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第100話 強欲の三騎士

早いものでもう100話。まあ厳密には101話目なんですけどね。えへえへ。

なのにまだまだストーリーは序盤のまま……。

この話数まで読んでくださった方、最初からブクマして下さった方、評価してくださった方、ありがとうございます!

まだまだ物語は走り始めたばかりですが、引き続き投稿して参りますので、この物語がどこへ行くのか、一緒に楽しんで頂けるとありがたいです。

 王城への通り道にはこれまで出し渋っていたのか、迎撃魔術が大量に展開されていた。

 飛来する爆炎の一発一発が地面をえぐり取る破壊力を持っている魔術。

 バルブゼスですら回避しなければダメージが残るほどの威力だった。


 だが、それは理外の力を纏っている刀に触れた途端。まるで元から存在しなかったように、跡形もなく消えた。

 理外の力が異能の力に触れると、その力を否応なく消し去る。異能の力がいかに大きかろうとそれに意味はなく、等しく全てを元から無かったかのように消してしまう。

 

 【魔術には下級・低級・中級・普級・上級・最高級の位階が存在します。その上にもまだ神級、唯一級などが存在しますが、名前の通り神業を求められる魔術となるため単独での編纂は不可能なのですが………。

 すくなくとも上級の高威力熱素系魔術。おそらく類似しているのは、爆炎投射砲(エクスプロカノン)でしょう。それに近い構築方法であることは見るだけで分かります。

 威力自体は魔力量と加項術式で底上げされているのでしょう。一撃でも喰らえば骨も残らない威力です。

 アルナレイトさん。捌ききってください!】

 

 一撃でも打ち漏らせば体勢を崩される。

 体勢を崩されれば次撃が遅れ、それが歪となって最終的に捌ききれなくなる。

 だが、問題はない。この程度であれば俺一人で防ぎきれる。


 同時に八つの爆炎火球が飛来するも、一番近い火球から順番に切り落としていく。

 正統剣術の動きでは捌き切れないため、織り込んだ我流の剣技を用いる。


 (まるで曲芸みてーな剣だな………だが無駄が一切ない)


 舞うような太刀筋だが、よどみなく澄み渡る冴えが、無駄を削ぎ落している。


 (本当に人間の動きかよ……)


 バルブゼスは自分の目指す剣の高みとは違う高みを見た、ような気がした。


 そのアルナレイトに、迫る一つの影。

 

 (まずい……!気づいて────────)


 バルブゼスはアルナレイトを助けるべく走り出す。


 (ぎりぎり間に合うか………!?)


 完全に気を取られているアルナレイト。

 その背後に迫るのは、口角を釣り上げている短髪の剣士だった。


 アルナレイトの背後に凶刃を繰り出す男の刃は、全力のバルブゼスの突きですら間に合わず、アルナレイトに触れる────────はずが。


 刀を構え背面飛びのように剣を受け流した。

 死角から奇襲という、絶対に回避の不可能。

 しかしそれを、とても人間とは思えない、人間離れした、まさしく人外じみた剣技で奇襲を回避したアルナレイトは、バルブゼスと入れ替わりながら前衛をバルブゼスに任せる。


 バルブゼスは突きから振り払いへと変え、魔力を込めて男の剣を止める。


 (お、思ったより軽いな………ッ!)


