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その6

何故だろう。裏から回ればいいのに裏には誰もいないが、その理由も分かった。

裏には田んぼがあり、のどかに見えて狼たちが畑を荒らしたりしているのだ。

田んぼには、案山子の魔物が飛び跳ねている。




「景色はいいけど魔物ばっかだねー。スマホ貸して?」

俺からスマホを送るとパシャパシャと撮影して、俺のSNSに上げていく。

妄想だからそんなことまで知られているのか。


「あー、フォロワー少なっ!?」

「はは」

乾いた笑いが響く。そんなもんさ。有名人でもないし。学校でもそんなに友達多いと言う訳でもない。

しかし、非リアに当てはまらなかったのはひとえに向日葵のお陰だろう。

だから、時にはリア充の人たちと会話することもあったが、なんか合わない。

相手のノリに合わせるのが苦手だから。


「ま、とりあえず狩りますか」

「気をつけろよ」

「誰に言ってるの~?心配してくれるのは嬉しいけどね」

「待った。俺がやる」

「ん。いいよ。私が引きつけるよ」

女の子だけに戦わせるのがなんかカッコ悪く思えたのだ。


田んぼの前の道へと歩いていくと呼び掛ける。

「おーい!こっちだよー!」

鈴音の声に反応して狼と案山子はおそいかかってくる。

俺は木刀を中段に構え、間合いを意識すると襲いかかって来る狼を薙ぎ払う。

木刀が凄いのだろう。一振りするごとに仕留めていく。


「ほいほいっと」

鈴音は落ちた魔石を拾い集めていく。一本足で跳ねて来た案山子はなんだかぼろぼろだな。


しかし、その見た目とは裏腹に高く跳んで蹴りを放って来る。

それを少し下がって避けるとすぐに突く。

そのまま貫いて粉微塵にしてしまう。

た、ただの木刀じゃないのか。そりゃあ少しは攻撃力はあると思ったけどさ。

ちなみに案山子の落としたドロップアイテムは藁だった。魔石は大きかったけど。


「すごーい!鞘音、強いね!」

「て、こら!抱きつくな!」

「えー!いいじゃん!S級の美少女が抱きついてもいいじゃん!」

「よ、よくねーわ!早く食料確保しよう」

「ちぇー」

ふてくされつつも手は繋いでくる。なんでだよ。嬉しいけども。


しかし、案外なんとかなるな。ガチャがなかったらとっくに死んでたんだろうな。男としては女性経験がないまま死ぬのだけは嫌だ。世の男子はみんな思うだろう。

しかし、向日葵は大丈夫だろうか。後で様子を見に行こう。






「お肉と~♪野菜と~♪あ、デザートもいいなー」

いつもリズミカルな音楽が流れるスーパーは静かで鈴音の綺麗な声だけが響く。


「どしたの?ボーッとして?あ、JKと買い物出来て嬉しいんだろー?」

「ち、違うよ。あれだけ人が入ろうとしてた割には全然入って来ないよな」

「そうだね。二人きりだから気を遣ってくれた?」

「それはないだろうけど人が雪崩れ込む前に買い物を済まそう」

お金は生活費を親から貰っているのでそれで払おう。

お釣りを貰えないのは痛いが勝手に入ってる訳だしな。


「……それにしてもおかしいな」

「おかしいのは鞘音だよー」

「はぁ?なに言ってるんだ?」

「せっかくあなたの妄想が具現化してるのになにもしないなんてばかー?」

「馬鹿って言うな!付き合ってないのに出来ないだろう」

「それ、ウケる。昭和かっての!」

くっ。楽しそうだなおい。いくらでも笑え。

俺は古くさいんだよ。煩悩があってもな。


「おいこら!なにイチャイチャしてんだよぉ!」

いきなり男の声がした。なんか聞き覚えのある声だ。


「あ、黒野か?」

ひょろりとした背の高いおかっぱ頭の男は、高校の同級生の黒野典善だ。武将みたいな名前だな。


「あー、びっくりしたー!あなたスーパーの人?ごめんねー?ほら、今、緊急事態だから食料確保したくってさ。ね?お金はちゃんと払うから許して?」

鈴音は、上目遣いで両手を合わせる。甘い男ならこれで許してしまうだろう。


しかし、黒野典善は違った。いつも物静かにスマホを眺めてるだけの男かと思ったが違った。


「ふざけんな!不法侵入したビッチが!そんな風にモテない男にお願いすれば許して貰えるとでも!?許すかばーか!

リア充は人生イージーなんだから、甘やかす必要はないだろう!」

「はぁ?酷くない?ちゃんと謝ってるし。お金も払うし。自分がモテないのはあなたのせいじゃん!」

特に傷ついた訳でもなく鈴音は言い返す。

何故そんなに怒ってるのかは、俺たちが勝手に入っただけではなさそうだけど。だが、謝らないとな。

そう言えば、黒野の父親はスーパーを経営してるとか聞いたことあるけどここがそうなのか?


この地方に10店舗は展開する『なんでもかんでも』と言う変わった名前のスーパーだが、庶民には優しい値段でタイムセールも毎日なんかしらしてるので母さんとかはありがたがっていたな。


「すまない、黒野。勝手に入ってすまない。鈴音もあやまれ」

俺が、頭を下げているのでぶすっとしながらも頭を下げる。


「勝手に入ってごめんなさい」

「ふん。まあいい。いちゃつくなら他所でやってくれ」

そう呟くと急によそよそしくなったな。

こいつにも辛いことがあったんだろうけど態度が悪い。



つづく

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