表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/373

第93話 エイハブ危うし?

 


「ちょっと、待った!」


 オレは魔法詠唱中のノアとエイハブの間にあわてて割って入った。オレの勢いに押されてノアはようやく詠唱を中断した。魔法はやめたが、こいつは魔物ですぞと、わめき散らすノアにオレはエイハブの事を説明した。元人間であり、今はオレの使い魔になり大人しくしている事を聞き、ようやく大人しくなった。


 エイハブが人に取りついてオレ達の中に紛れ込んでいると思ったらしい。エイハブの変身を見破ったのはさすがだが、それにしても魔物即攻撃と言うのはいただけない。この世界にも魔物使いというのは存在するはずだ。オレはノア婆さんのそそっかしさを少し知った。


「いやー。ごめんね。失礼したね。なんせここらはファントム系の魔物が多くての。そこの人に取りついていると思ったんじゃわ。人間に変身できるファントムとはの、凄いわ。エイハブさん。あらためてよろしくお願いしますわ。」


「いや。わしこそ、失礼しました。しかし、わしの事を見破るとはさすがですな。魔法の腕も相当なものと見受ける。これはご講義が楽しみですの。」


「いや。いや。たまたま気づいただけですわ。それにわしでなかったら、誰もわからんて。それくらいエイハブさんの変身は見事じゃよ。だいたい変身できるってだけで特筆もんですぞ。そんな凄い人いや魔物さんに教えれて光栄ですじゃ。」


 爺さんと婆さんの褒め殺し合戦が始まった。長くなりそうなので、無理やり切る。


「とにかく、今日はこの五人に魔法を教えてください。よろしくお願いします。」


「いいよ。じゃあ、また海岸でやるかの。」


 オレ達はノア婆さんを先頭に前にアーリンと対決をした海岸へときた。そこは岩場の続く中でそこだけ砂場になっており、人目を避けるにはもってこいの場所だった。


「では。先日アメリさんに教えた『スリーピング』をみなさんにも教えるかの。」


 リオ婆さんが『スリーピング』について説明し始めた。説明を聞くのもそこそこにリオが質問する。


「質問です。先生。」


「何ですかな?たしかリオさんじゃったの。」


「はい。『スリーピング』は簡単で効果抜群の魔法なんですけど、味方にもかかっちゃう危険がありますよね。どうしたらそれを防げれるんですか?」


 リオはまだオレに殴られたのを根に持ってるのか、スリーピングにかからない方法を聞いた。


「おやおや、わしの説明だけでよくそんな事までわかったの?さすがじゃ。」


「ええ。身をもって経験しましたから。」


「え?わしが先日ちょっと教えただけなのにもう実戦で使えるまでにマスターしたのか、アメリさんは?」


「ええ。まあ。」


 オレは小声で答えた。


「まさか。もうマスターできるとは思わなかったから、防ぐ方法まで教えてなかったわ。さすがA級冒険者じゃの。これは教えがいがあるわ。」


 ノア婆さんの説明によると、スリーピングを防ぐ方法は、オレも前にやったように呪文を聞かない事が一番だった。それに視覚による効果もあるらしく術者を見ないようにすることも効果があると言う事だった。あと、聞いても意識をそらしていれば効かないと言う事だった。さらに、魔法の鍛錬により、魔法耐性があがれば効かなくなると言う事だった。


 スリーピングもそうだが、幻影魔法は催眠術みたいなものかと思う。催眠術に魔力をかけ合わせたものか。催眠術なら術者の言葉を聞いたり見たりしなければ、効かないって事か。とりあえずこれでフレンドリーファイアは防げれるって事か。そういうわけで、オレ達は初歩の幻影魔法とその防ぎ方をセットで習った。その日のうちに全員がスリーピングを覚えるとノア婆さんは目を丸くして驚いていた。


「いやー。凄いの。一日で一つの魔法をマスターするなんて聞いたことも見たこともないわ。よし。では、試合と行こうか?」


「はい?それは『スリーピング』を使って試合をするって事ですか?」


 オレはさっそくスリーピングを実戦で試すのか聞いてみた。


「いや。防御方法を知ってる以上、スリーピングには誰もかからんだろう。」


「じゃあ、なんで試合をするんですか?」


「決っておる。わしが見たいからじゃ。」


「「「え、ええー。」」」


 オレ達はそろって驚きの声をあげた。


「先日はうちのアーリンがアメリさんに簡単に負けたからの。改めてA級冒険者の凄さを実感したんだわ。そしたら、次は当然、A級同志のバトルを見たくなるってもんだろ。」


 この婆さんはバトルマニアか。それにしても仲間同士での試合は旅立ち前依頼だな。やってもいいが、いろいろと細かいルールを決めないといけないな。魔法も体術も上がった今では大けがしかねないから。


「わかりました。その前に少しオレ達で打合せをさせてもらえますか?」


「ああ。どうぞ。」


 オレ達は試合の打ち合わせをした。まず、サオリのワープなどのチート能力は秘密保持のためにも使わない事、身体強化魔法は使わず生身の体で勝負する事、その代わり魔法はファイアーなどの初歩魔法を使う事等のルールを作った。ちなみにエイハブは魔法らしきものはスリーピングの他はファントムブレスしか使えないので不参加になった。


「お待たせしました。それで組み合わせはどうしますか?」


 オレはノア婆さんに聞いた。


「そうじゃのー。勝ち残った人に順番に挑戦していくってのはどうじゃ?とりあえず、アーリンに勝っているアメリさんに誰が挑むかって事だな。」


「はい。わたしが挑戦します。」


 リオが元気よく手をあげた。リオの奴め、オレに殴られたのを返す気だな。よかろう返り討ちにしてやるわ。


 こうして、ノア婆さんのおかげでオレ達は久しぶりに試合をする事になった。試合はかって通った冒険者アカデミー方式で武器を使わない素手対素手だ。武器を使わないから大けがはしないし、回復魔法もあるから安全だ。たぶん。



 ************************






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