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その5

それにしても静かすぎるか。みんなこの異常事態に隠れてるのか。

角を曲がると、誰かが戦ってる?


「なんかヤバイかんじ?」

鈴音を止めて様子を見る。あれは、なんだ?スライムなのは分かる。他にも足軽みたいな格好した魔物がいる。人の方はサラリーマンっぽい人が自棄になってるのかバットで魔物を殴ってるが数では負けている。


「ちくしょー!ちくしょう!なんなんだよぉ!」

振り回すバットは空を切っている。

くたびれたリーマンはふまつくさ文句を言いながら殴りかかる。

それでも大振りなのでかわされている。

その隙をつかれて攻撃も受けている。

助けた方がいいんだろうけど助けづらいな。痛々しいと言うか。



「避けるな!なんなんだよ!こっちはさぁ!朝から晩まで働いてぇ!嫁はあんたは退屈だから別の男と出ていっただとぉ!俺は一人で娘を養わないといけないんだ!俺の経験値になれ!」

なんだか聞いてて可愛そうだな。助けようかと迷ってると。



「鞘音。私に任せて」

その辺に転がってる石ころを拾うと振りかぶって……スカートの中が見えそうだったので視線をサッとそらす。そして投げた。

石ころは空を切って足軽の頭を打ち砕き、すらいむの方も石ころで打ち抜く。


「……見たでしょ?えっち」

「ば!お前が気をつけないからだろ!」

「まーまー、私は鞘音に見られて幸せだけどね。行こ?」

「痴女みたいなこと言うなよ。いや、あのおじさんは?」

「いいのいいの。後は本人の問題だよ」

サッサと歩き出すので俺もそれに続く。鈴音はドライなのか。

振り返るとリーマンはうずくまって泣いていた。

「魔物め。滅してくれる!」

なんか怖いこと言ってる。でも、これからああいう人が増えるのかと思うと気が滅入る。



「ほらー、行くよ?」

「……ああ」

「気になる?さっきのおじさん」

「まあね。奥さんが出てったみたいだし」

「そうだけど。私たちにはなにも出来ないよ。結婚もしてないし」

「……だな」

「鞘音は優しいね。鞘音なら結婚してもいいよ?」

「はぁ?またからかうなよ!」

たく。上目遣いで見られるとドキドキするだろう。

ちなみに会話しつつもゴブリンに遭遇してるけど鈴音のワンパンで仕留めている。


「……お?レベル上がった?」

鈴音が仕留めているのに二人して一瞬光った?

「それにしても鈴音が倒してるのに俺にも経験値が入ってるみたいだな?」

「うーん。ほら、私って鞘音のスキルのガチャから生まれたじゃん?だからじゃない?」

「そうか?それはあるかもな。レベル2ってことだよな。鈴音は?」

「ん?同じく2だよ」

「え?でも魔物を一撃で倒せるのに2なのか?」

俺は鈴音の目を見て話してるが吸い込まれそうな綺麗な瞳なので慌てて下を向く。


「そう言いながら私の足を見てー。そんなに魅力的?」

例によってからかうようににやにやしてる。

確かに鈴音の言う通りだけどそのまま伝えたらただの変態だ。


「おい。こんな時に馬鹿なこと言わないでくれよ」

「そう?男子ってエロいから頑張れるんじゃん?

ま、他の奴が眺めたら蹴るけど、鞘音ならいいよ?」

「はいはい。上目遣いは止めてくれ。それで、さっきの話し」

「あーうん。私って鞘音の妄想力で出来てるからさ。鞘音が悶々としてるから私は強く生まれたのかもね」

「言い方ってあると思うんだ!?」

今度は空から化けカラスが来た!通常のカラスより大きい。


「もう。鞘音と二人っきりなのにー!」

文句を言いながらもこちらに急降下して来た化けカラスを、ちょっと避けて思い切り蹴る。動きがかっこいいな……じゃなくて。

俺を狙って来た化けカラスの脳天を打つ!


「クカァァァァァ!?」

そのまま二三羽を、鈴音が素早く動いて倒す。ホントに凄いな。レベルは同じなのにチートだな。

解体して血を見るのは嫌なので、魔石だけでも回収しておく。


「さ、行こう」

当たり前のように手を繋いでくるのでなんだかドキドキしてしまう。

「あの。なんで手を繋ぐの?」

「繋ぎたいでしょ?」

「あー、うー」

ストレートに聞かれたら繋ぎたいと思うけどなんだろうか。これでいいのか。


「ふふ。ホントは向日葵と手を繋ぎたかった?」

いたずらっぽく微笑まれるとなんとも照れてしまうな。


「いいから行くぞ」

「はいはーい。ま、手を繋ぐのはこっちの事情だから繋いでて」

「あ、ああ。よく分からんけど」

どんな事情だよと思いつつ進むと、家の周りはそうでもなかったが、離れるにつれて足場が悪くなる。

そして、スーパーが見えてくるのだが。


「わー、人が列を成してる?」

「そうだな。みんな生活に必死なのはわかるけど……」

若者が入り口にさっとうしていて老人とかが追いやられて入れないみたいだ。


「若者がぁ!年上を敬え!」

「あー?若者の方が沢山食べるから俺らの方が先だ!」

「なによ!私たちの方が先よ!タイムセールを勝ち抜いてきた私たちを舐めるな!」

「あーあー!親ガチャしくじったわ!」

「なによ。私こそ子供ガチャしくじったわ!」

おばちゃんたちが若者を押しのけている。

家族をガチャの中身に例えるのはどうかと思うが。


「あー、あー、みにくいなぁ」

「まあ、あれが人間なんだろ」

「だねー。どうする?蹴散らす?」

「おいおい。一応人間同士助け合わないといけないだろ?」

よく分からないこの状況ならなおのこと。

しかし、今更ながらに思うんだが、警察とかはなにをしてるんだろうか。


「特に関り合いたくもないし。裏から入るか」

「そ。じゃ、いこー」

何故、元気なのか。入り口に殺到する人々を横目に進んでいく。でも、あれだな。この調子だとすぐに食料がなくなるか。

他の方法を考えないと行けないか。



つづく

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