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第82話 レギオンの街、そして……



 五栄角との闘いとに勝利した私たちは、一旦彼らを連れてレギオン街へと戻ることにした。

 その道中で今後の彼らとの関係について、アルナが話していたのは、ひとまず協力するのはニーアを倒すまでだというところで取り決めを行い、それ以上の話はレギオン街へと帰ってからにすることになった。

 ゼフィリオーセスの言った魔女ニーアの討伐に関しても、レギオン街へ帰り肉体を休め、十分に準備してからの方がいいと、私が、ゼフィリオーセスの思念に残された情報をもとにそう判断した。

 なにせ、ゼフィリオーセスが受けた精神支配の効果は、もしかするとすでにアーバンクレイヴ全体に広がっている可能性が高いのだ。

 ならば、急いては事を仕損じるともいうし、しっかりと準備する方がいいということになったのだった。


 道中、魔物に遭遇した私たちだったが、有角人種(キャリブホーナイン)達の強さには驚かされた。

 5人の連携攻撃は、対他種族を想定した陣形の攻撃であったらしく、一切の隙を見せずに魔物を撃破した。

 おそらく、ケンセイさんのサポート受けた私でも、5人の連携には敗れていただろう。

 それに加え、ゼフィリオーセスが居たなら、私は何の抵抗も許されずに殺されていた。

 

 それだけ、有角人種(キャリブホーナイン)は強い。

 アルナが言うには、新しく出来た新興国で、まだ剣技の純度が低い。だから上段からの攻撃を読んで回避できただけで、私たちが圧倒的に身体能力で劣っているのだと。


 私は魔力で強化して戦えているけれど、アルナはヌルさんの技術で作られた装備で底上げしているだけで、実際にはほとんど生身で魔力を使わない状態で戦っているのだ。

 装備で底上げしているとはいえ、ほとんど生身。


 やはりアルナの技量は、その成長速度も含めて異様。


 私もいつか、その領域にまでたどり着きたい。


 もっと強くならないと。


 もっと強くなるために、私はゼフィリオーセスのスキルを見直し、今からでもスキルの活用法を見つけることにした。


 【思念共鳴(レゾナンス・ウィル)

 ・共鳴状態にある対象に思念を共鳴伝達する。

 

 【魔力共鳴(マナ・レゾナンス)

 ・周囲の魔力と自身の魔力を共鳴させ、支配下に置く。


 【共鳴感覚(レゾナンス・センス)

 ・対象に自身の感覚を共鳴させる。


 このスキルの中で、私が最も気になっているのは【共鳴感覚(レゾナンス・センス)】だ。

 対象に感覚を共鳴させるという効果。これは、もしかすれば、相手の剣技を使う感覚を共鳴させることで、その技を早く習得できるようになるのではないか、と思っている。

 

 実際、私はゼフィリオーセスの魂の力、その記憶に宿った技、《魔力共鳴斬(レゾナンススラッシュ)》を扱えるようになっている。

 実際に試したことはないけれど、その感覚が確かに胸の奥にあるのだ。


 ケンセイさんは【共鳴】スキルを用いて魔力操作効率を上げてくれているみたいだし、きっとこの力は、私が今後強くなっていく基盤になってくれる力なのだろう。


 ニーア。

 どれだけ強い相手なのかわからないけれど、この力を使ってもっと強くならなくちゃ。

 


