいのステップでかけて行こうとしたところ。
丘の様な、開放感がある場所が完全に見えかかったところで何やら声が聞こえてきた。
上がっていたテンションが落ち着き、反射的に木の陰に隠れて、耳を澄ませた。
すると、しゃべり声が聞こえてくる。
「親分、この残り物どうします?」
「呪い付きの商品だったからな。多分、女神にでもお願いできるような立場じゃねぇとこの呪いは外せねぇだろうな。」
「そんな、立場のやつが、買ってくれますかね?」
「買わねぇだろうな...多分、売ろうとしても門前払いだろうよ。」
「いっそのことこの森に捨てちまったらどうですか。これからの
帰り道の邪魔にもなるし。」
「そりゃ、いい案だ!!俺たちが殺したことにもならねえしな!」
「たまにはいいこと言うじゃねえか!」
と宴会の様なテンションで野太い声で笑いながら話してくるのが聞こえてくる。
そっと、顔をだして確認すると。馬車の様なものの前で中年ぐらいの男たち数人が胡坐をかき、楽しそうに話しているのが見える。
どうやら休憩中の様だ。話の内容から察するにおそらく、なにかの商品なのだろう。そして、その話に出てた売れ残りの商品もその馬車に入っているといったところか。
(なんつー話だ。正直こぇぇぇ。)
またもや、異世界に来たことを実感する。なんの商品かは知らないが、ぽいぽい捨てるなどと話している辺り、元いた世界の倫理観の違いを痛感する。
また、どうでもいいことだが、
(初めて、異世界での出会いがおっさんかよぉぉぉ)
正直、これにも地味に心の奥底でショックを受けていた。
だって、異世界っていうから期待しちゃうじゃん。しょうがないじゃん。
そう心に言い聞かせていると、俺ってきもいなとブルーになっていると。
ガタガタッ、バターン!!
やばい、やってしまった。隠れていた木にのしかかってしまい、少し大きめの枝を倒してしまった。
すると案の定、
「なんの音だ!」「誰かいるぞ!」「武器をよこせ!」
と声を上げ、先ほどの男たちが武器を持って駆け寄ってくる。
何とか隠れごまかそうとしたが、
「人がいるぞ、盗み聞きしてやがったようだな。」
と完全にばれてしまった。俺は、あきらめて立ち上がった。
そして男たちは、
「親分、どうします。」
「見ない服を着ているようだが、どこかのスパイか何かか?まあいい、どっちにしろ、やることは同じだ、片付けちまえ!!!」
と叫び、三人ほど襲い掛かってきた。
俺は、逃げようと思ったが、この格好なうえに、これだけ歩いた後だ。 正直、この男たち5人ほど負けるほど体力も、気合も残っていない。
だが、戦うといっても相手は、数人いるうえ鉄のような剣を持っている。ましてや、こちらは、ただの太めの木の棒。
正直、終わったな、女神様ごめんなさいと思っていた。
そして、男たちは、三人がかりで権を振りかざしてきた。
俺は、虫を払うように持っていた木の棒をやけくそに横に振った。
すると、
「どわぁーーーーーー!!!」
三人が宙に吹っ飛んだ。まるで、天狗のうちわを振ったように、
ある意味、遠くから見たらとてもシュールだろう。
正直、またしても何が起こったのか自分にもよくわからなかった。
そして、宙に舞った三人は地面にたたきつけられるように落ちた。
それを見ていた、後ろから命令していた親分らしき人物が、
「な、な、なんだ。魔法かなにかか、見たことないぞ。なんだそれは。」
と怯えながら、問いかけるように叫んできた。
(しらねーよ、こっちが聞きてぇぐらいだわ。)
と俺は、心の底で言い返した。
そして、地面にたたきつけられた、男たちはよろよろと体上がり始めたが、後ろの親分らしき人物が、
「くそっ、お前らずらかるぞ。」
と叫び逃げ始めた。
「親分、馬車はどうします!?」
「どうせ、馬車ごと捨てようとしてたゴミだ、金目のもの俺が持ってる。そんな、モンに命かけてられっか!捨てて逃げるぞ!」
そして、その叩きつけられた三人も立ち上がり、
「早く逃げろ!」
と騒々しく、親分ともう一人の子分の後を追うように逃げて行った。
俺は、
(正直、それを追う体力も、メリットもないから、別に急いで逃げなくてもいいのに)
と思いながらも、心臓はバクバクと鼓動しており、緊張は最高潮に達していた。
そして、その男たちの姿が見えなくなってから、
「よかったぁぁぁ~」
とため息に近い声を上げながら、腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
九死に一生を得るとはまさにこのこと、危なかった。
そして、座りながら、
(女神様の力がなかったら終わってたな)
などと考えながら一息ついていると。
「うわっ」
と自分のスーツがだいぶボロボロになっているのに気が付く。
それもそのはず、あのような森の中を、歩いてきたのだから、当然だ。
その時、さっきの子分らしき人間に言われたことを思い出した。
{なんだその服}
そのセリフから察するに、やはりこの服はこの異世界にとっては歪な存在であるのだろう。
そう考えると、もし、国などについたとしてもこの格好だとしたら、怪しまれるどころか、最悪つかまってしまう可能性だってある。
そのように、どうしたもんかと考えていると、さっきの連中が捨てていった、馬車が目に入った。
(もしかしたら、馬車にあいつらの着替えなどがあるのでは?)
と思い馬車に近づいた。
そして、置かれた馬車に入り服を探し始めた。
(なんか、追剥みたいだな)
と良心が少し痛む。だが、
(あいつらも、捨ててけ!!って大声で叫んでたし、ごみを拾ってると同じと考えよう。これはリサイクルだ。)
と言い聞かせ。馬車を漁った。すると、着替えの様なものが見つかった。
「よしよし、これで入国できるかな?」
そして、
「樽の中に水や食料もある。ある程度持っていこう。」
そのようにして、俺は最低限の生活必需品を多分、予備用に乗っていたリヤカーの様なものに乗せていった。すると、
ガタガタッとまだ開けていない樽が動いた。
俺は、驚きすぐに警戒した姿勢になった。
そして、近くにあったナイフを持った。その時、さっきの連中が言っていた、
{呪い付きの商品}と言っていたことを思い出した。
「もしかして、この中に...その呪い付き商品とやらがあるのか?」
恐る恐る、近づいていく。本来、開けない方がいいのかもしれないが、
俺は、
(さっきこの商品とやらを保管していた、人間たちを追い返すことができたのだから.。それに、俺には女神様の加護もあるし...きっと大丈夫、ビビるなよ俺。)
と言い聞かせ開けることを選んだ。
そして、警戒態勢で樽の前に立ち、一気に樽を開けた。そして、俺は即座にしゃがんで防御態勢をとった。だが、何も起こらなかった。
そして、俺は恐る恐る樽の中を覗いた。
すると、中にいたのは赤い髪の毛の女の子が拘束されていた。
10月は全然更新することができなくて、申し訳ありませんでした。
11月は時間が取れそうなのでどんどん更新していくつもりです。
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どうか、ご検討いただけるとありがたいです。
※ちなみに、こんなタイトルですが、作者はな〇う系が嫌いなわけではないです。
そういう主人公の設定です。