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第95話 VSリオ 決着

 


「・・・サンドストーム!」


 オレのサンドストームは風で砂ぼこりを舞いあげるだけの単純な魔法ではない。土魔法を使って砂を空中に舞い上げ、それを風魔法で飛ばしているのである。砂が締まっていようが関係ない。土魔法の力でどんどん空中に砂を舞い上げる。しかもリオの水魔法でしまった砂は水を含んで重い。


「ぎゃー。目が目が。」


「痛、いたた。砂が・・・・・」


「痛い。痛い。」


 水を含んで重くなった砂がビシビシとリオを打ち付けた。目に入ったのかリオが悲鳴をあげた。それどころか、試合を観戦していたセナやサオリも砂に襲われた。視界はゼロ。さらに砂のつぶてが襲ってくる。もはや試合どころではなかった。一人を除いて。そう。オレは魔法を発動させると同時に目を閉じていた。視界がゼロでもオレには鑑定がある。鑑定を使えばレーダーのように敵の位置を感じることができる。オレは背後からリオに近づくと飛びついた。そして胴を足で締め、首を手で締めた。所謂チョークスリーパーである。


 やがて砂嵐が収まり、視界が元に戻った。そこには倒れたリオの姿があった。カウントを取ろうとしたエイハブを制して、オレはリオに近づいた。そしてリオを抱き起し、活をいれた。落ちていたリオは目を覚ました。


「な、なに?リオどうしちゃったの?」


「たぶん。リオはアメリに締め技をかけられて落とされたんだと思うわ。」


 セナがサオリに試合の状況を聞いた。元の世界で格闘技ファンだったサオリは的確に状況を言い当てた。


「落とされた?」


「気絶させられたって事よ。でも、今の試合は物言いね。」


 そう言うとサオリは勝ち名乗りを上げようとしたオレに近づいてきた。


「リオ大丈夫?アメリ。今の試合は審議ありよ。」


 リオを気遣った後、オレにいちゃもんをつけてきた。


「うーん。死んだおばあちゃんと一緒に遊ぶ夢を見たよ。」


 リオが寝ぼけた事を言った。


「審議?どこに審議の余地があるんだよ?」


 オレはサオリに食ってかかった。


「アメリ。あんた。あの状況でどうやって、リオを捕まえたのよ?」


「うっ。それは・・・」


 オレが言い淀んでいると。


「船長。今の試合だけど。ちょっと気になるところがあるの。セナも来て。」


 サオリはみんなを集めた。ちなみにノア婆さんにはオレの能力に関わる事なので遠慮してもらった。


「いまの試合、アメリ。鑑定を使ったでしょ?」


 みんなの前でサオリが問い詰めてきた。


「は、はい。」


 オレはしかたなく小さい声で答えた。


「それがどうしたの?」


 セナがきょとんとして聞いた。


「鑑定はわたしのワープとかと同じチート能力なのよ。それを他人のノア婆さんの前で使って。最初の取り決めで、そういうのは使わないって決めたんじゃなかったの?」


「ああ。そう言う事ね。じゃあ、いまの試合は無効って事ね。アメリには気の毒だけど。」


 そうセナが言ったところ。


「負けよ。わたしの完敗だわ。悔しいけど。」


 リオが力なく言った。


「リオさんが負けを認めるなら決まりだね。あと、サオリさんのワープと違ってアメリさんの鑑定は目立たないから別に人前で使っても良いと思うんだけど。そういうわけで勝者アメリ!」


 エイハブがオレの手を取って観客にアピールした。もっとも観客はノア婆さん一人だけど。サオリは納得行ってないない様子だがオレの勝は決まった。


「話し合いはもう終わったかい?」


 オレの勝ち名乗りを聞いて、ノア婆さんが近づいてきた。


「ええ。」


 とエイハブが答えると。


「いやあ。いい試合だったわい。逆転逆転で手に汗を握ったぞい。最後、どうやってリオさんを倒したのか、見れなかったのは残念だったけどな。」


「それはこうやって締め落としたんですよ。」


 オレはサオリに飛びついて先程のチョークスリーパーを再現して見せた。


「ほう。こうやって、首を絞めるのか。なるほどのう。」


 ノア婆さんはしきりに感心していた。剣と魔法のこの世界では体術と言う物がまったくと言っていいほど知られていなかった。締めるよりも剣で切ったほうが手っ取り早いから当然である。戦闘狂のノア婆さんはオレから話を聞くとメモを取っていた。大方孫娘のアーリンにでも教えるつもりだろう。しまった体術も秘密にしておくべきだったかな。そんな事を考えていると、


「アメリ。いい加減にしろ!」


 サオリがオレの締めた手を振りほどいて、みぞおちに肘を入れた。


「ぐえっ。」


 オレは腹を押さえてうずくまった。


「じゃあ。そう言う事で二回戦はアメリさん対サオリさんで行きますか?」


 エイハブが試合を仕切ろうとすると、


「ちょっと待って。今日はここまでよ。見て、わたし達の格好と地面を。」


 セナが水を差した。


「いや。や・・・」


「いいわ。楽しみは明日ね。アメリ。覚悟しときなさい。」


 オレの声を遮ってサオリが賛同した。なるほど、オレのサンドストームの威力はすさまじかった。砂浜はえぐれ、オレ達は全身砂まみれになっていた。オレは全然かまわないが、きれい好きなセナとサオリは一刻も早く風呂に入ってさっぱりしたいんだろう。


「そういうわけでもないんですけど。アメリさん対サオリさんは本人たちの要望で明日に延期で良いですか?」


 エイハブがノア婆さんに聞いた。


「ああ。わしはいつでも良いよ。今日はリオさんとの試合でアメリさんもダメージが残ってるだろうからちょうどいいんじゃないか。」


 ノア婆さんが余計なお世話でオレの事を気遣ってくれたが、オレとしては砂が水を吸って重くなってる今を逃したくなかった。


「いや。まだ全然大丈夫だから。すぐやろう。」


「「明日よ。」」


 サオリとセナに睨まれた。


 そういうわけで、サオリとの試合は明日になった。リオの水魔法のおかげで威力を増したサンドストームで今日は勝てたが明日はこううまくはいかないだろうな。オレは気を引き締めなおした。





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