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第84話 アーリンにふられる

 


 宴会はまだ真っ盛りであったが、オレとアーリンは冒険者ギルドを抜け出して近くの喫茶店に来ていた。アーリンはオレ達と同じくらい14~15歳の魔法少女だった。その魔法少女が問いかける。


「で、話って何?」


「単刀直入に言うよ。あなた。オレ達のパーティに入らない?」


「は?なんでわたし?わたしなんてB級冒険者パーティの小間使いで、わたし自身はC級冒険者よ。A級冒険者のあなた達と一緒に冒険できるわけないじゃない?」


「あー。それは大丈夫。オレ達がフォローするから、一年以内にA級になれるよ。いや、ならせるよ。」


「ふーん。あなた達もわたしと変わらない年齢みたいだけど、その年でA級まで上り詰めた何て凄い才能があるって事でしょ?わたしなんてなんの才能もないもん。絶対に無理だわ。」


「才能?あなた才能あるじゃない?」


「へ?」


 オレは既に鑑定で調べていた。アーリンには幻影魔法のスキルがあった。幻影魔法って敵に幻とか見せて同士討ちとか誘う奴だろう。前世のRPGゲームの記憶で、精神攻撃を受けて混乱させられて、キャラが使い物にならなくされた事を覚えている。ゲームならキャラを入れ替えればいいが、現実ではそうはいかない。最悪、同士討ちで全滅も考えられる。最強の敵はオレ達自身なのである。幻影魔法の使い手は、ある意味最強かもしれない。その幻影魔法の使い手が目の前にいた。


「幻影魔法。」


 オレはぼそりとつぶやいた。


 アーリンの顔色がみるみるうちに変わる。


「なんでそれを。あなた何者なの?」


「いや。ただの冒険者だけど。」


「あなたの前では一度も見せていないわ。いや、暁のメンバーにすら。」


 暁のメンバーにすら見せていないってどういうことだ。これは何かあるな。


「なんで秘密にしているの?」


「それは・・・・・・」


 言い淀むアーリンを説得して聞き出したところ、幻影魔法は古代魔術の一つで、その使い手は、精神を操る魔法の特殊性から忌み嫌われ、昔から迫害を受けて、一般的には今ではなくなったとされる魔法で、アーリンも隠し続けていたと言う事だった。


「オレ達はそんな事で差別したりしないよ。むしろ、歓迎するけど。」


「あなたの欲しいのは、わたしじゃなくて。わたしの魔法でしょ?」


「いや。そんな事は・・・・・・・」


 本音を突かれて、オレが言いよどむと。


「どうやってわたしの事を調べたかわからないけど、調べたならわたしには年老いた祖母と二人暮らしだって知ってるでしょ。あなた達は旅の冒険者よね。わたしは祖母のためにもサークルアイを離れるわけにはいかないわ。」


 別に調べたわけじゃないけど、余計な事は言わない。鑑定の事はあくまでも秘密である。


「ごめん。確かにオレはアーリンさんの事情も考えずに勝手な事を言ってたよね。でも、アーリンさんのためになるって思ったのもあるし、何よりオレ達は最強になる必要があるから、誘ったんだ。」


 オレは自分の境遇を語った。スカイドラゴンの事も。


「ドラゴンに挑むって、あなた達は勇者様なの?わかったわ。わたしの師匠である祖母を紹介するから、魔法を習いなよ。」


「そんな。短期間で魔法が覚えられるわけが。」


「何を言ってるのよ。話を聞いてたらあなた達は、短期間で黒魔法も白魔法も極めてるんでしょ。幻影魔法も簡単でしょ。あなた達なら。じゃあ、さっそく、わたしの家に向かうよ。」


 オレ達は喫茶店を出るとアーリンの家に向った。サークルアイの町は港のそばに小高い丘があって、丘の上の方には金持ちの邸宅が並び、中心部には冒険者ギルドや商店が並び、港に近づくにつれてぼろい,いや庶民的な家が並んでいた。アーリンの家は港近くのおせじにも立派であるとは言い難い家であった。