 ………


 ……


 …


 レギオン街に到着したのは、二日後のことだった。

 さすがに戦闘で披露している私たちには、いつも通りの速度で帰路を辿れるわけではなく、加えて魔物と遭遇することが多くなったこともあって、かなり足を取られてしまった。

 道中、アルナが五栄角たちになぜ攻め込んできたのかを、有角人種(キャリブホーナイン)側の視点から教えてもらっていた。

 有角人種(キャリブホーナイン)は、帝国製の武具を揃えた強力な戦力を持っていた。

 その戦力を対龍人種(ドラゴニュート)相手へと振るい、その戦力をニーアが手に入れ指揮することで、一気に大陸最強の国家へなろうとしていたらしい。

 だが実際は、龍人種(ドラゴニュート)の王、クロムによって齎された大破壊によってその戦力をすべて失い、そして農耕地が消えた。

 農耕地を失い、龍の力が大地に残るせいで作物は育たず、森にいた魔物たちが攻め込んでくる。

 そんな絶望的な状況の中、レギオン街の情報を知った。そして、あとは私たちの体験した通り。


 たった一撃の攻撃で、国土の三分の一を消し飛ばす龍人の王。

 なんて出鱈目なのだろう。実感が湧かない。でも有角人たちはその時の光景を思い出すだけで吐きそうになるという。

 目の前の光景を理性が理解を拒むのだという。

 思念を共鳴させてその光景を見てみた。もちろん許可は取って。

 私も吐きそうになるほど、意味の分からない攻撃だった。もはやあれは攻撃なんかではない。

 自然災害の類だと思う。台風とか。


 そして私は、自分が不意に行った【思念共鳴】の応用として、エスティエットに構築した魔術式の記憶を【思念共鳴】で見させてもらった。

 そして我らがケンセイさんの出番。

 高い演算能力と、魔術式の完成図の記憶。それらを用いることで、なんと。


 私は一切術式を勉強することなく、魔術を発動させてしまったのだ。


 そして、ケンセイさんに魔術式を演算させてしまったことにより、一度演算した術式は【思考強化】の効果によって加速した時間の中、超速演算による魔術発動が可能となった。

 それでもエスティエットの構築速度にはかなわないけれど、マズスクよりは速かった。

 マズスクは有角人きっての天才魔術師だそうだが、その人の魔術構築速度をあっさりと上回ってしまうケンセイさんおそるべし。

 私としては実戦の最中、魔術構築に時間を取られることなく戦いの手札がひとつ増えるのは非常にありがたい。

 

 帰路を辿る最中、私はケンセイさんに魔術を覚えたもらうためにエスティエットの魔術講座を受け、一通り基本の魔術は全て習得したのだった。


 レギオンの街に着いて、一旦アルナは仮説の客室へと五栄角を案内し、私は各村の村長が集う集会へ向かった

 

 場所はアルナが案内した、居住区の中にある大きな多目的用ホール。

 三百人ほど収容できるようで、非常時には避難所として利用するなど、様々な目的に利用するためのスペースであるらしい。


 話の内容は、レギオン街の土台となることだった。


 私が入った時にはもう話し合いは進んでいたようで、各村長たちが言うには、居住区の一角を今までと同じ村の集まりで利用し、そこの自治組織の長として村長がその役割を引き継ぐ、というものだった。

 こちらが住居を提供する分、レギオンが中心となる体制になることに異存はないとのこと。

 それぞれの住居区から人手を出して街運営の為の労働力を提供し、農作業等に割り振る。

 各村の手先が器用な者、鍛治職人などはマグナス、イリュエルに傭兵出身のカレン、ケルシー達の技術班へ加わり、ヌルさんからの指示に応じて動くことになるのだという。

 そのあたりの細かな割り振りはひとまず落ち着いてからだということにしてある。


 各村がレギオンに加わり、その長となったおじいちゃんは色々と苦労しそうだ。


 でも、こんなに賑やかなのは久々で、しかも、各村の集結のタイミングも良かったと思う。

 アルナと私が魔物を倒してから、クロムの咆哮が放たれた後に村の集結、という流れなら、クロムの咆哮によって森から出てきた魔物たちに大移動中の人を狙われていたかもしれない。

