第81話 騎士の詰め所
グレイ達暁と別れた後もオレ達は奥へ向かって歩いた。しばらく歩くと廊下の左右に部屋が並んでいた。まずは一番手前の左の部屋に入ってみた。部屋は兵士達の詰め所の跡らしく、朽ちた剣や鎧が散乱していた。
「この鎧は使えるかな?」
リオが立っていた鎧武者の像に触ろうとした時だった、『リビングアーマーLV30』の文字がオレの視界に現れた。ダンジョンに入ってからオレは、常時周りを鑑定していた。ただの鑑定だと視界が文字で埋まってしまうので、オレ達に敵意のある物限定であるが。オレのレベルがあがり、鑑定のレベルも上がっていたってわけだ。この鑑定の能力により、隠れた魔物や仕掛けられた罠を見抜けた。
「リオ!危ない!」
オレの叫びと同時だった。リビングアーマーが腰に差した剣を引き抜いてリオに切りかかった。リビングアーマーの剣をリオはしゃがんでかわした。そして起き上がるやリビングアーマーに体当たりをかました。リビングアーマーは派手に吹っ飛んだ。
「リオ。大丈夫?」
サオリが声をかける。
「うん。平気。平気。」
リオが剣を抜いて答えた。
リビングアーマーがゆっくりと起き上がった。
「鎧武者像の中に本物が隠れてたのね。」
セナも剣を抜いて言った。
「ああ。こいつもね。」
オレは目の前の鎧武者像を蹴り飛ばした。鎧武者像は派手に転んだ。
「ねえ。こいつらってやっぱり物理攻撃が効かないのかな?」
リオがオレに聞いてきた。
「ああ。基本鎧だからね。剣で切っても傷つくだけでしょ。金属に効くのは電気よ。サンダーで一発だけど、こいつらは元名のある騎士みたいよ。魔法で簡単にやっつけちゃもったいないでしょ。オレが右の鎧武者を相手にするわ。」
「じゃあ。当然左はわたしね。」
リオが左の鎧武者に切りかかった。リオの振り下ろした剣は鎧武者の盾でふさがれた。
「アメリの言うとおり、こいつ腕は確かみたいね。少しだけ本気を出すよ。」
リオは言うやいなや、鎧武者から距離をとった。
オレの方はと言うと、鎧武者と対峙してお互いに隙を伺っていた。
「見えない突きー!」
リオが縮地で一気に距離を詰めて突きを繰り出した。リオの突きは鎧武者の首に見事に決まり、鎧武者の首が吹っ飛んだ。鎧武者は力なく崩れ落ちた。
一方オレ達の方もリオの気合の掛け声を合図に切り合った。
「サンダー斬り!」
オレは剣にサンダーを流し続けた。剣が電気を帯び発光する。そして鎧武者の剣をそのサンダー剣で受けた。
カイーーン
剣と剣がぶつかり合う音が部屋に響き合った。オレは二手目を撃つことなく、剣を収めた。ゆっくりと鎧武者は倒れた。
再びリオの方であるが、勝ち誇ったリオが剣を収めると同時に、倒れていた首のない鎧武者が切りつけてきた。咄嗟にリオはかわした。
「危な!首を落としても生きてるなんて、なんて化け物。」
「リオ。魔法を流さないとこいつらは死なないよ。」
「ええ。そうみたいね。じゃあ、改めてサンダー突きー!」
リオはサンダーを撃つと同時に縮地で距離を詰めて突きを打った。さすがに今度は効いたようで首のない鎧武者は倒れた。
「こいつが!けっこうてこずらせてくれたね。」
リオが鎧武者の頭を蹴ろうとした。
「リオ!」「サンダー!」
オレの掛け声と同時にリオがサンダーを撃った。
「わたしが鎧武者像の頭にやられると思ったでしょ?わたしだってバカじゃないんだから、いっつもいつもやられるわけじゃないわ。こいつらが鎧魔物の群体であるって見抜いてたわよ。」
「さすがね。脳筋さん。」
サオリがへんな褒め方をした。それより、残った剣や鎧だ。オレは詳しく鑑定した。たいして期待はしていなかったが、驚くべき結果が出た。
「リオの倒した方はオリハルコンの鎧に剣よ。」
「え!それってすごいの?」
「うん。伝説級の装備よ。リオ、装着する?」
「うーん。こんな重い物着て歩けんし、第一蒸れて嫌だわ。それに臭そう。この剣だけはもらっとくわ。」
「うーん。そうだね。フットワーク命の冒険者にこんな重装備はいらんね。第一こんな兜をかぶったら、オレ達の大事な顔が見えなくなっちゃうしね。と、言う事でアイテムボックス行決定。」
オレはリオの取った剣以外の鎧達をアイテムボックスにしまった。ちなみにオレの倒した方はただの鉄の剣に鎧だった。
「それにしてもアメリの方はなんで剣を交えただけで倒せたの?」
セナがオレに聞いてきた。
「金属が電気を流しやすいのを前に言っただろ。剣を伝って鎧や兜、具足に電気が流れたって事ね。」
オレは得意になってセナに説明した。
「じゃあ、リオも最初っからサンダー剣で撃てば、ピンチが無かったんじゃないの?なんでリオに教えてあげないのよ。」
「いや。剣士としての矜持が・・・」
「何が矜持よ。アメリのボーナス査定―50ポイントね。」
「そんな・・・」
オレはがっくりとうなだれた。
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