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その100

「すまんのう。肩を揉んでもらって」

おじいさんが幸せそうな表情を見て高梨優は微笑む。

おじいさんの背中に胸が当たって余計に幸せそうなのだがおじいさんは余計なことは言わない。

美女にマッサージをしてもらえてラッキーと思っている。


「優。こっち終わったよ~」

同じ職場の信濃咲樹が隣の部屋から顔を出す。切れた電球を変えていたのだ。

二人はギルドの依頼で独居老人の世話をしている。

変貌する前の世界なら福祉の人たちがするのだろうけど今じゃ新人冒険者の仕事でもある。



「ち、ちょっと優!おじいさんの頭に胸が乗ってる~!」

「あらあら~。いつの間に~!ごめんね~おじいちゃん!首折れなかった~?」


「……わしは天国へたどり着いたのかと思ったわい。いやむしろいつぽっくり逝ってもよいのぅ」

おじいさんはしみじみと答える。とても幸せそうだ。


「あはは!おじいさん~面白い~。でも、死んじゃ駄目だよ~?」

「そうかい?婆さんも失くなってわしは独り身じゃからのう。むしろ一人なのに何故生きなくてはならないのじゃ?」

おじいさんの問いかけに二人はどう答えていいか分からない。二人は若くて年を取った自分をまだ想像できないから。

それでも高梨優はなにか答えなきゃと考える。


「なにか~美味しいものを食べれば元気でるよ~」

「入れ歯じゃあまり美味しさを感じないのぅ。あの頃みたいにバリバリとかめぃだの煎餅をかじりつくしてみたいのぅ」

かめぃだの煎餅はこの地方に工場があって地元に愛されている煎餅なのだが世界がこうなってしまっては煎餅もレア物かもしれない。


「そうだわ~。私に任せといて~」

胸をバシンと叩くと弾むマスクメロンにおじいさんが鼻血を吹き出すので大慌て。


「いや、わしはもう極楽を見せてもろうた!う~ん」

「お、おじいちゃん?大丈夫~?」

おじいちゃんを抱き起こす高梨優だがその胸の弾力がおじいさんの顔を覆い尽くしているので返事が出来ない。


「優、それじゃあおじいさん窒息しちゃうよ!もう!」

仕方ないなと信濃咲樹はおじいさんを抱え直すとなんとも言えない幸せそうな顔だ。


「……男って奴はまた」

「うふふ~。スケベじじいって可愛いじゃない~」

「マジか?」

そう言えば高梨優の男の趣味は悪かったな。貢がせる男やら浮気ばかりする男やら。この前のはヒモ志望の男だった。何度止めても特に堪えた試しもない。



スケ……おじいさんと別れて二人は帰路に着く。

季節の変わり目。空気は冷たくなりつつあり夜はもう一枚羽織りたくなる。祭りの準備にみんな活気づいてるのも無理はない。こんな世界になったのだから。しかし、長老の鶴の一声でみんなが笑顔に。どんな時でも祭りで騒ぐのだと。高梨優はそれを呑気に眺めてる。

