第61話 鬼(オーガ)退治
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人
サオリ・・・異世界転移者、お調子者
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者、守銭奴
カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官
エイハブ・・船長、骸骨野郎、セクハラおやじ
「うわー!うわー!」
エイハブの悲鳴とともにオレ達はセシルの町の北のダンジョンの最深部に現れた。
「船長。静かに。もう。少しは慣れてよ。あと、もういいかげん手を離してよ。」
エイハブの手を振りほどいてサオリが言った。なんかこのくだりもパターン化してきたな、エイハブが怖い事を良い事にサオリの手を離さないでサオリが怒るパターン。
「そんな、冷たい事を言わないで、おじさんをやさしく導いてよ。サオリさん。おじさん。まじで怖いんだから。」
「わたしはあんたが怖いわよ。」
「あ、酷い。セクハラだ。魔物差別だ。」
「船長どこでセクハラなんて言葉を覚えたの。セクハラをしているのはあんた。わたしが被害者。」
二人がぎゃーぎゃーと言い合っていた。さすがにちょっとうるさいか。
「二人でいちゃついている所悪いけど、静かにしてくれる。オーガに気づかれるから。」
オレは二人に注意した。
「「はい。」」
返事をした後、サオリは無言でエイハブをけった。
「じゃあ、打合せ通り今日は魔法無しで行くよ。それで、相手が3匹ならこちらも3人で当たるよ。残った人は、フォローにまわって、もしもの時に備えて。それで、最初は船長、セナ、リオで行こう。もし、4匹目が現れたらオレが増援に出るわ。サオリはもしもの時に備えて後ろで待機していて。何か質問のある人?」
「わし。いきなりですか?」
エイハブが手を上げて言った。
「あんた。死なないから。大丈夫じゃない。それに船長の腕も見てみたいし。まあ、オレとサオリがフォローするから大丈夫よ。」
「死なないと言っても、肉体を生身に戻したこの姿の時はダメージを普通に受けるんですよ。痛いのは変らないんですよ。」
「じゃあ、幽霊バージョンに戻したら?」
「そうすると、攻撃がファントムブレスしか無くて、下手したら周りのみなさんも巻き込みかねませんよ。」
「「「「使えねえー!」」」」
「やっぱりただの足手まといじゃないの。ここに置いていこう。」
サオリが薄情な事を言った。
「サオリさーん。同郷のよしみじゃないですか。もっとやさしくしてくださいよ。」
サオリの手を掴んでエイハブが懇願した。
「離せよ。セクハラ親父。」
サオリがエイハブを蹴った。
「じゃあ、船長には先頭でじゃんじゃん死んでもらおうか。セナとリオはケガしないように注意してね。決して無理したらあかんよ。」
「わしの話聞いてた?いくら不死身でも痛いのは変らないんですよ。」
「あんた、自分で志願したくせに、あんまり、ごちゃごちゃ言ってると、オレが今殺すよ。」
「は、はい。」
船長が震えて言った。
北のダンジョンの最深部は洞窟状になっていた。洞窟をしばらく進むとオーガが三匹現れた。オーガは2メートルをゆうに超える巨体の亜人で、手には冒険者から奪った武器を握っていた。
「あれが鬼?わしの知ってる鬼と違う。わしの知ってるのはもっと小っちゃくて・・・」
エイハブはたぶんコボルトの事を言ってるのだろうか。小鬼は上の階にいた。小鬼と違い大鬼はパワーもスピードも段違いだ。セシルの町のダンジョンでボスを除いて一番の危険魔物だ。オレはビビるエイハブを前にけしかけた。
「ビビるのもわかるけど、頑張って船長。セナとリオも気をつけてね。」
「「「おう!」」」
3人は返事とともに走り出した。
先頭のオーガが振りかぶった長剣を振り下ろした。エイハブがひらりとかわした。勢い余ったオーガの剣が地面に突き刺さった。無防備になったオーガの首をエイハブの剣が払った。二匹目のオーガの横なぎの剣をエイハブは今度は受け流した。オーガが力任せにエイハブを切り伏せようとするが、エイハブは時にはかわし、時には受け流して、オーガの攻撃を受け続けた。焦ったオーガが一匹目と同じく大振りで振り下ろしてきたのを、かわして袈裟斬りにした。
3匹目のオーガはセナが格闘中であった。オーガは力任せに大剣をぶんぶん振り回してくるが、セナも力では負けていない。なんどかのつばぜり合いの後、小柄なセナがなんと2メートルを超えるオーガを突き飛ばした。しりもちをついたオーガにセナの面が決まった。
実に対照的な戦いであった、力を技でねじ伏せたエイハブに対して力をそれ以上の力でねじ伏せたセナ。
「船長やるじゃない。技があれば、レベル差なんて簡単にうめられるって事を学ばせてもらったわ。」
オレはエイハブを絶賛した。
「わたしの剣は?」
セナが聞いてきた。
「相変わらずの力任せの剣ね。船長とは逆でレベル差でごり押ししたって感じ。でも、不器用なセナらしくって、これはこれでオレは好きだな。」
「ま、まあ。わたしには技らしい技という物がないからね。力でねじ伏せるしかないよ。」
「セナ流脳筋剣ね。わたしもそういうの好きよ。でも、船長が二匹も退治したからわたしの出番がなかったじゃんか。アメリ。次もわたしを出してよ。」
リオが言った。リオもエイハブの華麗な剣技に刺激されてやる気満々であった。それで、次はリオが先頭でオレ、サオリが続いて出ることになった。
しばらく歩くとまた、三匹のオーガが現れた。
「グガー!グオー!ギョエー!」
三匹のオーガが吠えた。
「船長。何て言ってるの?」
オレは聞いた。
「殺す。犯す。××××です。」
聞かねば良かった。
咆哮とともに、三匹のオーガが駆けだした。先頭のオーガとリオが剣を交えた。
キン!
なんとリオの振り下ろした海賊の斧はオーガの振り下ろした剣ごとオーガの体を真っ二つにした。
オレはリオの見事な脳筋技に見とれることなく、自分に向かって来るオーガに対峙した。オーガは身長差を生かして上段から切りつけてきた。オレは難なくかわすと、かわしざまに海賊の剣を抜いた。オレの海賊の剣による居合斬りはオーガの胴体を真っ二つに切り裂いた。
残りの三匹目のオーガはサオリが槍で串刺しにしていた。
「いやあ。見事。特にリオさんは、敵に回したくないですの。」
拍手をしながらエイハブが言った。この間まで敵だったくせに良く言うよ。でも、リオが凄いのは確かね。褒めとかんと。
「さすが、元祖脳筋娘ね。技もへったくれもあったもんじゃないわね。本当に味方で良かったわ。」
「それって褒めてんの?けなしてんの?」
「もちろん、褒めてるに決まってるじゃない。」
オレは笑いながら言った。リオが凄すぎるのは確かだがオレ達にとっても、オーガは弱すぎた。
「この間まで強敵だったオーガも今じゃただの雑魚になっちゃったね。魔法を使わなくても物足りないね。船長もオーガ相手じゃ不覚を取る事はなさそうだし、このダンジョンに長居は無用ね。ボスを倒してさっさと帰りましょう。」
オレはみんなに言った。
「うん。わたしもそう思う。一撃で決まるんじゃ技の磨きようもないわ。」
リオも自信満々で賛成した。
そういうわけでオレ達は無傷でボス部屋の前まで到着できた。魔法も一度も使ってなかった。
****************************************
ブックマーク、ポイント評価をお願いします。




