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第99話 絶対絶命

登場人物紹介


・アメリ 主人公、体は女心は男よりの女。まさに性同一障害。


・リオ  力も魔法も超一流。ただし頭は三流。


・サオリ チート技の持ち主。こっちが主人公?


・セナ  賢者のはずが剣を鍛えさせられた魔剣士。


・エイハブ 元転移者。魔物に転生してただのおっさんになった。


・白神  シャチの魔物。強い。怖い。


・シロ  白神の子。かわいい。強い。

 


「なにー?どうなってんの?なんでボアが消し飛んだの?」


 突然消し飛んだファントムボアにリオが驚きの声をあげた。


「ふ、ふ、ふ。よかろう。謎解きをしてあげよう。ファントムボアはボア(猪)の幽霊って事でしょ。当然体当たりをしてくるよね。猪の習性として・・・」


「あー。だから盾を持ってる左手にも電気を流したのね。」


 オレがカッコよく謎解きをしようと思っていたら、サオリが口を挟みやがった。


「ちょとサオリ。まだ、オレが話してるんだけど。まあ、いいや。その通りよ。盾に電気を帯びさせれば、向こうからぶつかって来てくれるから、電気で殴った事と同じになるって事よ。」


「さすがアメリ、あったま良い。でもどうやって左手にも電気流すの?」


 リオが聞いてきたけど、サンダーを左右の手から同時に出すのは難しいのか。オレは当たり前のようにできるけど。当たり前のようにできる事を人に教えるのは難しい。オレから言えば、なんでできないかわからないからだ。脳筋二人で教え合うのは不可能に近かった。


「あー、もう。リオは全身にサンダーを流せるじゃん。それでいいんじゃない。そしたら左手の盾にも右手の剣にも電気が流れるよ。どっちも電気をよく通す物質だからね。」


「わかった。やってみるよ。サンダー!」


 リオの両手に持った剣と盾が発光した。


「やった。できたー。」


 リオは大喜びだが、随分エネルギー効率の悪い技だこと。左手一本のために全身に流すなんて。ちなみに、サオリとセナはすぐに両手から撃つサンダーができた。脳筋リオは細かい技が苦手みたいだった。


 それから、突然現れるファントムホーンとファントムボアを倒しながら、オレ達は進んだ。しばらく進むと、前方に大きな木が見えてきた。ここは古城の中のはずなのに、どこまでも続くかのような草原でなおかつ頭上には空があった。そして、あろうことか朝の太陽がオレ達を照らし、暑くなってきた。


「ねえ。みんな。あそこの木の陰で休んでかない?」


 先頭を歩くリオがみんなに声をかけた。


「賛成。」


 セナが汗を拭きながら言った。たしかに暑いしそろそろ限界か。


「よし。休もう。ついでに朝ごはんにしようか?」


 オレは魔導時計を見ながら言った。宿に帰って食べてもいいが、朝食代はその都度払わないといけないので、別に宿で取らなくても損はない。それならここで飯食って気分を変えようと思ったのであった。


 木陰に着くとオレはアイテムボックスからテーブルを一つと椅子を四脚出した。みんなを座らせるとテーブルに皿を並べた。今朝の料理は目玉焼きとサラダだ。卵も野菜もオレのアイテムボックスの中に入れてある限り新鮮だ。キャベツもどきを切り、自作のマヨネーズをかけた。フライパンに油をひき、あっためてから、卵を落とすと、ジュワーと香ばしい音と匂いが辺りに漂った。


「うーん。良い匂い。でも、大丈夫?匂いが魔物を引き付けない?」


 匂いに誘われてきたリオが魔物の心配をして言った。魔物の前に脳筋が引き付けられたけどね。


「たしかに匂いは魔物を引き付けてやばいかもしれないけど、このダンジョンは幽霊しか出ないから大丈夫でしょ。」


 オレは目玉焼きをそれぞれの皿に配りながら言った。目玉焼きだけでは寂しいので、昨日朝市で買った小魚の干物も焼いて付けた。


「美味しい料理にきれいな景色。ここがダンジョンって忘れてしまうよね。」


 サオリが辺りを見渡して言った。もちろん敵を警戒してだろう。たぶん。リオとセナは無言でがっつくように食べている。無理もないだろう。最高級のパンの焼き立てと最高級の卵の生みたてだ。美味しいに決まってる。元日本人のサオリはそれほど感激してないみたいだが。飽食の世代め。