「汚い家だけど、我慢してね。」


 アーリンはオレを家に導いてくれた。


「いや、そんな事は。」


「いいのよ。ぼろいのはわかってるから。でも冒険者でお金を貯めて、いつか、丘の上にわたしも家を建てるからね。」


 丘の上を見上げてアーリンが言った。丘の上には庶民を見下ろすように大きな邸宅がいくつも見えた。


「おばーちゃん。お客さん。」


「はいよ。」


 アーリンが声をかけると奥から老婆が出てきた。


「こちら、冒険者のアメリさん。」


「アメリです。初めまして。」


 アーリンに紹介されて、オレは名のった。


「おやおや、ずいぶんとかわいらしい冒険者さんだの。わたしはノアと言いますじゃ。よろしくお願いいたします。」


「おばーちゃん。かわいらしいって、アメリさんはA級冒険者様なのよ。」


 アーリンがノアをたしなめた。


「へー。そうなんですか。アーリンと年も変わらないだろうに、すごいですの。アーリンのお友達ですか?」


「いや。まあ、友達と言えば友達なんですけど。今日はノアさんに用があって来ました。」


「え!わしに?何の用ですかの?」


「オレに魔法を教えてください。」


「はて、初級魔法しかできないわしがA級冒険者様に教えれる魔法なんてないと思うがの。」


 ノアはとぼけた。


「幻影魔法です。」


 オレがど真ん中直球で言うと。


「アーリン!」


 ノアは顔色を変えてアーリンを怒鳴った。


「いえ。アーリンは悪くありません。オレには人や魔物を鑑定する能力があるんです。」


「ふーん。それでアーリンを鑑定して幻影魔法の事を知ったのかい?」


「はい。」


「それで、幻影魔法を習いたいと言うわけかい?」


「はい。本当はアーリンさんに仲間になってもらいたかったんですけど、断られましたので。」


「アーリン。なんで断ったんだい?」


 ノアはアーリンに聞いた。


「アメリさん達は旅の冒険者だよ。わたしはサークルアイの町を出たくないもん。それに、まだ見習みたいなもんなのに、いきなりA級冒険者のパーティじゃ、みんなの足を引っ張るだけじゃない。」


「アーリン。わたしの事を考えて言ってるなら、気にしなくていいんだよ。わたしは一人でも生きていけるからね。」


「ありがとう。おばーちゃん。でも、わたしはサークルアイの町が好きだから。」


「アーリンが仲間にならないから、自分で覚えるって事か。わたしの魔法もずいぶん軽く見られた物ね。」


 ノアがオレに向って言った。


「軽くは見てませんけど、幻影魔法が欲しいのは確かです。最低でも幻影魔法を防御できるようになりたいです。」


「幻影魔法て物が、わかってるのかい?人に幻を見せたりして操る術だよ。それを操る術師のわたし達は人々から恐れられ、疎まれ差別されてきたんだよ。それでも習いたいって言うのかい?」


「それでも習いたいです。」


 オレは強くなりたい理由を話した。


「スカイドラゴンか?ずいぶん凄い物を討伐する気なんじゃの。でも、わしの幻影魔術がドラゴンに効くとは思えんがの。」


「たとえスカイドラゴンに効かなくても、覚えたいです。なぜならスカイドラゴンと戦うまでは死んでも死に切れませんから。いくら、体を鍛えて凄い術を覚えても、心を操られて同士討ちさせられたらそれで終わりですからね。」


「うーん。幻影魔術の事をよくわかってるようじゃな。アメリさんの覚悟はわかった。じゃあ、どの程度の実力があるか見たいから、一つアーリンとしあってもらえんかの?」


「え?試合ですか?良いですけど。」


「おばあちゃん。ただ、試合が見たいだけでしょ?」


 オレがノアに答えるとアーリンが横やりをいれた。


「ばれた?でも、わたし達が磨いた技がどこまでA級冒険者様に通用するか見てみたいじゃないの。アーリンもそうじゃろ?」


「うーん。敵わないなー。アメリさん。回復魔法は使えますよね?」


 アーリンは独り言のようにノアに答えると、オレに聞いてきた。


「うん。使えるよ。じゃあ、素手対素手で魔法で戦うのはどう?これはオレが卒業した学校でやってた試合方式なんだ。剣を使うと致命傷を与えかねんからね。」


 オレは冒険者アカデミーの授業でやっていた試合方式を提案した。


「そうね。わたしもアメリさんに真っ二つにされるのは嫌だから、それが良いわ。この先に人目に付かない海岸があるわ。そこでやりましょう。」


 港をそれると人家もまばらになり、海岸線には岩場の磯が続いていたが、そこだけ砂浜になっていた。



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