 片手用の剣を不利な体勢からでも磨かれた剣技と筋力ではじき返すバルブゼス。


 「ほう………我が一撃をはじき返すとはな。

 面白い。貴様には見どころがあるな!」

 「………お前がこの霧の瘴気を起こしているのか?」


 バルブゼスの問いかけに対し何も返さない騎士の風貌を持つ者が、次いで二人現れた。

 身に着けている禍々しい鎧と、周囲を覆う霧から漂う気配と同様の気配。

 きっとこの三人が、霧に効果を与えている者だろう。


 傭兵達と同様に白兵戦部隊に参加させていた五栄角は、その三人を見るや否や、顔を激しく歪めた。


 「貴様ら………それでも騎士かッ!!??」


 怒りを露わにしたブライトが、レギオンで用意した武器、大剣を構える。

 どうやら面識があるらしい。


 「血の気が盛んよな、ブライト」

 「お前ら、こいつらは?」

 「………こやつらは、四厄角。戦後処理、敗残兵の処刑や殲滅任務専属の騎士団。

 我々五栄角と同等の練度を持つ者達と認識されたし」

 「同等………か」


 ここに来て出て来る相手、しかもその気配は強欲の力を含んでいる。

 強さは五栄角全員以上、と想定するべきだろう。


 「ブライトよ。四厄角など今は存在せぬ。

 我々は生まれ変わった。今は強欲の三騎士と呼ばれし、新たなる有角人種国最強の騎士団である!」

 

 強欲の三騎士は、一歩踏み出ると同時に名を名乗る。


 「我は強欲の三騎士が一人、過食の騎士オーヴィマ!」 

 「私は不貞の騎士、フィゼン!」

 「僕は惰眠の騎士……ドルノレド」


 三人に対しこちらは二十人。

 数の差で勝てるかもしれない。

 だが、こちらの頭数を把握したうえで姿を見せたのなら、それを覆すほどの何かがあるとみるべきか。


 「外道に仕えるなど騎士にあらず!貴様など、我ら五栄角が葬ってやろうぞ!」

 「おい、待て!」


 静止を掛けるも五栄角は四厄角へと向かって走り出す。

 色とりどりの光を宿す剣を構えた五栄角たち。その魔力量といい操作速度も流石は他種族というべきだった。

 おそらく五栄角はアーバンクレイヴにおいてかなり強い騎士たちのはず。リーダーだったゼフィリオーセスの強さを考えるならそうなる。


 「「角枝五連(フィフスホーン)伐撃(フェルストライク)!! 行くぞ!!」」


 五栄角達は連携技を行うために陣形を整えた。


 ブライトが魔力を纏った大剣を構える。

 あの大剣はレギオン街の鍛冶屋達が試作品として作った物。潤沢な鉱物資源を用いられ、元々持っていた武器を補修する形で制作された。

 魔力を含む金属のため、ブライトの魔力強化を底上げて威力を高めていた。


 だが、ニーアに力を与えられた強欲の三騎士を相手に、彼らの技も身体能力も、遥か及ばない。


 全力疾走するブライトが、その速度を殺さず大剣を振り下ろし、破壊力へと変える。

 だが、ドルノレドと名乗る騎士がその一撃を軽く受け止めると、鎧をつけているとは思えないくらいの滑らかな動きで蹴り飛ばした。


 「がはっ!」

 「まだだぁぁっ!」


 キャシーが短剣を構えながら、一陣の風となってドルノレドに斬りかかる。

 しかしそれは、瞬時に現れたオーヴィマが攻撃したことで防がれる。

 短剣でなんとか防いだキャシーであったが、オーヴィマの身体能力と、剣に纏われたオーラから放たれる強烈な一撃にダメージが貫通しているようだ。


 「なんなの…こいつ!」

 「お任せを!」

 

 ロベルタの弓引くような細剣の構えから放たれるのは、凄まじい速度の刺突。

 光芒を纏う剣がオーヴィマ目掛けて矢の如く放たれる。 

 それを指先で摘んで止めるフィゼン。

 

 「何と!?」

 「甘い甘い、遅すぎますねぇ?」

 

 フィゼンは手に持っていた剣をロベルタに振るう。

 中段、払いの軌道を描く一撃は、ロベルタの細剣で止めることは叶わず、そのまま吹き飛ばされてしまう。

 本来、五人の連携技である角枝五連(フィフスホーン)伐撃(フェルストライク)は一撃でも受ければのちに続く連撃を避けれない。

 だが、出鼻を挫かれた以上連撃はただの攻撃の連続にしかならないため、容易く防げるのだった。


 これ以上無駄な体力と魔力の消費を避けるために、五栄角は一旦距離を取る。

 

