第98話 ファントムホーン
「くっそー!サンダー斬り!」
リオの剣が発光した。その発光した剣を振りまわし、リオは前と右にいたファントムホーンを一刀両断にした。左にいたファントムホーンはオレがしとめた。
「リオ。大丈夫?回復魔法かける?」
「うん。平気。平気。わたしは平気だけど。服がね。」
オレが心配して声をかけると、リオが破れた服を脱ぎながら答えた。さすが脳筋リオだ。ガードが堅い。安心したオレはアイテムボックスからリオの服を取り出して渡して言った。
「今、オレの鑑定に反応しなかったよ。」
「え?どういう事?」
リオが服を着ながら訊ねた。
「つまり、魔物はもともとそこにはいなかったんだよ。リオが近づいた瞬間にこの世に現れたんだよ。」
「え!そしたらアメリの得意な事前探知ができないじゃん。」
「そうね。だから気を付けて行こう。あと、魔物は無詠唱で魔法を撃ってくるね。」
呪文を唱える魔物がいたら、そっちの方が怖いが。
「えー。サオリと同じじゃん。そいつはやばいね。どうする?」
「幸い。威力は低いみたいだから。魔法は気にしないで行く?」
「いや。だめよ。お気に入りの服が一発でずたずたにされるよ。」
服を切り裂かれたリオが言った。オレは何か使える物がないか考えた。リビングアーマーのドロップした物に鉄の盾があった事を思い出した。アイテムボックスから鉄の盾を二枚取り出した。一つをリオに渡した。
「オレとリオが壁になるからサオリとセナは後ろについて、サオリはオレの後ろ、セナはリオの後ろについて。二人一組で進もう。」
「攻撃はどうするの?」
サオリが質問した。全員でサンダーソードを発動させるのも魔力の無駄遣いだ。ローテーションを組んだほうがいいな。
「そうね。全員で毎回サンダー唱えてたら魔力の無駄遣いだし、基本的に盾を持った人がサンダーソードで攻撃して、後ろの人はフォローにまわろう。もちろん、前衛と後衛は交代しながら進もう。」
「わかった。じゃあ、盾を持ってないときは休めるって事ね。」
「まあ、そういうこった。」
オレとリオは盾を構えながら進んだ。後ろにはサオリとセナが続いた。
「アメリ!来たよ!」
オレの左側を歩くリオが叫んだ。その声とほぼ同時に4匹のファントムホーンが現れた。オレは盾に身を隠すように低く構えると同時に詠唱を開始した。後ろのサオリもオレに隠れるように構えた。
一匹のファントムラビットが飛びついてきた。幽霊に飛びつかれても普通は痛くもかゆくもないが、こいつは案の定、風魔法を同時に撃って来た。オレの構える盾に衝撃が走る。それと同時にオレの詠唱が終了した。
「サンダーソード!」
オレの剣が電気を帯び発光する。光る剣をオレに飛びついてきて飛びのいたファントムラビットにおみまいした。魔力を帯びた剣は幽霊の魔物であるファントムでも切れる。ファントムラビットが真っ二つになった。返す剣で隣のファントムホーンも切った。横のリオを見るとちょうど最後の一匹を切り伏せている所だった。
「リオ。大丈夫?」
「うん。盾のおかげで服は無事よ。」
オレが心配して声をかけると、リオはそう返した。体よりも服かい?さすが脳筋リオさんだわ。いっそ裸で戦えば、盾を持つ必要ないじゃん。とりあえず、盾作戦は成功だな。あれ、たしかリオの剣は両手持ちのはず。
「リオ。あんた片手でその剣振れるの?」
「大丈夫。大丈夫。」
リオが片手で長剣をぶんぶん振り回した。
「ちょ。リオ。危な!」
後ろのセナが叫んだ。
「ごめん。ごめん。あっ。また来るよ!」
セナに謝罪しながらリオが警告を発した。なんでわかるのか知らないがオレの鑑定が効かない現状で、ありがたいリオの能力であった。すかさずオレは盾を構えると同時に呪文を唱える。
「サンダーソード!」
オレが剣に電流を流すとほぼ同時にファントムホーンが4匹現れた。オレは盾を投げ捨てるとファントムホーンに切りかかった。重い盾がないので素早く剣を振れる。一瞬で二匹を切り伏せた。さすがに3匹目はリオの剣撃の方が早かったが。
ドロップした魔石を拾いながらリオに尋ねる。
「リオ。なんでわかるのよ?」
「うん。なんとなく、殺気がするというか。勘かな。」
同じく魔石を拾いながらリオが答えた。
今までオレの鑑定に隠れてわからなかったがリオの野生の勘はするどいみたいだ。鑑定が使えず、サンダーソードの発動まで時間がかかる現状、リオの野生の勘はありがたかった。
そうやって進んでいると、今度は大きな猪の幽霊が現れた。ファントムボアはこちらの様子をうかがっていた。もちろんオレとリオは詠唱を続けていた。
「リオ。任して。」
オレはリオの一歩前に出た。同時にファントムボアがこちらに突進してきた。オレは盾で突進を止めた。案の定全身に風の魔法をまとわせていたのだろう盾に鈍い衝撃が来る。しかし、消し飛んだのは突進してきたファントムボアの方だった。
「なにー?」
リオが思わず声をあげた。
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