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第96話 VSサオリ

 


 次の日は、朝はダンジョンに行き、昼からはノア婆さんの所で魔法を習った。オレもサオリも朝からそわそわしていた。それもこれもこのためである。


 ノア婆さんは授業をそこそこに切り上げて言った。


「さあ、お待ちかねのアメリさん対サオリさんの試合をしようじゃないか。審判は昨日と同じくエイハブさんに頼もうか?」


「わかりました。じゃあ、アメリさんとサオリさん。こちらに並んで。」


 審判を任されたエイハブがオレとサオリを並ばせた。


「アメリ。あんたなんかわたしのサンダービームで瞬殺ね。」


 サオリがさっそく挑発してきた。


 オレはかまわずに詠唱を続ける。もちろん心の中で。


「じゃあ。始め!」


「サンダービーム!」


 エイハブの掛け声と同時にサオリのサンダービームがオレの体を貫いた。先制攻撃を受けて固まったオレに追撃が来る。


「そして、突きー!」


 しかし、昨日に続き吹っ飛んだのは攻撃を仕掛けたほうだった。サオリはオレのカウンターの右ストレートを受けて吹っ飛んだ。


「リオにできる事がオレにできないと思ったの?甘い甘い林檎飴よりも甘いわ。」


 オレの防御力はリオ程でないにしても、サオリの初歩魔法に耐えるにはじゅうぶんだった。後は死んだふりしていれば、向こうから飛び込んでくるから、それに合せてカウンターパンチを決めるのは簡単だった。同じことを昨日はリオにされたんだけどね。


「くそ!脳筋野郎め!」


 そう吐き捨てるとサオリはカウント8で立った。


「大丈夫?やれる?」


 エイハブが心配そうにサオリの手を取ると、サオリは無言で払いのけた。


「じゃあ。始め!」


 エイハブの開始と同時にオレは縮地で距離を詰めて右パンチを放った。しかし、オレの右ストレートは空を切った。


「なにー?」


 オレの伸び切った右腕を掴んだサオリは足を首にかけて締めてきた。所謂三角締めである。まずい。まずい。


 しかし、縮地を使っているオレより、なんで早く動けるんだ。足に来てるはずだからサオリは縮地は使えないはず。あ、禁じ手を使ったな。いや、そんな事よりも早くこの締めから脱出しないと落とされて終わりだ。


 ここが砂浜で良かった。すぐ横は海だ。オレはサオリに絞められたままで海まで引きずった。引きずられてもサオリは手を放さない。水につけられても手を放さない。しかし、水深が膝を超えるようになると、サオリは息をするために顔を上げてきた。オレの左パンチが届く距離に顔が来た。オレはすかさずパンチを打った。腰の入ってない手打ちでたいした威力はないが、顔が打たれるのを嫌がったサオリが手を離した。


 サオリが手を離すと同時に後ろに飛んで距離を取った。蹴っても良かったが、足を掴まれると面倒なのでやめた。


「ちょっと、船長。サオリはワープ使ったんじゃない?」


 オレはエイハブにサオリが禁じ手を使ったと訴えた。


「サオリさん。使った?」


 エイハブがサオリに問うた。


「そんなもん。使ってないよ。アメリの遅いパンチなんか避けるの簡単よ。」


 サオリがオレに挑発しながら答えた。


「うーん。わしの目で見ても避けてるだけにしか見えなかったけど。そういうわけで、アメリさんの抗議は無効ね。」


 ぐむー。たしかに、馬鹿正直にまっすぐに顔面狙って突っ込んでくるだけのテレホンパンチはいくら縮地を使っても避けるのは簡単か。オレ達は剣士だから剣で突く癖があって、素手でも右ストレートを体ごと突きこむだけだよな。魔法で相手の態勢を崩した後ならいいが、何もないと避けるのは簡単か。


「じゃあ。海から上がって。」


 エイハブが試合を仕切りなおした。


「それじゃあ。始め!」


「サンダービーム!」


 エイハブの開始の合図とともにサオリがサンダービームを撃ってきた。先程の反省からか追撃の突きをしてこない。ただのサンダービームが何も効かないと言おうとしたら、


「サンダービーム!」「サンダービーム!」「サンダービーム!」


 無詠唱で連発してきやがった。いくら効かないからって、痛くないわけではない。いい加減に頭にきた。


「サンドストーム!」


 オレはこの試合初めての魔法を撃った。砂嵐があたり一面を襲った。さらに土魔法で、砂のかたまりでオレのダミーをいくつも作った。ダミーの一つ?に隠れてサンダービームを避けた。


「ふん。昨日の作戦ね。砂で視界を奪って、わたしの隙をつこうってわけね。わたしは脳筋のリオと違って、そう簡単にはひっかからないわよ。」


 そう言いながらサオリはダミーを一つずつサンダービームで破壊していった。いくつめかのダミーにサンダービームが当たった時に、


「手ごたえあり、そこよ。」


 サオリははじけ飛ばなかったダミーにパンチを放った。


「今度はパンチに電撃を込めて撃ったから、いくら脳筋のアメリでもただでは済まないよ。サンダービームとサンダーパンチの相乗効果でノックアウトよ。」


「ふーん。それでのびてるんだ。」


「あ、アメリ?」


 油断していたサオリに右ストレートを打った。今度は避けられなかった。サオリが倒れるとすかさずにチョークスリーパーを決めた。サオリはオレの右太ももを叩いてタップした。


 もちろん、サオリの必殺技を受けてのびているのは審判のエイハブだ。どんなに視界が悪くてもオレには鑑定がある。鑑定でサオリとエイハブの位置はつかんでいた。後はエイハブの影に隠れて、オレの代わりにエイハブがやられるのを待っていただけだ。しかも、やみくもに突っ込まずに足を止めて打った。かわされるわけがない。


 のびたエイハブに代わってサオリがオレの右手を上げてくれた。


「まいった。完敗よ。アメリが審判も道具にするのを忘れてたわ。いや、わかっていても今のは、避けれなかったわ。」


 こうして、強敵サオリはオレにくだされた。残りはセナだけだ。


「あとはセナだけね。覚悟は良い?」


 オレはセナを睨んで挑発した。


「まいりました。」


 セナが土下座して言った。


「え?もう?」


「だって。わたしは体捌きはリオより劣るし、魔法はサオリに劣るし、その両方を破ったアメリには到底かなわないわ。かなうわけないわ。勝てない相手とは喧嘩しないのがわたしのポリシーよ。」


 まあ、まいったって言ってる以上戦う理由もないか。それより、賭けの方が気になるな。


「それで、セナはどっちに賭けてたのよ?」


「もちろん。アメリよ。」


「じゃあ、その儲けたお金の一部ででケーキを奢りなよ。それで勘弁してやるわ。」


「わかった。喜んで。」


 ちなみにのびたエイハブはリオがヒールをかけて介抱した。


 とりあえず、オレはこうしてリーダーの面目を保ったわけだ。あっ。リーダーは年長者のリオだっけ?


 その後、オレ達一行はサークルアイの町へと繰り出した。もちろんオレの優勝祝賀会のためである。





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