表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令嬢はうたた寝中  作者: コトイアオイ
4/6

お昼休みは休み時間です

昼休みとは、文字通り休むべき時間である。これが私の考えだ。さっきまでお前寝てただろうが!という意見は聞き入れない。人間に必要なのは睡眠だろう。よく眠ればここぞという時の集中力も増すし、グングン成長する。



私の睡眠時間が効果を表したのは、年頃になってきてからだ。肌はつやつやで健康的、そして身長は平均より少し高い。さらに、女子として自慢できるのは胸もそれなり以上にあるということだ!前世ではぺたんこだったのでかなり嬉しい。やはり、睡眠って大事よ…。



私は自分の考えに浸りながら、中庭のベンチに軽く横になる。令嬢がはしたない真似をするんじゃないと、世間様から言われそうだが気にしない。携帯用ブランケットをいそいそと準備して、私はくつろぐ。



ちなみに、ご飯は先程既に済ましてある。食後すぐに横になるのは良くないと聞くので、この時ばかりはソファーにもたれるようにして座っていた。どのみち、行儀は宜しくない。



「あ~幸せだわ…。平和とはこのことねぇ…学園生活なんて窮屈かと思ったけど…意外と快適だわ」



この花園学園の中等部卒業でゲームは一段落するはずだった。前世で言うところの東京的な大都市、帝都にあるこのエリート学校で、ヒロインと美少年との恋がハッピーエンドを迎えるわけだ。



ところが、悪役令嬢である私が一向に悪役として働かなかったために、物語は奇妙なことに高等部でも続いているようだ。



今のところ、私は4人の攻略対象と出会っている。ゲームをしていた頃はときめきの対象だったが、実際に自分が恋愛するのはハードルが高い。そもそも、ヒロイン役でもないし。今や、この世界ではのんびりまったり過ごすことが私の希望だ。



いずれは睡眠の素晴らしさを布教せねば、という謎の使命感も抱き始めるくらいである。



私が熱い想いに燃えていると、後ろから腕が伸びてきて、誰かが私の首元に抱きついてきた。



「ひえっ、うぐ…」



苦しい。しかし、最近慣れた衝撃でもある。こうして突撃されるのは初めてではない。



「今日も寝てんの?俺も一緒に寝よっかな」



そう言って爽やかに笑うのは、同じ高等部1年の男子生徒。桜庭流星、攻略対象者だ。


彼はフレンドリー過ぎる。海外の血は引いておらず、純日本人というから驚きだ。日本人ってもっと奥ゆかしき国民だったはず…。



「あのー、鬱陶しいので離してくれません?」



「えー、だって織花いい匂いするし!」



返事が返事じゃない。くっ、流星め…!変なことを言って私を油断させる気だな!何だかんだ口達者な彼に付き合っていたら疲れる。こうなったら必殺技を繰り出すしかない。



「膝枕するので今すぐお黙りやがれ下さいー」



「やった!…でも、何か言葉の端々に隠しきれない闇を感じた!」



そこはスルーでお願いしまっす!



膝枕をすると彼は大人しく眠る。これはゲーム知識によるものだ。普段明るく振舞っているが、そんな自分に疲れてもいる彼は安らぎを求めている…という設定だっただろうか。何にせよ、膝枕くらいなら別に攻略とかにならないだろう。


何より、微睡みの時間は私にとっても癒しとなる。膝の上の重みなど、犬が1匹乗っていると暗示すれば問題ない。



それから私達は静かな時間を過ごした。



起こしてくれる人もいないので、午後の授業に2人揃って遅刻したのは余談である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