表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/121

第119話 至りし者

至者達に参加している国に、軍事国家ヘスぺリデスを書き忘れていました。

………すみません!


 クロムの配下が有角人種の街を守備してくれている間、レギオンとアーバンクレイヴとの間には様々なことが起こっていた。


 まず初めに、アーバンクレイヴとレギオンとの間に道が出来た。


 これで物資の運搬や人員の移送は容易になったといえるだろう。


 その街道を整備したのはレギオン。

 しかしこれは、あくまでレギオンがアーバンクレイヴにまで人と物資の運搬のために整備したものであるため、アーバンクレイヴへの賠償には課されない。

 街道守備は傭兵達が請け負い、修理保全を行うのもレギオンだった。


 街道を整備したことで互いの都市の行き来が容易となったことで、レギオンにも有角人種が姿を現すようになった。

 街に入るためには聞き取りとアーバンクレイヴで発行される許可証が必要であり、これは危険行為を企む部外者の侵入を阻むためだった。


 他種族を恐れるはずの只人種(ヒューマン)であったが、有角人種が入ってきたときは温かく受け入れた。

 街の住民は皆、レアンの【嚮鳴】による情報共有がなされていた。

 現在のアーバンクレイヴが酷い状況であることを知り、また、有角人種がそれまで只人種(ヒューマン)に干渉してこなかったからこそ、恐怖心が薄れていたことが幸いした。


 そして何より、街に住む人間たちはすでに只人種(ヒューマン)ではなく、新人類(ネクスト)へと進化を遂げていた。

 種族の昇華。成長によって心に余裕が生まれ、結果として有角人種たちを受け入れることができていたのだった。


 そして、有角人種たちが入ってきたことによる経済の活性化は、商業的施設の多い中央通りの活気を促した。それまで物々交換しかしていなかったレギオンに、貨幣による売買が起こった。

 それは結果として、徐々にレギオンに貨幣制度が浸透していく足掛かりとなった。


 レギオンにとってもっとも大きい収穫物となったのは、ポーションの醸造技術だった。

 有角人種が独占していたその技術は、傭兵や冒険者、正規軍にすら使われる回復手段。

 そして、研究次第ではさらなる効果を付与することも可能な代物だった。


 アーバンクレイヴはその回復効果のみを重要視していたようだった。

 その技術をレギオンが手に入れたのだ。


 アーバングレイヴにあった貿易用の品は全て押収し、レギオンの実験用に使うため、地下拠点に移送済みであった。


 アーバングレイヴは一週間で以前と変わらないほどに街の補修が進み、レギオンの傭兵達がクロム配下と入れ替わりで防衛。

 その頃にはすでに都市としての機能は回復していたため、王城にて正式に条約が締結されたのだった。


 その式典に、急に姿を表したのはクロム。

 クロムを頭に据える龍人の国、ヒルデガルドはレギオンとアーバンクレイヴの条約締結の立会人として名を貸してくれたのだった。

 その際にレギオンとヒルデガルドとで友好条約が結ばれた。


 クロムがあの日、何も言わずに去ったのは、レギオンとアーバンクレイヴが友好条約を結ぶときに手間を省くためだったのだった。


 式典が終わり、一新されたアーバンクレイヴの王城で食事会に参加していたレアンに、身だしなみを整えたクロムは話しかけた。


 「レアン。お前には見どころがある。

 強さも十分だ。お前を”至者”に招こうじゃないか」

 「私が……至者に……?」


 至者。何度か聞いたことがあった単語だ。

 ケイン帝国に対抗するための集団だとか、ケイン帝国に与しない者達の集まりだとか。

 その実際はどうなのか知らないけれど、分かることがあるとすれば。


 全員が、クロムと同等。乃至はそれに近しい実力を持っていること。


 忘れてはならない。クロムは自身の咆哮だけで国家の大半を消し飛ばせるのだ。

 今の私が彼にかなうことはないだろうけれど、これ以上レギオンが国として成長する上で、至者達と顔を合わせておいた方が、今後のためになるだろうと思う。


 「クロム。気持ちはすごく嬉しいけど、私の実力では至者にはふさわしくないよ。

 でも、一度全員のことを見ておきたいとは思うかな」

 「いいだろう。明後日に獣人国の王、シグニスから至者の集会が開かれる。

 そこで全員にお前の紹介と、条約を締結したことを喧伝してやろう」

 「別に悪いことしてないんだから、喧伝なんてしないでよ。広めてくれればそれでいいから」

 

