あとがき
クズばかりが登場する、クズが一人称の話という、とんでもなくストレスのかかる物語にお付き合いいただき、ありがとうございます。
投稿を開始してから、完結まで。
誰にも読まれないということもなく、温かいご感想やレビューまでもをいただいた、私にとって、とても幸せな物語となりました。
ありがとうございます!
まず、この物語はフィクションなのですが、作者個人の気持ちとしては、つらいこと、悲しいこと、トラウマ、その他諸々について。「向き合うべき」とは思いません。
つらければ逃げたっていいし、蓋をしたっていいし、なんだっていいと思います。
正面から必ずしも向き合わなくちゃいけないなんて、しんどいですし、それが正解かっていったらどうだろう? とも思います。
自分の人生は自分が背負うしかない。誰も代わってくれない。
自分が選択した結末は、それはなんであれ、自分に返ってくる。
よく聞く言葉じゃないかなぁと思いますが、実際、やはりそうですよね。
だからこそ、逃げたって、見ないふりしたって、忘れたって、向き合ったって、なんだっていいんじゃないかと考えております。
偽善的な言葉でしかありませんが、その上で、自分の選んだ道と、そしてその道の先で笑っていられたらいいのではないかなぁと。
満足のいく結果や人生。
そりゃ素晴らしいですけど、満足って難しいです。
不満もあるし、不幸だって思ったり、憤りや悲しみ、憎しみも消えない。
自分がやらかした罪だったり、その報いも受けなくちゃいけなかったりする。
許されたいけど許されないこともあるし、自分自身が許せないこともある。
それでも笑えたらいいんじゃないかな、そして一緒に笑ってくれる誰か(パートナーでなくてもいいと思うのです)がいてくれたら幸せだなって思いながら、この物語を書きました。
ストレスばかりの胸糞悪い物語ではございましたが、ご覧くださった方の暇つぶしになれたのならば幸いです。
そして皆様に、笑顔と幸せの未来がありますように!
以降は自分で自分の物語のネタばらし&解説という、完全なる蛇足なので、ご興味のある方のみお付き合いいただければと思います。
さて。
作中でジョンは主人公蘭に「向き合え」と言いますが、この人、近いうちに去っていく他人でしかない。
仕事仲間にならないかと勧誘したり、自分の持てる力で縁を繋いだり、めんどくさくて湿った話にも付き合ってあげたりと、『通りすがりの友人』として力を貸す気持ちはあり、『その時その瞬間を共有して楽しむ友人』としての好意もありますが、パートナーとして人生を分かち合い、蘭の苦しみを背負う気は全くありません。
思いつきの好意を示すタイプの人間。
『イイヤツ』だけど、『いい人間』かっていうと「?」です。
一方でミツル。
彼には蘭の重荷や人生を背負う覚悟があります。
ありますが、この人、頼りない。
自分の家族(兄賢治だけでなく、両親に対しても)に劣等感と引け目を感じていて、兄と対峙したときも、恋人を矢面に立たせてるし、自分のために奮い立ってくれてる恋人をなかなか庇わない。
蘭からの愛情と信頼を確認したくて、無理やり相手の真意を聞き出そうとする。思いやってる素振りだけど、自分の望むような形で。
自信と余裕がない。
蘭はミツル以上に余裕がなくて、悪びれなく、容易に人を傷つけるような人間。
というのも蘭は性暴力などの虐待を受け、その間、行政を含め、救いの手を伸ばされることがほとんどなく、誰とも信頼関係を築くことなく育ったという事情があります。
だからといって蘭の言動が許されるというわけではありませんが、蘭の満たされることのなかったインナーチャイルドは、ミツルと出会い、ようやく自身にまっすぐな愛情を注いでくれる相手を見つけたことで、ひそかに抱えていた愛着障害が試し行動としてあらわれます。
被虐待児に見受けられることのある試し行動の詳細については、専門家に任せますが、おおまかには信頼できるかもしれない相手に出会えた時、その愛を試し確信するためのものと考えていただければよいかと思います。
蘭にとっては、ミツルが初めて、そのような対象であったのでしょう。
だからこそ、ミツルは理不尽な蘭の言動に振り回され続けます。けれどミツルは蘭の保護者ではない。
そして性暴力被害者が、ときにそうなるように(決して全員ではありません! 個人差があります!)、蘭はまた性依存でもあります。
その上、父親からなされた性暴力を思い起こさせる行為にはひどいトラウマがあり、拒絶している。
こんな状態で果たして、蘭が「向き合おう」としたところで、うまくいったのかどうか。
蘭は一度、ミツルと一緒にやっていこうと決意していたりします。
そのあたりはシリーズ「身代わりの子(https://ncode.syosetu.com/n2360hh/)」や「ダフネはアポロンに恋をした(https://ncode.syosetu.com/n0879hg/)」で触れております。
というわけで。
次のページでシリーズ時系列を書いていきます。