 そう思えば、アンディムさんの判断は間違っていなかったと思う。


 各村長、もとい各自治組織長達の話し合いは終わり、本格的な内容はまた翌日ということで今日は解散となった。

 今日一日、フェリフィスちゃんのことを見た覚えがないけれど、どこにいるのだろうか。

 いや、きっと居住区の大きな家を見つけて、1人で独占しようとしているのだろう。

 私も長距離移動で疲れたし、体を休めたい。


 私がホールを出ると、アルナ達が待ってくれていた。周辺国家に魔物の村が出来つつあるという噂を流しに行っていた傭兵たちも帰ってきたようで、ユウトも混じっていた。

 はじめにアルナの作戦を聞いて、最初に驚いたのは、この世界に高い知能を持つ魔物が存在したということだ。

 ハーレレートという大峡谷の主を仲間にし、その配下の魔物達を従えたと聞いた時は、もうよくわからなかった。

 けれど、アルナの作戦には必要不可欠な存在であるらしい。魔物は怖いけど、一度会って話してみたいとは思う。


 「どうしたの?」

 「俺たちの活動拠点について案内しておこうと思ってな。そこにレアンの部屋も用意してある」


 私はアルナに連れられるまま、目的地に向かう道中この街、レギオンの構造について教えてもらっていた。


 「この街レギオンは、大きな円の形をとっているんだ。それぞれ区画整理してあるから、今後の発展に備えた余剰スペースは確保されている。

 街の外側は大きな農耕地が広がっていて、その近くに牧場があるって感じだな。

 これらは同心円上に広がっているんだが、その中心には何があると思う?」

 「……活動拠点?」

 「正解。実は言うと、この街全ては偽装なんだ。

 中心の活動拠点を含めた全ての建造物は、この街で戦闘が起こった際、その内部のみを入れ替え、対侵略者迎撃システムが展開される。

 実はすでに発動していて、最も外縁に位置する住居は全て、偽装した装甲板の塊なんだよ。

 この、今歩いてるレンガの地面も、表面だけで5mも下に掘れば対攻撃用装甲がうんと敷き詰められている。

 本当、気が狂うと思ったぜ……。

 あんな回数の権能行使初めてだった」


 アルナがしみじみと語っている最中、エスティエットとユウトは目をひん剥いて地面を見つめていた。


 「こ、これが要塞……?」

 「全くそうは見えませんね……」

 「だよな。俺も思う。でもヌルのやつは、ここまでしてもまだ不安が残る、と言っていた。

 俺たちは一体どんなやつと戦わせられるんだか……考えたくないな。

 ……っと、ついた。ここが入り口だ」


 たどり着いたのは街の真ん中にある大きな建物。

 扉を開けて、すぐに表れたのは下り階段。

 そこから複雑な道を何度か行き来すると、ごうん、という音がして妙な感覚に襲われる。


 「もしかして、部屋全体が下がってる?」

 「そうそう。俺の元居た世界じゃ、エレベーター、っていうんだ」

 

 ほんの一瞬、アルナが戦いのときのように、周囲を伺うような気配を見せたような気がするけれど、木のせいかもしれない。

 アルナがいう、えれべーたーというものに乗り続けること数分。

 若干気分が悪くなってきたと思う頃に、がこん、という音と共に目の前の扉が開いた。


 差し込んできた光と共に開かれた視界を埋め尽くすのは、清潔感のある白い石面で構成された大きな空間。

 感覚で地下に来たことがわかるが、まさかこんな大掛かりな施設が街の地下にできていたなんて。


 木で編まれた籠に植えられた植物が四隅に置かれ、一切空が見えない空間だというのに閉塞感を感じない。

 気温が調節されているのか、少し汗をかく外の気温に比べ涼しい。


 皆が口々に感想を述べる中、アルナがひとり白い床を踏み、こちらへ向き直った。


 「ようこそ。我々の活動拠点、インテグラル・レギオンへ」


 アルナに手招きされるままに私たちは施設の中へと足を踏み入れる。


 広間へ案内するという間に、個々の説明をアルナから受ける。


 インテグラル・レギオン。

 それは、このレギオン街のインフラというものの管理から、地上で用いる資材の倉庫や、ゼディアスの空中船団を格納していたりと、街運営に伴い必要となる様々な施設を集約した拠点であるという。

 

 広間に着くには時間がかかるというので、これまた奇妙な装置の動く床に乗って、一行はアルナの話を聞くことになったのだった。

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