信濃咲樹はそれに呆れつつ夕暮れの畦道を歩いていた。


「おろろ~ん」

「きぇひひひひ!」

夜に現れる魔物泣き虫こよしとマッハゾンビが慌てん坊なのか少し早めに出現したが二人は慌てることなく武器を構える。


「行くよ、優」

「は~い。いゃん、このゾンビなんか、エロい!」

若い生気を求めたマッハゾンビは足も早く脆弱な女を翻弄してると思った。

事実、夜に出る魔物の中では一番速い。


しかし、レベル的には二人のが高いので二人は動きを追えている。

二人は武器を構えると油断なく構える。

高梨優は、見た目どこにでもあるバレーボール。

しかし、魔石を使い鍛えてある凶器である。

雑魚ならば当てれば魔物は粉微塵になる。

高校時代はバレーボール部でいいとこまで行ったから獲物はこれである。


一方、信濃咲樹はハンマー。これも鍛えて魔石で強化してあるものの最初は槍を使っていたが琴美の薙刀と似ているので変更した。

それに鍛冶をしているので普段から使いなれているものの方が良いと判断したのである。



「え~い!ファイヤーサーブ!」

高梨優は魔力で作り上げた球を上空に上げる。その時に弾む胸に気を取られたマッハゾンビをオーバハンドで打ち抜いたサーブがマッハゾンビの首を吹き飛ばす。


「うけけけけぃ!?」

首はごろごろと転がって用水路にポチャン。

残ったふらふらのマッハゾンビの身体は走りながら消滅した。


高梨優が信濃咲樹の方を呑気に振り返ると小型のハンマーで倒していたとこだった。


泣き虫こよしは、見た目絵本に出てくるような白いお化けで、えんえんと泣いて相手の素早さを落とすお化けだったが泣く前に倒したので意味はなかった。


「おつ~」

「はい~」

二人はハイタッチすると魔石を回収して歩き出す。

秋の虫たちは呑気に鳴き出している。


「今のお化けは可愛くて倒しづらかったわ~」

「ふふ。そんなこと言って躊躇わずにハンマーで叩いてたじゃない~」

「あ、はは。生き残るためにはね」

信濃咲樹は笑って誤魔化す。まだ若い自分の人生はこれからも続いて行くのでこんなとこでは死ねない。

それに行方不明の両親とも会えてないから。生きないといけない。

そのためには非常にならないと思ってる。



「もうすぐお祭りだね」

「そうね~。みんな笑顔だといいわ~」

「優は誰か誘うの?」

「う~ん。時野くんともっと仲良くなりたい~」

見た目パッとしてないけど女子にモテて優しい。

自分の周りには女を見下して見る奴やプライドの高い奴が多かったので時野みたいのは見てるとホッとするのだ。

そう考えると自分の男運も高梨優に負けないなと思い苦笑した。


「そうね。女性に囲まれて普通だったら苦手な感じなのに不思議とそう感じない人だよね」

「咲樹も~?私も~?元カレのヒモ野郎なんかよりよっぽどいい人だよね~」

「優は男運ないからね~」

のんびりしてて優しい。バイトでものんびりしてるのを見越して行動するのでフォローする時も不思議とピッタリしたタイミングなのだ。




「はい。お疲れさまでした~」

ギルドの受け付けで報告して廊下へ出る。

これからどうするか。武器屋でスキルを鍛えるのもありかと思うけど時間も時間だし二人は帰ることにした。


ギルドのある小学校はこの時間帯は大人で賑わっていた。町のために戦う者。一攫千金を狙って冒険者をする者。普通にお酒を飲みに来てる酔っぱらい。


そんな中。町の人が物々しく巡回している。それは、『警備』のスキルや『衛兵』のスキルを持っているものが多いらしい。


「そこのお嬢さんがた。これから帰りかい?」

その巡回中の人たちが話し掛けてくる。まあ、高梨優の胸にチラチラと目線をやっているのはいつものことなので高梨優は気にしてない。信濃咲樹も男ってこんなもんだよねと思いつつ呆れているが。


「はい~。お疲れさま~」

「こんな時間まで出歩いていては危ないよ」

「もしよければ送っていくがどうかな?」

二人とも足軽の格好をしている。二十歳前後だろうか?眼鏡をかけた人と似合わない髭を生やしてる人。

親切心もあるのだろうけど下心も見えているので信濃咲樹的には遠慮したい。

しかし、高梨優は素直に嬉しそうに頷く。


「わぁ~、ありがとうございます~♪嬉し~」

「ちょっと優。子供じゃないんだから少しは警戒心持ってよ」

これじゃあどっちが年上か分かりはしないと呆れる信濃咲樹はでも、夜道に二人きりと言うのも怖いかとも思う。

男の下心も怖いが夜の魔物も怖い。昼間の魔物よりも強かったりするからだ。

まあ、この辺の魔物ならそれ程でもないが亡霊侍のヤバいのが出るとも言われてるしキングオブデストロイアリゲーターがいつダンジョンから出てくるとも限らない。


悩んだものの二人は送ってもらうことにした。悩んでいたのは信濃咲樹だけだけど。



つづく


のんびり100話読んでくれてありがとうございます!


小説を書き始めた二年くらい前は一日十人くらいだったのが投稿した日は三桁。ありがたいことですね~


これからも気が向いたらどうぞ~


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