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第90話 お久しぶり

 


 翌朝、オレはいつものようにまだ暗いうちから目を覚ました。さすがに今日はリオとセナの異世界コンビも早起きをしていた。準備を済ますと、エイハブの船にワープした。エイハブもダンジョンに誘ってみたが、自分もファントムの一種であり、やはり同族とは戦いたくないと言う事で辞退した。気を取り直して、ダンジョンの、オレが爆発で壊した大広間までワープした。大広間はきれいに修復されていた。


「へえー。元通りになってるじゃない。どうなんてんの?」


 リオが大広間を見渡して言った。リオは昨日の修復途中のダンジョンを見てないからな。


「ダンジョンは生きてるから、自己再生するんだよ。昨日はまだ再生途中で大穴開いてたけど。そんな事より、問題はこの敵の多さよ。」


 オレはみんなに注意を促した。パーティの最中に絶命して魔物になったのであろうか、それとも魔物になってから生前を思い出してパーティをしているのであろうか、数え切れないほど多数の魔物ファントムが思い思いにパーティをしていた。パーティに夢中でこちらに気づかないのであろうか、一斉に襲ってくる事はなかった。


「どうする?昨日みたいにオレの魔法で一網打尽にする?」


 オレが小声で聞くと。


「「「絶対にだめ!」」」


 三人が声をそろえて反対した。オレのオレ流エクスプロージョンでみんなひどい目にあったから当然か。


「アメリの昨日の魔法で眠らせるのはどう?」


 リオが言った。


「それが、オレの魔法は幽霊ファントムには効かんのよ。」


 オレは渋々答えた。


 うーん。どうしようか。しかし、この多量の魔物達を暁はじめサークルアイの冒険者達はどうやって倒してるんだ。それに、こちらの姿がまるで見えないかのように談笑やダンスを続ける魔物達。これはもしかして。


 オレは大広間の中に走りこむと、手前で踊っていた男女のカップルに向った。


「ば、ばか!」


 リオが文句を言ったが、かまわずに切りつけた。もちろんオレの剣は空を切ったが、切られたカップルは初めて気が付いたかのように襲ってきた。他の幽霊ファントム達は気づいてないのか、思い思いにパーティを楽しんでいた。オレは縮地で仲間たちの元に戻った。


「どうなんてんの?」


 リオが聞いた。


「どうもこうも、こいつらは攻撃を受けないとオレ達に気づかないみたいよ。それよりも来たよ。」


 切ったのは二人のファントムだったはずなのに、4人に増えていた。大広間をうろつく他のファントムが戦闘に加わったと言うより、突然そこに現れた感じだった。そのことには誰も突っ込まない。というか、そんな暇はない。


「じゃあ、アメリ。お願い。」


 リオが言った。特にオレの指示がない時は先頭の人が魔法なり剣攻撃なりで最初に攻撃することに暗黙の了解でなっていた。魔法の重複や味方への誤爆を防ぐためである。いつもは先制攻撃するのはリオの役目だが、オレにお鉢が回って来たってわけだ。


 四人のファントムは剣を持っていなかった。しかし、それぞれがぶつぶつと呪文を唱えていた。


「サンダー!」


 しかし、先に呪文を唱えたはずのファントム達より先にオレの魔法が発動した。もちろん、前倒しで呪文を唱えておいたからだ。イカズチがファントム達を襲った。ファントム達は光の球になって消えた。剣士タイプのファントムは早い動きで動きまわるので、魔法を当てるのは難しかったが魔導士タイプは固まって呪文を唱えているから、当てやすかった。後には魔石が一個転がっていた。オレは魔石を拾うと、説明した。


「この見えているファントム達はたぶんダミーね。あるいはただの映像ね。でも、攻撃すると、オレのアイテムボックスみたいに突然異空間から実体になって現れるみたいね。だから、攻撃した数と現れた数が違うのよ。あと、今みたいな魔導士タイプは動きが鈍いから魔法を当てるのはたやすいね。」


「でも、なんでそれに気づいたの?」


 セナが聞いてきた。ゲームでよくある設定で、触れないかぎり戦闘にならないって事は触れずに説明する。


「まず、この地の冒険者達はここでしのいでんでしょ。だから、こんな早い段階で全滅(ファントム達の総攻撃)になる事は絶対にないと思ったの。それに、この人達ファントムをよく見たら、おかしいでしょ。同じ動きを機械的に繰り返しているでしょ。」


