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第76話 海賊逃亡

登場人物紹介


アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人


サオリ・・・異世界転移者、お調子者


リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1


セナ ・・・賢者、守銭奴


カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官


エイハブ・・船長、骸骨野郎、セクハラおやじ


 


 沖を見ると身代金と人質をまんまとせしめて逃げているであろう船が走っていた。やられた。おそらく船の中に船を漕ぐ水夫や人質の女の子達を潜ませていたんだろう。戦闘のどさくさに紛れて身代金の入った鞄を持って逃げたんだろう。そういえば鞄の中身を確認していた手下がいない。奴がボスか?この島には追いかけれる船も船を漕ぐ水夫もいない。何という頭の切れる奴だ。


「もうだめだぁ。サリー!」


 カラハドが膝をつき泣き崩れた。


 もう詰んだと思うだろう普通は。だが、まだまだオレは諦めていない。


「エイハブ、サオリ。オレと一緒に来て。セナとリオはこいつらを縛り上げて見張ってて。」


 オレはめげずにみんなに指示を出した。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 所変わって、海賊船の中、船の櫓を漕ぎながら手下の一人が話しかけた。


「ボス、うまくいきましたね。」


「ああ、うまくいった。手ごわい女騎士どもが出てきたときはもうだめだと思ったが、保険でお前らを船に潜ませておいて良かったぜ。こうして、金も人質も無事手に入ったからな。」


 自らも櫓を漕ぎながらボスが答えた。


「さすがボス。でも、奴らが追っかけてはきませんかね?」


「戦闘に夢中でそれどころじゃないだろう。実際に追っかけてくる気配もなくこうして沖まで逃げれたしな。それに奴らが気づいて追っかけようにも、船も櫓を漕ぐ水夫もいないってわけさ。それにな、戦った手下どもは全員オナガの町でスカウトした新入りだ。アジトの場所も知らないってわけさ。」


「さすがボス。頭いい。」


「ああ、これからは切った張っただけじゃなくて頭も使わないと生き残れないのさ、オレ達海賊も。がっははは。」


 一時間ばかり漕いだところで海賊たちのアジトの島が見えてきた。ボスは念のために,船を漕いでた船室から船上に出て周りの海を見渡したが後は付けられていなかった。


「ようし。後を付けてくる船もいないぜ。アジトの島までもう少しだ、お前ら一息入れるぞ。」


「「「「「おう!」」」」」


 その時だった。


「ファイアーボール!そして突きー!」


 ボスの男は油断していた所にファイアー突きをまともに顔面に受けてふっとんだ。船の外まで飛ばされなかったのはボスの運の良さか海に落ちて死ぬ事はなかったが意識は失った。


「ライトニングボール!」


 薄暗い船室から出ようとしていた手下の男達は突然現れた閃光で目をくらまされてしまった。それと同時になだれ込んだ二人の少女と男にタコ殴りにされて縛られてしまった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「おい。気が付いたな。お前が本当のボスだな。」


 ボスの男は気が付くと周りの縛られた手下を見て観念したのか口を開いた。


「ああ。そうだ。」


「じゃあ、あの島がアジトだな?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「まあ。いいわ。オナガの巡視船がすぐに確かめに来てくれると思うから。しゃべりたくなかったらしゃべらんでいいわ。それでこの子たちはサリーちゃん達に間違いないな?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「どうやら痛い目に合わんとしゃべれんみたいだな。」


 オレは簀巻きになったボスを甲板から海に蹴落とした。ボスは縛られていない足だけで器用に泳ぎ出した。


「さすが海賊のボスだな。泳ぎが達者だわ。でもこれでも涼しい顔で泳いでられるかな?」


 オレは指笛を思いっきり鳴らした。


 ボスの泳いでいた海面が突然盛り上がりとてつもない大きなものが海中から現れた。そしてその大きなものはボスを食おうと大きな口を開けて襲い掛かってきた。


「た、助けてくれ。なんでもしゃべるから。」


「最初からそう言えよ。船長助けてあげて。」


 エイハブが大声を出すと、ボスを襲おうとしていた白い大きな物は鼻先で器用にボスを突き上げた。ボスは波しぶきと一緒に甲板に飛ばされてきた。オレはボスを受け止めた。


「なんだあの化け物は?」


 息も絶え絶えにボスが聞いた。


「化け物じゃなくてシャチだけど。それより、サリーちゃん達に間違いないね。」


「ああ、そうだよ。間違いない。」


「嘘ついてたらシャチの餌にするからな。よし。じゃあ帰ろうか。」


 オレは船首にロープを結び付けるとそのロープの先に付いた大きな球を海に投げ入れた。その球を咥えると白神は泳ぎ出した。ロープが張ると船は悠然と加速し始めた。


「なるほどな。あの化け物に引っ張ってもらって付いてきたってわけだ。」


「ああ、おかげで全身ふやけちまったけどね。」


「なに。船に乗らずにシャチに引っ張られて泳いできたのか。だから船の陰が見えなかったのか。もう脱帽だぜ。だが、それじゃあ。どうやって、甲板に乗り込んだんだ?オレが甲板を見渡した時は誰もいなかったのに、降ってわいたように突然攻撃されたぜ。」


「ふん。それは言えないな。秘密だぜ。」


「秘密か。なんかすごい能力使ったってのはオレでもわかるぜ。まさに完敗だ。どうやらオレ達は相手にしてはいけない人達を敵に回してしまったみたいだな。」


「なにかっこつけてんのよ。アメリ。みんな私の能力のおかげじゃない。」


 サオリがオレとボスの間に割って入った。


「ともかくわたし達を出し抜くほど頭良いんだから、あんたら罪を償ったら頭を使って真面目に働きなさいよ。」


 サオリがお説教で締めた。


 漕ぐよりはるかに速い速度で船は進みゴブリン島に着いた。二人の娘は待ち構えていたカラハドとカムイに引き渡され、海賊たちはこれも待ち構えていた巡視船の保安官達に引き渡された。サオリが知らせに行ったらしい。こうしてカムイの依頼のクエストは達成された。


 翌日、冒険者ギルドや警察、海上保安隊などへ顔を出して報奨金を受け取ると、オレ達を待っていたのは大歓迎会の嵐だった。


 翌朝、まだ暗いうちからオレ達はひっそりと出航した。


「アメリ。また、目立っちゃったね。でも、いいの?逃げるように出航しちゃって。」


「いいのよ。リオ。ミヒの町の事を覚えてるでしょ。娯楽に飢えた町の人達にとって、オレ達は格好のおもちゃなんよ。また、追っかけ回されたいの?」


「そうだね。逃げるが勝ちだね。」


「よし、次はサークルアイの町に行くよ。」


「おう!」




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