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その21

「そうですね。私、もっと頑張らないと。暗いと良い男に出会えませんもんね!」

ハンカチで涙を拭うとにこりと笑う。たまに見かける新妻さんは確かこんな風に明るく笑う人だっけ。


「そーそー、その調子。でも私のダーリンは渡さないから」

鈴音は特に向日葵に見せつけるように腕を絡めてくる。

「もう!鞘音から離れろー!」

向日葵は頬を膨らませつつ引き剥がそうとしている。それをクスクスと笑い眺める新妻さん。


「ふふ。時野くんはモテモテだね」

「はは。自分でも戸惑ってます」

「さ、行きましょ。みんな集まってるみたい」

「ええ、そうですね」

先頭を行く新妻さんの後ろ姿もきれいな人を期待させる雰囲気だ。いや、それはいいとして。

この人、ここまで一人で来たのかな?も、もしかして強いのかな?



そんなこんなで公民館に入ると子連れのおじさんやらおばさん。じじばばたちもいた。それでも来てない人もいるし亡くなって来れない人もいる。


離れたとこに権蔵を見つけて目が合うがすぐにそらされる。昨日のことでなんか気まずいのかもしれない。

ムカつく相手と協力したからな。


「おに~ちゃん!こっちだよ!」

優菜ちゃんが俺のとこまで来て手を引いていく。なんとなく微笑ましいな。

こんな状況になっても子供が笑顔ならそれで良いか。


「分かったから引っ張らないで」

「あ。こら、私の鞘音を連れていかないでよ」

「あなたのじゃないです~」

鈴音と向日葵がわいわい言い合いながら着いてくる。

すると工藤さんが怖い顔で聞いてくる。


「君はロリコンじゃないやな?」

「は?そんな訳ないでしょう!」

あまりなも下らない質問に呆れてしまったがこのご時世だからな。心配するのもしょうがないか。

きっと子供好きには肩身の狭い時代なのかもしれない。


「ならいいんだ。君が両手に花なのはいい。俺だってモテたいからな。

だが、優菜のハートを射止めたら許さんぞ」

低い声で脅さないで。てか親馬鹿。


「もう、お父さん!お兄ちゃんをいじめるお父さんはきらーい!」

「私も鞘音をいじめる人きらーい!」

「優菜……そんな……JKまで……」

鈴音が優菜ちゃんと一緒になって工藤さんを困らせてる。それを見て新妻さんがクスクスと笑っている。

な、なんか、全然重たい空気にならないな。

犠牲者が出た人だっているだろうに。



「そう言えば真姫先輩いないね?」

「ああ。そうだな。あの人に限って負けることはないだろうけど……」

向日葵に言われて気づく。あの人のことだから大丈夫だろうけど。弟の武瑠もいないか。



「やあ、時野。生きていたか」

のそのそと黒野が気後れ気味にやってくるので片手を上げて挨拶する。


「おう。黒野。食料ありがとうな」

「ホントそれ。鞘音に美味しいご飯食べさせられたよー」

「あ、ああ。いいよ礼なんて。僕も言い過ぎたから」

距離が近い鈴音にドキッとしているのか。俺はなんかもやっとするのはなんだ?鈴音のことを気にしてるのか?分からん。


「黒野くん。私からもお礼を言わせて。ありがとう」

「いやぁ、いいんだよ」

向日葵は可愛いからな。ドキドキするのは無理ないけど女子に弱いだけか?




そうこうしてる内におんとし九十才のおじいさんが前に出てくる。

あの年で足腰はぴんぴんしている。町長なのだがなぜかみんなからは長老と呼ばれてる。


その長老がみんなを見回してから鈴音をチラリと見てすぐにそらして言い放つ。


「みんなよく集まってくれた。突然、異形な者たちが現れこの地域だけでなく日本中。いや、世界中でおかしくなったみたいじゃ」

長老の言葉にざわつく。なんでそんなことが分かるんだ。いや、スマホか?


あの長老たまにスマホをいじってるのを見かけたことあるし。


「わしのスキルは『情報収集』じゃ」

みんなの疑問を解くように話しを進める長老。

情報収集。今のところ分かるのは、世界中に魔物が現れたことと政府が機能していないこと。そして様々な場所にダンジョンが出現したこと。


どうやらスマホに一瞬だけ魔力を込めると情報が浮かぶらしい。


「許さんぞ、この世界。これかららぅいんスタンプで密かに稼ごうと思っていたのに!」

長老。なんだかたくましいな。機械に強いと言うか。

「さて。これからのことだがみなで話し合おう」

そこでざわめき出す。生き残るための方法。




「食料に関しては生産系スキルや水を出せる人がすればいいんじゃないか?」

「でもただってダルくない?」

「それならお金を払えばいい!いや、あの魔石に価値を持たせればいい」

「お金なら今までの紙幣でいいじゃない」

「子供たちの勉強はどうするの?」

「移動する時はどうする?魔物を退治出来ない人もいるんじゃぞ!」

「私なんて『わがままボディ』のスキルよ?これでどうしたらいいのー!」

おじさんもギャルも意見を言い合ってるので優菜ちゃんはおろおろしてる。

こんな時に子供たちはなにも言えないだろう。


場がシーーーンとなる。わがままボディのスキルってなんだよ。

しかし、確かに使えないスキルを持ってる人はいるようだ。


「私は、掃除する時の疲労度が少し減るよ?

こんなんじゃ、魔物退治やダンジョン攻略も出来ないわ!」

主婦の一人が不安そうに叫ぶ。ダンジョン攻略する気満々だな。


「わ、わしなんて『ラウンドガール』じゃぞ!?どうしろと!?」

「僕は『ダジャレ』なんだけど!」

大人たちの同情の視線が集まる。小さい頃にそのスキルはないだろう。可愛そうだ。


「俺のスキルなんてまだ、マシなのかもな」

工藤さんがボソリと呟く。その表情は複雑そうだ。



つづく



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