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第64話 料理対決

登場人物紹介


アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人


サオリ・・・異世界転移者、お調子者


リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1


セナ ・・・賢者、守銭奴


カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官


エイハブ・・船長、骸骨野郎、セクハラおやじ

 


「さあ、ついにこの日がやってきました。今日は美少女戦隊の料理長を決める戦いの日です。

 わたし達美少女戦隊のシェフは長らく、セシルの町の名店「山猫亭」の看板娘アメリが努めて参りました。アメリの料理はさすが名店「山猫亭」の流れを汲む物、わたし達の舌を日々うならせていました。

 ところが、そのアメリの料理にケチをつける者が現れました。曰く、わしの海賊料理の方が美味い。わしなら、自分の料理で舌の肥えた王侯貴族までうならせられる。美味しい料理を語るのはわしの料理を食ってからにしろ。お前ら味音痴に本当の料理と言う物を教えてやる。


 船長のこの挑発に大人しいアメリもさすがに切れました。じゃあ、どっちが美味しい料理を作るか、料理で勝負しようじゃないか。食材は船長の得意な魚介を使って、白黒をつけよう。審判は美食で名高いリオ様を始めとした美少女戦隊のみなさん。そしてその師匠のメアリー様に公平に決めてもらおうじゃないか。


 こうして、決戦の日を迎えたんですが、どうですか?解説のサオリさん。」


「誰が、解説じゃ。リオ、あんたなんで、そんな司会者みたいな事やってんのよ?」


「いや、アメリがもりあがるから、やってくれって、この紙をくれたの。」


 そこにはアメリの書いたシナリオらしき物があった。ざっと読んだサオリはやれやれと手を広げた。


「しかたない。乗ってやるか。じゃあ、わたしが解説者ね。

 そうですね。魚介が食材となると海の男の船長にアドバンテージがありますね。なんせカニやタコは自分の配下ですからね。扱いにもたけてますよ。」


「じゃあ、船長が優勢だとおっしゃるんですね。サオリさんは。」


「ええ。今のところは。しかし、アメリには異世界料理というわたし達の度肝を抜く切り札がありますからね。勝負の行方はまだわからないですよ。」


「あ、両者、大鍋を取り出しました。これは両者鍋料理を作ると見て間違いないですかね?解説のサオリさん。」


「ええ。見たまんまですから(笑)

 ただ、同じ海鮮鍋だったら、食材の扱いに長けた船長に利がありますね。ここはアメリの工夫に期待したいところですね。」


「あ、アメリ陣営ですけど、何か謎の液体を瓶から鍋に注いでますね。何でしょうか?」


「さあ。こっからじゃわかりませんよ。」


「それもそうですね(笑)

 あ、なにか白い野菜をぶつ切りにして入れた。白くて丸い物も。」


「ただの大根と卵ですね(笑)。」


「あ、船長陣営なんですけど、オリーブオイルですか。鍋に油をひきましたね。あ、この野菜は知ってます。涙が出るやつ。」


「玉ねぎですね。細かく切ってハーブと炒めるみたいですね。」


「あ、そこに下ごしらえしておいた魚やエビ、貝も入れてますね。野菜はトマトにジャガイモですか。あ、なんか液体を入れました。」


「おそらくワインでしょうね。ニンニクや塩も入れてますね。これから煮込むんでしょう。これは期待が持てますね。」


「と言う事は、美味しいって事ですか?サオリさん。」


「美味しいに決まってるじゃないですか。リオさん。」


「これは完成が楽しみですね。一方のアメリ陣営、テーブルの上の皿に並べてある物で魚介らしき物は小タコしかありませんね。あとは謎の丸い物体。茶色いのや白いのや。」


「あ、あれは。」


 それから、しばらくして。


「できましたよ。ブイヤベース海賊流です。冷めないうちにどうぞ。」


 エイハブが一人一人の皿に盛って出した。


 今日はセシルの町からメアリー師匠も招いていた。


「なにこれ。美味しいわ。塩だけのシンプルな味付けだけど、そのおかげで素材の旨味が自然に出てるわ。魚もエビも貝も新鮮で美味しい。あんた達が来なくなって、新鮮な魚介に飢えていたからね。これは、ごちそうだわ。リオ、エール持ってきて。」


