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第85話 VSアーリン

 



 砂浜で対峙するオレとアーリン。審判はアーリンの祖母ノア。武器は無しの素手対素手、魔法対魔法の勝負。冒険者アカデミー以来の久しぶりの試合だ。いやがおうにも燃えようってもんだ。


 試合前にアーリンはノアと何やら話している。大方、オレをやっつける算段でもしているのだろう。オレはと言うと、心の中で呪文を唱えている。もちろん、試合開始とともに魔法を撃つために。


「それじゃあ、始め!」


 ノアの試合開始の掛け声とともに、オレの魔法が炸裂する。


「ファイアーボール!そして突きー!」


 試合開始後に呪文を唱えようとしていたアーリンはオレの必殺技のファイアー突きを無防備にその顔面に受けた。はずなのに、手ごたえがなかった。


 残像?縮地で素早く動いて姿を消した?それにしては、はっきりと見え過ぎていた。分身の術か?オレの厨二的知識で術名を探った。呪文の前倒しをしていたのはオレだけではなかったって事か?ノアと話すふりをしてアーリンも唱えていたのか?いや、ここはアウエーだ。アーリンの家にいた時点で既にかけられていたのかもしれない?


「ファイアー!」


 呑気に分析してる場合じゃない、アーリンの魔法がオレに向って撃たれた。オレは縮地を使って横に飛んだ。オレのいた場所が轟音とともに燃え上がった。


「ファイアー!」


 続けて第二弾のアーリンの魔法が撃たれた。オレはさらに縮地で逃げた。地面が燃え上がるまでにわずかなタイムラグがあり、その隙に逃げれるが、このままではじり貧だ。いつかやられる。範囲魔法を撃って、ファイアーボールなどの発射系の魔法を撃ってこないのは、自分のいる場所を悟られないようにするためか。は!そうか。オレには見えないが、アーリンはこの近くに絶対にいるんだ。当たり前の事なのに今気づいた。オレが精神を集中しようとすると。


「アースウオール!」


 オレの前に大きな壁ができた。壁の中に閉じ込める気か?いや、退路を少しずつ絶っているのか?


「ファイアー!」


「アースウオール!」


 火と土の魔法コンボでオレは追いつめられていった。縮地で逃げるも砂の壁が邪魔をして完全には逃げきれない。何発目かのファイアーがオレの体をかすった。


「嬢ちゃん。大けがする前に降参するかの?」


 孫娘の思わぬ検討に気を良くしたのか、ノアが話しかけてくる。それにしても、腰の曲がった老婆が、アーリンの土魔法で迷路のようになった試合場でよくオレの動きに付いてくるもんだ。オレが感心していると。


「アースウオール!」


 オレの後ろにも壁ができた。これは完全にダンジョンじゃないか。ダンジョン?ダンジョンにはダンジョンの戦い方がある。オレは再び精神を集中した。


「ファイアー!」


「ファイアーボール!」


 アーリンとオレの魔法は同時に撃たれた。少し違うのはアーリンのファイアーがオレのいたその場を燃やすのに対して、オレのファイアーボールは目標物に対して飛んで行った。


「そして突きー!」


 もちろん追撃の正拳突きもセットである。オレの必殺技のファイアー突きを顔面に受けてアーリンは吹っ飛ぶ?いや、吹っ飛んだのは審判の老婆ノアであった。


「あれ?やばい。ヒール!」


 オレはノアをあわてて介抱した。


「しっかりして。オレのヒールは傷も治せるから大丈夫よ。」


「見事じゃ。アーリンの幻影魔法を撃ち破るとはさすがのA級冒険者じゃ。」


 オレの腕の中で伸びてるはずの老婆がもう一人目の前に現れた。


「アーリンの幻影魔法をどうやって破ったんじゃ。教えてくれんかの。」


「いや。破ってないんですけど、間違ってノアおばあさんに攻撃してしまって。そこにおられるノアさんは分身ですか?」


 オレが答えるとノアが突然笑い出す。


「あ、は、は、はっはー。そこに伸びてるのがアーリンじゃよ。じゃあ、アーリンかどうか確かめずに攻撃したのかい?」


「え?アーリン?」


 アーリンが伸びて幻影魔法が解けたのか、老婆のノアはアーリンに変っていた。


「ええ。オレには隠れている敵を検索する能力がありまして、ダンジョンに潜るときはいつもそれで敵を探っているんです。アーリンの魔法でダンジョンみたくなっちゃったから、それを思い出して、探った敵をただ攻撃しただけです。」


 もちろんこれは鑑定による感知である。オレに敵意のある物はどこに隠れていようと感知できた。ただし、戦闘中であったために、敵の名前まで詳しく鑑定できなかったためにノアを攻撃してしまったと思ったのである。


 アーリンは自分の分身を作り出しオレに攻撃させて、自身は審判のノアに化けてオレを攻撃し続けていたのか。審判は敵であるオレに一番近く、一番安全な場所だ。攻撃場所を探られない範囲魔法を使っていたのも素晴らしい。オレがアーリンの攻撃に関心していると。


「凄い。アメリさん。合格じゃよ。アーリンに簡単に負けるようじゃ、いくらA級冒険者でも教えるのはやめようかと思ってたんじゃがの。簡単に負けたのはアーリンの方じゃったわい。」


 はっきり言って勝てたのはオレのギフトである鑑定のおかげであり、魔法勝負では負けていた。試合に勝って勝負には負けていたって事か。


「いや。負けたのはオレですよ。たまたまオレの能力がはまっただけで。あらためて幻影魔法の凄さがわかりました。ご教授お願いいたします。」


 こうして、オレはダンジョンに潜った後はノアの家に通って幻影魔法を覚える事になった。え?リオ達?そんなもんは誘わんよ。強くなりたいのはオレであって、彼女らの事は知らんよ。リオ達が遊んでいる間も腕を磨くよ。教えて欲しいって土下座するなら、教えてやらんでもないけど。いずれにしろ、オレが呪文をコピーすれば、みんなに教えれるから、みんなで弟子入りする必要も無いって事だ。




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