第67話 クラーケン
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人
サオリ・・・異世界転移者、お調子者
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者、守銭奴
カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官
エイハブ・・船長、骸骨野郎、セクハラおやじ
オレ達から通行料を徴収していった船が前方に止まっているのが遠くに見えた。船の上には人が集まっていた。
「先程の船ですね。どうしたんでしょうかね?」
エイハブが聞いた。
「何か。トラブルみたいね。アメリどうする?」
今度はリオが聞いた。
「うーん。ちょっと待って。」
オレは念のために船の周りを鑑定してみた。海中にクラーケンLV100がいた。どうやら、クラーケンと戦っているみたいだった。
「あ。なんか、魔物と戦ってるみたいよ。」
「魔物?強いの?」
サオリがオレに聞いた。
「うん。強い。クラーケンLV100よ。さすがにスルーはできないわね。船長、船を寄せて。みんな、やるよ。準備して。」
「「「「おう!」」」」
みんなが答えた。
「クラーケンってタコの化け物の?」
船を操作しながらエイハブが聞いてきた。
「いや、タコと言うよりイカみたいよ。ほら、姿を現した。」
オレは前方の船を指さして言った。そこには海賊たちの船よりも大きなイカの化け物がその触手で絡みついていた。
「それで船長何か知ってんの?」
「知ってるも何も。海の男の間じゃ、シードラゴンの次に恐れられてる伝説の魔物でっせ。」
「へー、そんなに凄いの。じゃあ、魔物と話せる船長が説得して、海の中に帰ってもらうってのはどう?」
「無理です。奴は頭が悪くて食う事しか考えていないし、人間の事をただの餌としか思っていませんよ。」
「じゃあ、やっぱり、戦うしかないね。」
やがてオレ達の船が海賊達の船に追いついた。
海賊達はクラーケンと交戦中だった。いや、正確には船に絡みついたクラーケンの触手を切りつけているだけだった。
さて、どうする。海賊達がじゃまで電気系の魔法が撃てないな。まず、船からクラーケンを離そう。
「船長、船に横付けして。リオ、船にはしごを渡して。みんな乗り込むよ。」
オレは叫んでみんなに指示をした。
エイハブの操船はすばらしく、海賊の船にぴったりと横付けした。リオの渡したはしごに乗ってオレ達は海賊船に乗船した。
「船長。安全のために距離を取って。」
オレ達が乗船したのを確認したエイハブは船を離れさせた。
「海賊船のみなさん。義理はないけど、黙って素通りするのも、目覚めが悪いから助太刀するわ。」
オレは、先程オレ達に絡んできたリーダーらしき男を見つけ出して、言った。
「誰が海賊じゃ。これでもオレ達はオナガの町の巡視船の乗組み員じゃ。いや、そんな事より、お前ら逃げろ。クラーケンの魔手にやられるのはオレ達だけで、十分だ。」
クラーケンの触手を切りつけながら男が答えた。
「まあ、オレ達はこう見えてA級冒険者なんですよ。襲われてる人がいたら、たとえ相手が龍でも助けなければならないのが、オレ達A級冒険者の務めなんですよ。オレ達だって関わりたくないけど、しかたないんすよ。」
「そ、そうなのか。じゃあ、ありがたく助太刀を受けるわ。でも、気を付けろよ。クラーケンはいくらA級冒険者でも、戦って簡単に勝てる相手じゃないぜ。」
「わかりました。敵わなかったら逃げるから、安心して。」
「おう。頼む。」
海賊船?のリーダーの了承を受けたことでオレ達も戦いに参加した。
「サンダー系の魔法は自分たちが感電の可能性があるから駄目よ。使うなら他の魔法よ。」
オレは叫んで指示を飛ばした。
「ファイガボール!そして突きー!」
オレの指示に呼応するようにリオがファイガ突きの必殺わざで触手を攻め立てた。リオのファイガ突きを皮切りにオレ達は触手を攻め続けた。
上位魔法プラス剣撃のオレ達の必殺技でもクラーケンの太い触手を切ることはかなわなかったが、船を掴んだ力を緩めさせる事には成功したようだった。クラーケンは船を掴んだ触手を離して、海上にその大きな姿を現した。
「みんな!今よ!サンダガの連発で仕留めるよ!」
オレは叫んでみんなに指示を飛ばすとサンダガの呪文を唱え始めた。
「サンダガビーム!」
サオリのサンダガビームがクラーケンに炸裂した。それを皮切りに。
「「サンダガビーム!」」
リオとセナのサンダガビームも同時に炸裂した。
三人のサンダガビームを受けたクラーケンは海の中に消えた。
「やったの?」
リオが聞いてきた。
「いや、そんなに効いてはいないみたい。怒らしただけみたいね。く、来るよ!」
再び海上にクラーケンは姿を現した。
ブシュー!
姿を現したクラーケンはいきなり墨を吐いて、また海に潜った。
飛び道具があるとは思ってなく油断していたオレ達は全身に墨を受けてしまった。
「うわー!なにこれ。毒?」
全身を墨まみれで真っ黒にしたリオが聞いた。
「安心して、毒じゃないわ。墨よ。ただの目くらましよ。でも、あったまにきたわね。絶対に許さないから。」
オレは答えるなり、精神を集中した。
「アメリ。もしかして、あれをやる気ね。」
静かに目を閉じているオレを見たリオが言った。
*******************************
ブックマーク付けてくださった方、ありがとうございます。本当にうれしいです。( ;∀;)