 クロムはがはは、と豪快に笑い、その場を後にした。

 私も慣れない服装に身を包み、設定を演じるのは疲れるため、その後はすぐに街へ戻って休養を取ったのだった。


 ◆ ◆ ◆


 翌日。私とアルナ、ヌルさんの三人で至者に招かれたこと、その集会に出席することを伝えた。

 

 そこで集会での立ち回りを教わり、この世界の情勢について学んだ。


 現在この世界は、3つの勢力が争いを続けている。

 

 一つは、この大陸の三分の一を占める国土を持つ国家の勢力。

 その国家の名前は、ケイン帝国。

 世界最強の魔術師にして英雄王、グラントール・ケインが統べる帝国だった。 


 そして二つ目の勢力は、ケイン帝国の傘下に下らなかった国家の勢力。

 

 獣人国、ラディアウス・ヴェーレス。

 龍人国、ヒルデガルド。

 森人国、ナシェラ・アウトラシス。

 妖精国、シュヴェセト・リュ・ハスン

 海棲国、レンラヴィク・ヒェルメネク。

 山精国、ヴォークラニア。

 巨人国、アレゴリアス。

 軍事国家、ヘスぺリデス。


 これらの国が、打倒ケイン帝国を掲げ手を取り合っている。


 そして、第三の勢力。

 それは、このフィルストス大陸の西側に存在する”グオルメニア大陸”に存在する国家の勢力。

 

 ケイン帝国、帝国の支配に抗する国家達、西側の大陸。

 この三勢力が三つ巴で争っているのだという。


 私がこれから会うことになるのは、帝国の支配に抗する者達の勢力。

 

 帝国に抵抗する者たちの中で、最も強い者達だ。


 その名を、至者。


 世に名を轟かせる、最強の存在。

 


 ◆ ◆ ◆


 豪華絢爛を極める広間に座する者達がいた。


 その名は、至者達。


 ケイン帝国の圧倒的武力、国力に屈さず抵抗を続ける勢力の中で、卓抜した強さを持つ者達。


 その名前の由来は、至りし者。

 どこへ至ったのか。それは高次元の領域である。


 並み居る才覚者が血の滲む、自傷に等しき鍛錬に命を費やして。

 時間を使い捨てて、あらゆるもののを犠牲にしたとしても、それでも到達不可能な領域。


 その次元にまで至った者。

 為した行いのままに、いつからか呼ばれるようになったのが、至者達であった。


 常識で測れない強さを持つ彼らは、一騎当千、万夫不当と呼ぶことすら過小評価であるほどに強い。


 ある者は、身体能力だけで物理法則を突破し。

 あるいは不可能とさえ謳われた、神位級魔術の単独編纂。

 神器の鍛造。海神の権能行使。伝説の神祖。原初の龍帝の子孫等々、列挙すると枚挙にいとまがない。


 その力は多種多様で、しかし共通するのは、


 《”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”》


 を秘めている。


 現在至者として名を連ねるのは、


 最強の半幻獣半人。

 シグニス・ラディアウス・ヴェーレス。

 獣人国ラディアウス・ヴェーレスの六天公家、その王位執行家の全権代理者。


 破壊龍帝。

 クロム・ナバーロ。

 原初の龍帝。その直系の子孫で、世を崩す破壊の力を漲らせる破壊の権化。


 大自然と同調する者。

  エナシティア・ネオルタティエト。

 森人種たちの祖先にして高位種族に当たる神宿りの深奥森人(ハイ・エルフ)


 妖精園の守護者。

 ユナイアニス・ゼノンワース。

 より古き妖精。それはもはや神と相違なく、故に神の権能を有する。


 剣聖。

 カルシフィア・シラフィス・アウレカリア。

 初代剣聖アルマテレアによって磨かれた剣技を引き継ぐ、異次元の剣技を持つ。

 

 海界の覇帝。

  ニルヴィーニル・ロギナヘレヴァ。

 光届かぬ昏き異界たる海底を統べる、生態系の王。海の霊長。


 事物の鍛造者。

  アリュバス・ツィンヴィーグ・バルカロニエ。

 神業の保持者にして、輪郭を形作りし神の権能を振るう者。


 異眼の巨神。

  エバルカント・アゼルグルムセス。

 概念すら覆す膂力をその身に宿す、筋肉の神にして、異眼の巨人。


 吸血鬼神祖。

  レヴォルティオ・リノル・カルデモンド。

 生命の構造を弄ぶ、幾度となく国家崩壊を引き起こした吸血鬼の神祖。


 ベルキス・ヘスぺリ デス。

 未知数の軍事力を保有し、至者への補助を行う。


 彼らはケイン帝国皇帝に及ばずとも劣らない強さを持ち、打倒帝国を掲げる者達である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