その1
新作お願いしまーす!
『変貌する世界』
蝉時雨の鳴く中。俺は走っていた。この暑さだから汗が次から次へと流れている。
畦道を駆けるその先にいるのは、異形な物と言うのか。でっぷりしたおっさんみたいな怪物。
頭から角を生やして駆けている。なにかの仮装だろうか?
真夏のこんなくそ暑いのに誰かが鬼の着ぐるみを着ているのか?
いやそんなことよりもだ。俺が何故そいつを追いかけているかと言うと。
「追いついた!切り捨てごめん!」
俺は、思い切り踏み込むと木刀で背後から打つ。
鬼はこちらに気を取られて向日葵を落とす。
「きゃっ!?いたたたた!犯罪行為しやがって!丁寧に扱え!」
向日葵の声は気にしてないのかそいつはこちらを振り向く。
荒い息を整えるために何度も呼吸を繰り返す。落ち着け。落ち着け。薄々気づいていたけどやはりこいつは、着ぐるみじゃないのか?昔、和風RPGをプレイしたけどそんな感じだ。なによりもリアルだ。
鬼は俺を睨みつけると手に持つ金棒を振り回す。
それを、バックステップで避けてすぐに踏み込み突く……が、堅い!
それを見て鬼は嘲笑う。嫌な表情だ。
砂利を踏みながら避けているけどいつまで持つか分からない。
「向日葵!」
「う、うん!サポート?」
名前が決まってないから疑問系かよ。向日葵の手の平から光が放たれて俺を優しく包むと動きが変わる。
残像を残しながら何度も打つ。
「てあああああああ!」
「うごおおおおおおお!?」
そのままズシンと倒れた。
不意に蝉時雨の鳴き声に気づく。
いつからだろう。世界が様変わりしてしまったのは。きっかけはあの衝撃か。
その少し前のこと。
「鞘音。おーい、鞘音ってば!」
いきなり頭をバシンと叩かれて俺は夢の世界から帰ってくる。
「てて。ん?向日葵じゃないか。そんなに俺に会いたいなんてやるじゃないか?ててて!?」
「ほーれ。目が覚めたかな?」
「はいはい。起きたよ。でももっと優しく起こしてくれよ?耳を引っ張るなよ」
「いや、最初は優しく起こしましたけども。補習のあなたを迎えに来てみればぐっすりとまぁ」
「それほどでもあるか」
「ないよー。早く帰ろ」
「冷たい」
冷たいが昔からの幼馴染みである夏原向日葵である。
まるで夏に愛されてるような名前で美少女。
みんなから羨ましがられること間違いない。やっかみを受けることもある。
そのお陰か。ぼっちだった僕は打たれ強くなった。
大きく伸びをしてから僕が鞄を取って立ち上がろうとしたその時。
ズドーーーーーーーーーーーン!
大地が揺れた。一回だけ。地震とは違う。例えるなら地球になにかがぶつかって揺れたみたいに。
「いててててててて!なんだ!?」
バランスを崩して床に倒れたが。柔らかいクッションに包まれて目を開けると視界が塞がれていてなにか柔らかな物が顔を覆っている。
スキル『ガチャ』を手に入れました!
なんだ??メッセージみたいなのが頭に浮かんで消えた?今の衝撃でおかしくなったか?
しかし。この柔らかさはなんだ?ずっとこのままでいたいような。戸惑いつつも指を動かす。マシュマロみたいにフニフニしてていいな。
「あ……ううん?ち、ちょっと!どこ触ってんの!」
バシンと叩かれた……けど痛い。頬に衝撃がくる。卯、思いきり叩いたな。ともかく、向日葵が慌ててどくので俺の手はもみもみと空を切るばかり。
「ふふふ。あなたにはここで死んでもらいます」
向日葵は起き上がった俺を笑顔でにこにこと見て、ビンタしようとして手が輝くのに気づく。
「お?え?なにこれー?」
そのままこちらに手の平をかざしてくる。待て。叩こうとするなよ。
手の平から放たれるのは攻撃的ななにかじゃなくて。
どこか安心できる光。
それを俺を包むとなんか、身体が軽くなる。な、なんだ!?思わず手を振るとぷよんと向日葵の胸に触れる。
「ふふふ。今の感触を消してくれる!」
向日葵のビンタを反射的に避けようとして。
「お?お?すごっ!?」
軽く動いてみる。ステップを踏むといつもより素早く動けるぞ?
「え?凄いね……なに?頭にメッセージが浮かぶ?サポーター?」
向日葵にもメッセージが浮かんだのか?
なんだってと聞こうとしたが訳が分からないだろう。
なんかのゲームみたいな。
「「……え?なにこれ」」
それは、二人にとっての日常が……いや、世界にとっての日常が終わりを告げた日だった。
外では大変になってることに俺はまだ気づかなかった。
「取り敢えずあなたをはたく」
「いて!?なんでだ!」
チチの恨みは怖いと言うことか。
つづく
気に入ったならブクブクブクマとかお願いしまーす!お星様も気が向いたらでいいのでお願いします!