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枇杷  作者: 無自信
2/7

第2話

 その日の授業は両親には悪いが集中できなかった。ビワコの死に衝撃を受けたというのもあるが、それ以上にビワコとの思い出がワッと蘇ってきたからだ。ビワコと初めて話したのは中学三年の春だった。

放課後教室で俺が持ってきた漫画についてヒロシと話していたら、ビワコが話しかけてきたのがきっかけだった。最初に話しかけらた時は

(やべっ。先生に漫画のことチクられるかな?)

と思ったが、続く言葉が

「ユウジくんたちもその漫画読んでるの?」だったのでホッとしたのを覚えている。

ちなみにビワコというのはヒロシが付けたあだ名で中学の給食で果物の枇杷が出た時、ミワコの「ミ」の字が漢字で「美」だったため「ミ」とも「ビ」とも読めることに気が付いたヒロシが


「おい、ビワコ!ビワコが枇杷を食べたら共食いになるから俺が食べてやるよ!」

とビワコをからかったのが始まりだったと思う。俺も一緒になって


「そうだ!そうだ!ビワコが枇杷を食べたら共食いなるぞ!」

とからかったが今思えば軽いいじめとも取れる行為だったがビワコが


「私ビワコじゃないし。ミワコだし。」

と笑いながら否定してきたので


「あ、そんなに嫌がってないな。」

と思って、給食の後も


「おい、ビワコ!」

とからかっていたら俺とヒロシだけはミワコのことをビワコとあだ名で呼ぶようになった。おざなりにこなした午前中の授業が終わり、昼食を食べに食堂へ向かった。


「おーい、ユウジ!こっちこっち!」

先に食堂にいたヒロシが手招きしてきた。


「オッス、随分早いな。」


「ああ、俺ひとつ前の授業の時間は受けてないから自習室にいたんだ。だから早く食堂に来られたんだよ。それよりもビワコだよ!ビワコ!ユウジ、お前ビワコが死んだって聞いてどう思った。」

と、ヒロシが質問してきた。

俺は正直言って中学を卒業してから関わりを持っていなかったとはいえビワコの死を知った時はかなりショックを受けたし、ヒロシと同じく可哀想だと思った。だけど、この時の俺は仲のいい友人であるヒロシにでさえ心の内をさらすのを躊躇してしまった。正直、恥ずかしかったのである。そのため俺はヒロシの質問に少し斜に構えた返答をしてしまった。


「まあ、可哀想だとは思うよ。でも中学卒業してから会ってないし、それに地球上で一日に人が何人死ぬと思っているんだよ!一年間、漫画の話をしていたくらいの関係の奴が死んだくらいでショック受けてられないよ!」


ヒロシは俺の返答を聞き少し驚いた顔をして


「冷てぇなぁ!お前がそんなに血も涙もない人間だとは思わなかったよ!あっ、もしかしてそれがお前の受けている数学の講座を担当している西本が言っている『論理的に考える。』だと思っているのか?ユウジ、お前が今言ったことは俺からしたら、論理的じゃなくて屁理屈こねてるようにしか聞こえないぞ!」と俺を諫めるように言ってきた。その発言を聞いて俺はかなり反省したが斜に構えた態度を急に変えることは出来ず

「可哀想だとは思うとは言ったぜ…。」

と反論したが、ジーッと睨んでくるヒロシの視線に耐えられず

「悪かったよ!謝るよ!ごめん!」

と、降参した。それでもヒロシは睨むのをやめず

「俺に謝るんじゃなくて謝るべき人がいるだろ。」

と俺を諭すような返答をしてきた。


「あー分かったよ!ビワコごめん!」

俺は天井の方を向いて目を閉じ、手を合わせてビワコに謝罪した。それを見てヒロシはやっと睨むのをやめてくれた。


「まあいいだろう。ところで話は変わるんだけど、ビワコが病死だって聞いて気になったんだけど、ユウジお前いつから将来の目標、医者じゃなくなったんだっけ?」


「え、医者?」

俺はヒロシの質問を理解できずポカンとしてしまった。


「そう医者!確か中三…いや、高一の夏ぐらいまでは言ってたじゃん!『俺は将来医者になるんだ!』って。」

ヒロシの発言を聞いてはっきりと思い出した。高一の夏まで俺の将来の目標は医者になることだったと。


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