ミシェル
気が重いと体も重い。
まるで月曜日の朝のような気分で俺は家を後にする。
目の前には中世ヨーロッパを思わせるような辺鄙な村の光景があった。
広大な山々が奥の景色にはあり、その天辺は初夏を思わせる季節なのも関わらずに白さを保っていた。
舗装すらされていない村の家々の間を歩いていくと、村の営みが目に映り始める。
モクモクと煙を立ち上らせているのは大きなカマドが外にある家であり、そのカマドの前には痩せ細った体をしている老人の姿があった。
「おーい!ロビンソンさーん!」
腰が曲がりヨボヨボのおじいさんが、同じく腰が曲がりヨボヨボのお爺さんへと話しかける。
「おうおう!どうしたー!?」
カナヅチで熱した鉄を叩きながら顔を向けるお爺さんへ、片方のおじいさんがどこからともなく、金色のインゴットをポンポン、ドサドサとお爺さんんの前に置いていく。
「このオリハルコンでクワを10本!頼むどー!」
「おうおう!」
どうやら農具の注文らしい。
わざわざオリハルコンで農具を作る意味があるのかと尋ねたことがあるが、この辺りで採れる鉱物はオリハルコンしかないそうだ。
井戸を囲いながら話をしているのはお姉様方だ。
子供を持つ女性達なのだが、俺の母に負けず劣らずの美人ばかりである。というか、この世界にはやたらと美男美女が多い気がする。
「ねー!聞いてー!」
「あら、どうしたの?」
「ウチの畑にハイ・レグナントが湧いたのよー」
「えー!」
ハイ・レグナント
確か、村に唯一ある絵本の中で、王国を一夜にして滅ぼしたとか言われていた気がするが
「それもドラゴンタイプでしつこくて」
「あらヤダ!」
生前がドラゴンのレグナントだったら、世界が滅んでいたと絵本で言われていた気がするが
「でね!ウチのダンナ、まったく倒してくれないのよー」
「えー!」
「家事も全くしてくれないし!」
「それはひどいわねー!あ!このエリクサー!」
肩を触りながら疲れた様子を見せるお姉様へ、片方のお姉様が閃いたようにカバンから真っ赤な液体の入った小瓶を取り出す。
「わ!綺麗ね!」
「作って見たんだけど、どうかしら?」
「えー!良いのかしら!?」
「肩こりが良くなるわよー!」
「助かるー!今日もハイ・レグナントを駆除しないと行けなかったのよー!」
村を抜けると広大な草原が見えてくる。
そこは子供達の遊び場にもなっている場所だ。
「いけー!!」
「くそー!!!」
大きな翼を持つ赤龍が地上スレスレを滑空していた。
その背後からはゴジラのような地龍が地上を揺らしながら駆けている。
「ケビン!もっと!もっと!!内側!!」
段々と赤龍との距離を縮めていく地竜
しかし、そんな赤龍と地龍の間をスイスイっと抜けていくのは蛇のような緑の龍だ。
「あーーー!!」
「くそ!!」
緑の龍の頭部が赤龍よりも前に出ると、外野にいる子供達からは様々な声が轟く。
「おっしゃー!!」
「何やってんだよ!!」
「まだまだ!!」
「ケビン!!しっかりしろ!!」
「ローン!!そのまま!!行けー!!」
子供達が熱狂しているのはドラゴンライダーという遊びだ。
彼らが捕らえた野生の"古龍"を調教して、その背に乗ってレースを楽しんでいるらしい。
巨大な翼を持つ赤い龍や、まるでゴジラのような地竜、どこまで続くのかわからないほどの長い体を持つ蛇のような緑龍などが、その背に子供を乗せてレーズで競り合っていた。
そんなドラゴンライダーの光景を遠目に見つめながら、俺はさらに草原を進んでいくと、やがて岩山へとたどり着く。
刺々しい岩が連なってできている岩山だ。
その一つの尖った岩の頂上には、両手に腰を当てながらソワソワしている金髪の美少女の姿があった。
「早いね」
俺がミシェルの背中へ呼びかけると、彼女はビクリと肩を揺らして、勢いよく振り返る。
「遅いわね!」
予定よりもかなり早く着いたのだが、それでも不機嫌そうな態度を見せるミシェル
俺の姿を見るなりパッと笑顔を見せていたような気がしたのは気のせいだろうか。
「さ!さっそく始めるわ!」
「…うん」
++++ステータス++++
■名 前:ミシェル
■レベル:33
■職 業:剣聖
■パネル:剣士-Ω99
■所持スキル
『剣術適正・剣聖』
『聖剣適正』
『全剣技』
『魔法剣適正・極』
『ステータス上昇・上』
『状態異常耐性・中』
『料理適正・小』
『生活魔法適正・小』
■能力値
・力 :501
・体力:489
・魔力:205
・精神:332
・早さ:627
・運 :49
■所持ポイント:
→スキルパネル
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