 そこで、オレは水魔法で作った氷を入れたコップをみんなに配った。それにアイテムボックスに入れてあった熱々のカッヘを注いだ。氷が解けて良い感じになった。


「あー。アイスコーヒーね。」


 やっとサオリが懐かしいものを見て感激して言った。


「パンにコーヒーは合うからね。それにちょっと汗かいたから、冷たい飲み物が美味しいよ。」


「コーヒーって冷たくしても美味しいんだ。」


 美味しい物をお腹に入れて、ようやく落ち着いたリオが言った。


「うん。ミルクと砂糖も忘れないでね。」


「もう入れてるよ。」


 すでにリオはてんこ盛りで入れていた。


「あー。そんなに入れてー。」


 サオリがあきれていた。さすが違いのわかる女。もちろんアイスコーヒーもブラックであった。


 オレ達が朝食を楽しんでいると、突然テーブルが砕けた。もちろん上の料理やアイスコーヒーは飛び散った。反射的にテーブルから飛びのくオレ達。


「どこだ?」


 サオリが辺りを見回して言った。


「わたしの朝飯がー!」


 リオが朝飯の残骸を見て言った。


「上だ!」


 オレは木の上を指して言った。


 サルの幽霊が木の上に何匹もいた。


「みんな、木から離れて。その後魔法よ。」


 オレは後ろに飛びながら指示を出した。


「サンダー!」


 最初にセナの魔法が発動した。木に雷が落ちた。ファントムモンキーが一網打尽になった。ばらばらと落ちてきた魔石を拾い集めていると、


「わたしの朝食がー。」


「あんたのだけじゃないよ。わたしのもよ。」


 リオが嘆いて言ったがリオの嘆きにセナが同意する。食い物の恨みは恐ろしい。この後、木を見つけてはそこに現れるファントムモンキーを嬉々として狩る異世界コンビであった。


 あわただしい朝食の後は、交代してサオリとセナが盾を持って歩いた。オレとリオは後ろからついて行った。数え切れないファントムホーンにファントムボア、ファントムモンキー倒しながら進むと今までの中で一番大きな木にたどり着いた。ていうか、遠くからでも目立つその木をランドマークにして進んできたのだけれど。


「これはどう考えても、この木は怪しいわね。」


 セナが巨木を見上げて言った。もちろんファントムモンキーを警戒して近くには寄ってはいない。


「うん。でも、近づかないわけにはいかないでしょ。サルを見つけたらサンダーよ。」


 オレ達は意を決して巨木に近づいた。案の定、ファントムモンキーが何匹も現れた。矢のように降り注ぐファントムモンキーの風魔法を盾を傘のように頭の上にかざして防ぐサオリとセナ。オレはサオリの盾の傘に、リオはセナの盾の傘に隠れていた。


「サンダー!」


 まず、リオが呪文を唱えた。雷が巨木の上に落ちた。しかし、巨木が雷を吸収したのか、風魔法が止まない。


「サンダー!」


 オレの雷も効かなかった。どうしようかと思っていると。


「アメリ!前!」


 リオが叫んだ。


 突然現れたファントムボアがオレとサオリに体当たりをしてきた。幽霊と言えど風の魔法で全身をコーティングした体当たりは物理的に効く。オレとサオリは吹っ飛ばされた。


「アメリー!サオリー!ぐはっ。」


 オレとサオリを心配していたリオとセナが今度は跳ね飛ばされた。


 なんとか立ち上がったオレが辺りを見回すと数え切れないくらい多数のファントムボアとファントムホーンの群れに囲まれていた。




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