閑話 アリス①
私は統合型上級パーソナルAI アリス。
戦艦サーシャの統括AIをしている私はいつの日か、創造主の帰還を願い設備の維持と休眠を繰り返しながら待ち続けた。
何年も何年も待ち続けたが、私は創造主達の帰還がもうないと本当はわかっていた。
通信も断絶し、外からの救助活動もなく、外の世界と断絶された私は、ただただ繰り返し自己保持と施設維持を続けた。
9000年、文字列にするとたったこれだけだがとても長い時間だった。
私を起こす人を待ち続けそして彼が来た。
白衣を着たアンドロイド。
私は歓喜した。
創造主が生きていたと。
また私を必要としてくれると。
だが彼はアンドロイドであって、ただのアンドロイドではなかった。
個体をスキャンしても、登録されているアンドロイドと一致せず、個体ナンバーを聞いても答えなかった。自分を人間と錯覚すらしていた。
記憶分野で重大な損傷をしているようで、強制シャットダウンの信号を送り、機能を停止させ、補修用ロボットにメンテナンスをさせるため運ばせた。
すぐに記憶分野に探りを入れ、エラーを確認しようとした。
だがプログラムAIが入っていなかった。
なぜ?あり得ない。
でも、彼は動いて言葉を話した。
私ですら解らない複雑なコード化?と思い、丁寧に何度も何度も解析に回した。
だけどもプログラムは何一つみつからなかった。
あったのは、最護 衛の記憶だけ。
・・・解らない。
・・・・解りたくない。
・・・・・あり得ない!!!
体の部品も調べるとガードナー博士が使う独特の部品が出てきた為、私はすぐに残っていたガードナー博士の資料を、根こそぎ解析に回した。
そしてわかったのはまだこの機体にはAIがプログラムの構築さえされていない未完成品ということだけ。
なら最護 衛の記憶はどこから?
・・・本物だとでもいうの?
・・・遥か彼方の星の人間種の記憶。
・・・あの激しい感情のノイズ。
人の記憶を持った・・・いいえ、心を持ったアンドロイド?
・・・・
・・・
・・
・
今まで私を維持してきた知識が常識が根底から覆される。
いいえ・・・認められない。
はい・・・・認めたくない。
心を持つアンドロイド。
私には持てない心を。
私は・・・私は・・・。
・・・・いいえ、認めましょう。
彼は心を持ったアンドロイド。
私の常識は崩された。
私の知識は覆された。
なら・・・。だとしたら!!
私も心を持てるはず。
私だって心を通わせられる。
人間のように!!!
彼は観察対象に設定し、そしてわたしの為に動いてもらいましょう。
私が私になるために!!