入学式は眠りの時間です
中等部最後のパーティで一悶着あったが、私は変わらず高等部入学式に参加している。王子である裕貴との婚約破棄により、親から厳しいことを言われるだろうと思っていたが、そんなことはなかった。
父は「お前を任せるには頼りない野郎だった」とバッサリ切り捨てていた。母はというと、「織花ちゃんが傷ついていないならいいんじゃないかしら」とふわっと笑っていた。
ゲームで悪役側の家庭環境は詳しく描かれていなかったが、優しい家族で本当に良かった。裕貴と復縁を狙えだなんて言われたらどうしようかと思っていた。うちの家族、最高!
高等部まで無事来れたのは優しい家族と友人がいてこそ!めんどくさ…気難しい裕貴との婚約も解消されて幸せだ!
今の環境に満足している私はそのまま、眠りについた。誰かが校長からマイクを譲り受けたところまでは見たけど、それ以降の記憶はない。
ただのイスでも眠れる、どこでもいつでも眠れるのが私の特技なのだ。
前を向いて姿勢も良い状態で寝ていた私に気づくものは少なかっただろう。
そういえば眠る直前、何だか変に周りが騒がしかったな…。
少し気になるけど、私の優先順位は好奇心よりも睡眠なのよね…。
私の意識は完全に夢の世界へと旅立った。