「「「本当だ。」」」


「だから、これは実体でないと考えたのよ。」


 オレがどや顔で説明すると。


「アメリ。あったま良いー。」


 リオが褒めてくれた。リオ、良いやつ。


「ゲームでよくある設定ね。」


 サオリがつぶやいた。サオリ、嫌なやつ。


「「ゲーム?」」


 異世界コンビが同時に聞いた。オレとサオリはゲームについて説明したが、なかなか二人は理解してくれなかった。ゲームをしたことない人に説明するのは難しいだろう。だが、聡明なセナは少し理解したようだ。


「じゃあ、わたしたちの世界はゲームの世界じゃないの?」


 オレがうすうす気づいてた事をズバリと言いやがった。前から思っていた。オレとサオリの異世界転移組だけが持っている数々のチート能力、あと、オレと仲間になった事でのリオとセナの異常な成長ぶり。何かがおかしい。おかしすぎる。


『マリア様。オレの声が聞こえますか?』


 オレは二年ぶりにこの世界の女神であるマリアに心の中で話しかけた。


『あら。お久しぶり。わたしの事を忘れてたわけじゃないのね。それでどうしたの?』


『いや。それはオレのセリフなんだけど。まあいいや。オレの質問に答えてもらえますか?この世界はゲームの世界なんですか?オレが地球でやってたRPGのような。それでオレ達はゲームのキャラなんですか?』


『ゲームなんかじゃないよ。わたしの世界とゲームの世界がたまたま似ていただけよ。もしRPGだったらわたし自身が参加するでしょ。あ、でもそう考えるとサオリはわたしの分身かもね。』


『え?そうなんですか?』


『いや。違うけど。それも面白いなと思っただけよ。まあ、あえて言うと、RPGのキャラって言うより、ドラマのアクターよ、あなた達は。主人公がすぐに死んじゃったら、話が進まないでしょ。だから、あなた達は他の人よりちょっとだけ強くなるようにしてあるのよ。わたしに面白いドラマを見せてね。』


『ドラマ?じゃあ、オレ達の運命はもう決まってるんですか?』


『そんな、筋書きのある先のわかったドラマなんて面白くないでしょ。あなたの運命なんて何も決まってないよ。あなたのドラマの筋書きはあなた自身で書いて。面白いドラマを期待してるわよ。あ、リオが呼んでるわよ。じゃあ、またね。』


『あ、マリア様・・・』


「アメリ。どうしたの?ぼーとして。それで、これからどうする?アメリが指示しないなら、いつも通りわたしが切り込んで行くよ。」


「いや。ちょっと神様と交信してだけだよ。あ、そんなかわいそうな子を見るような目でオレを見ないで。本当なんだから。」


 オレから距離を取って後ずさるリオにオレは必死で説明した。オレの能力がチートな事とリオ達の成長が異常すぎる事を説明して、それが女神マリアの加護であると告げるとようやく納得した。


「アメリの能力の事はわかったけど、じゃあサオリの能力はどうなの?」


「うん。サオリの事は他人事だから知らないけど、サオリも他の神様の加護をうけてるんじゃないのかな。」


「アメリ達ばっかりずるいな。」


「いや。あんた達の能力の異常な成長も他の人から見たらずるいと思うけど。」


「ふーん。そうなんだ。てっきり、わたしの才能のおかげだと思っていたわ。」


「相変わらず。しょってるね。」


「それで、マリア様はなんておっしゃってたの?」


「うん。オレ達がゲームのキャラじゃないのかと聞いたら、違うって。オレ達はドラマのアクターだって。だから、面白いドラマを見せてくれって。」


「え?ドラマ?じゃあ、わたし達はいつも観られてるの?え。嫌だー。」


 と言いながら、リオは髪の毛を整え始めた。嫌だと言う割にはまんざらでもなさそうだ。


「ちょっと、みんな。聞いてー。」


 リオはサオリとセナの所に行くとオレから聞いたことを話し始めた。サオリとセナはリオの話を聞いて、少なからずショックを受けたようで、ダンジョンの中にもかかわらず、剣を腰に戻し、話し込み始めた。


「アメリー。リオの言った事は本当なの?」


 サオリがオレに聞いてきた。


「こんな凄い事を聞いたら、ダンジョンどころじゃないわね。みんな帰るよ。帰って女神様とお話するよ。」


 オレだって女神様と簡単に交信できないのに、サオリは勘違いしているようだけど、確かにダンジョンどころじゃないや。帰って女神様とお話するか。と、言うわけで、本日のダンジョンはこれでおしまい。オレ達はサオリのワープで宿に帰った。


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