 「ふぅむ、あまりにも弱い…本当にあの五栄角ですか?」

 「そう言ってやるなフィゼン。ニーア様に力を与えられた我々が余りに強すぎる。それだけのことよ!」

 「フフ、そうですねぇ」


 只人種(ヒューマン)である俺やレアンが連携技を受けていたのなら、死に瀕していた。

 隔絶する身体能力を持つ有角人種(キャリブホーナイン)の中でも戦いを得意とする騎士であっても、強欲の三騎士相手では分が悪いところを見るに、ニーアに与えられた力は相当な物のようだ。


 「くそっ……一撃の重さが体の芯にまで響いておる………」

 

 攻撃を受けた五栄角は攻撃が重すぎるあまり、まだ痙攣が収まらない。

 五栄角の中で最も強いブライト、ロベルタがこの有様なら、きっと彼等では三騎士には勝てない。

 バルブゼスなら、勝てるかもしれない。俺の知るバルブゼスの剣技はこの場にいる誰よりも卓抜しているモノだろうから。


 「バルブゼス。俺じゃお前の戦闘についていけないだろう。

 だから、倒すことはできないだろうが二人は引き付けて見せる。そのうちに各個撃破を頼む」

 「何を言ってるんだ、お前なら─────────」

 「─────────頼む。俺じゃ足手まといになる」

 「そこまで言うなら構わねぇが、いいんだな?」

 「ああ。なるべく早めに来てくれよな?」

 「おうよ!」


 バルブゼスは一歩前に出て宣言する。


 「オーヴィマとか言ったか?まずはお前から遊んでやるよ」

 「大言壮語もほどほどにするのだな。我の評価を下げることはしてくれるなよ?」

 「そんなんしらねーよ。おら、場所変えるぞ」

 「うむ。ここでは邪魔者が多すぎる」

 「ちょっとー?僕らが邪魔って言いたいのかい?」

 「そうだ!」

 「そうだ!じゃねーよ!」

 「ふはははは!すぐに片づけて帰ってくるぞ!」


 バルブゼスは会話でオーヴィマを連れて行った。

 さて。どう対処しようか。


 「………ふぅ………すぅ………」


 深呼吸をして頭の中にあるスイッチを入れるイメージをする。

 すると、周囲の音が遠のいていく。体の隅々までを行き渡る冴えに、曇りは霞んでいく。


 超集中状態に入った俺は、刀を構える。

 まだ理外化(アウトルーラー)を使うわけにはいかない。単純な技量と理外権能だけで戦う必要がある。

 

 運よく仕留められればいいが、果たして。




 ~現在の状況~


 ・白兵戦部隊は強欲・瘴気煙霧(マモンズミアズマ)の瘴気を発する強欲の三騎士と会敵。

 バルブゼスが一人ずつ処理して、残りをアルナレイトが引き付けることに。


 ・後方支援部隊は城下町を突破し、もうじき白兵戦部隊に追い付く距離まで進んでいる。


 ・ヌル、イオラ、ミタラの状況に変化はない。



 


 (さぁて、どんなふうに踊ってくれるんか、楽しみやなぁ………)


 ニーアは強欲の三騎士と戦う侵入者の結末を妄想していた。


 (逃げ惑って、捕まって、そのまま内臓を引きずり出されるのもええなぁ………!

 目の前で心に決めた女を回して嬲るのも、女の絶望も男の発狂も見てみたいなぁ………!)


 くだらない理由で取り繕った仮面を無理やりに剝がしたときのみっともない顔。

 想像するだけで快楽が全身を満たす。ニーアは生粋のサディストであった。


 「あっははははは!楽しみやわぁ!!」


 無人の王城に響く嬌声のごとき叫び。

 恍惚な表情を浮かべながら身を抱き震わすニーア。

 

 その様子はまさに、不幸を愉しむ悪魔そのものだった。

どこかの話で区切りをつけて、出ている情報の説明を挟もうと思います。

もしかすると、もっとわかりやすいストーリー構成にした改稿版も投稿するかもしれませんが、それでもこっちが原作ということになります。

膨大な設定があるので、作者自身も忘れているものがあるかもしれません……泣

もしよろしければお教えいただけると助かります。


お読みいただきありがとうございます!

もしよろしければ、気になった話で構いませんので、もう1話お読みいただけるとありがたいです。

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