 メアリー師匠がリオにエールを要求した。


「魚介も美味しいですけど、わたしはこのスープが好きですね。魚介の旨味が溶け出した。」


 エールをメアリー師匠のコップに注ぎながらリオは言った。


「うん。魚介だけでなく、ジャガイモとトマトの旨味も溶け出してますよね。」


 サオリも大絶賛であった。


 料理を作っているアメリとエイハブ以外が全員、ほっこりとエイハブの料理を楽しんでいた。


 しばらくして。


「できました。オレのも熱々ですので、火傷しないように、ふーふーして食べてください。」


 アメリがどんぶりのような器に料理を一つ一つ盛りながら言った。


「お、これはまた、見たこともない料理だね。まず、卵から食べるか。あ、熱、あっちー!けど、味が染みてて美味しい。」


 エールを飲みながらメアリー師匠が言った。


「師匠。味が染みてるって言ったら、この大根ですよ。熱いけど、ジューシーで美味しいわ。」


 大根をふーふーしながらリオが言った。


「どうやら、アメリお得意の異世界料理みたいね。美味しいわー。」


 セナが汁を飲みながら言った。


「・・・・・・・・・・・・」


 なぜか、サオリは終始無言であった。


「両陣営、偶然にも同じく鍋を出して来ました。船長の素材の味を生かした鍋か、あるいはアメリお得意の異世界鍋か。勝つのはどっちだ。

 まずは、今日のゲスト。大酒のみにして料理評論家のメアリー師匠にお伺いしましょうか。師匠、どっちの料理が美味しかったですか?」


 リオがまた、仕切ってメアリー師匠に聞いた。


「誰が大酒のみじゃ。うーん。難しいわね。どっちも美味しかったけど、魚介の素材を生かすって点で船長が抜きんでてたと思うの。タコしか使ってない、アメリに対して、船長は魚、エビ、貝、みんなうまく使ってるわ。わたしは船長。」


「おーっと、ここで、船長一歩リードだ。じゃあ、次はセナさん、どうですか?」


「うーん。わたしもどっちも美味しいと思うけど、師匠の言う通り魚介をちゃんと使っているって点でやっぱり船長かな。」


「なんと船長がここにきて2ポイント連取だ。このまま、船長の逃げ切りか?サオリさんはどうですか?サオリ?どうしたの?泣いて?」


「こんな美味しい物をまた食べられるなんて。船長も食べてみて。」


 サオリがアメリの鍋をエイハブに食べさせた。


 無言でがっつくエイハブ。


「どうしたの?船長まで泣き出して。」


 リオが心配してエイハブに聞いた。


「わしの負けですじゃ。メアリー師匠がアメリさんの鍋は魚介をあまり使ってないとおっしゃったけど、この丸くて白いのも茶色いのもみんな魚です。」


「ええ。そうなの?」


 リオがビックリして聞いた。


「はい。白いのは魚のすり身、茶色いのはそれを油で揚げたやつです。出汁が染みて美味しい。わしの料理は素材の旨味がスープに溶け出した料理、アメリさんのはスープの旨味が素材に染みこんだ料理。どっちが美味いかなんて、言うまでもないでしょう。こんな美味いおでんがまた食えるなんて。」


 言うなり、エイハブはまた泣き出した。


「ふふーん。料理で一番大事なのは御もてなしの心よ。今日はオレと船長の料理対決の日でもあるけど、メアリー師匠を呼んでの船長の歓迎会でもあるのよ。船長の一番喜ぶ料理を作るに決まってるじゃない。サオリに聞いておでんが船長の故郷の名物だと知ってたのよ。120年前もそうなのか自信はなかったけど。

 魚介類をワインで煮ただけの料理にオレの料理が負けるわけないわ。まず、鍋に張った汁は、昨日の晩からコブと魚の干したやつで丁寧に取った出汁よ。食材にしたって、白身魚をすりおろした物を湯通しした物とそれを油で揚げた物よ。煮ただけの魚と違って、手間がかけてあるのよ。あと、ただの塩で味付けしたスープと違って、この魚醤でちゃんと味を付けたんだから。」


 アメリがどや顔で解説を始めた。


「うーん。言われてみると、たしかにお魚の味がするわね。この白いボールもこの茶色いボールも。アメリの工夫と努力は確かに凄いと思うわ。でも、船長も調味料もろくにない状態でよく頑張ったと思うの。だから、この勝負、ひきわけね。」


 リオがまとめて言った。


「リオ!船長本人が負けを認めてるのに、ひきわけだって言うの、あんたは。じゃあ、あんただけ、おかわりなしね。」


「うそ。うそ。アメリさんの勝ち。」


 こうして、アメリ達美少女戦隊はつかの間の休日を楽しんでいた。食卓には笑い声が絶えなかった。




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