第60話 料理長
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人
サオリ・・・異世界転移者、お調子者
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者、守銭奴
カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官
エイハブ・・船長、骸骨野郎、セクハラおやじ
翌朝、オレは良い匂いで目を覚ました。台所に行くと、エイハブが料理をしていた。
「おはよう。船長。早いのね。」
「おはようございます。アメリさん。わしのできる事はこれくらいのもんですから。わしを料理係に命じてください。」
「いいけど。あんた、明治の男でしょ。男子厨房に入らざるとか言ってるんじゃないの?」
「海賊は男しかいませんから、そんな事を言ってられませんよ。料理は得意なんですよ。料理勝負は負けませんよ。」
「わかった。料理係に命ずるよ。欲しい食材があったら言ってね。魚でも肉でもたいていはオレのアイテムボックスに入ってるから。」
「ありがとうございます。じゃあ、野菜をいただけますか?魚介はダンジョンから持ってきた物を入れたんですけど、野菜があるともっとうまくなると思うんで。」
「うん。スープに入れるのはこの野菜が良いと思うよ。」
オレはアイテムボックスからジャガイモもどきを出してエイハブに渡した。
「ありがとうございます。これで、美味しいスープができます。」
「じゃあ、暇になったオレはそうじでもするか。」
オレが掃除を始めると、みんなが順番に起きてきた。
「あれ?今日はアメリが料理しないの?」
そうじをしているオレを見てリオが聞いた。
「うん。今日から船長が料理長に就任したんだ。オレはお役御免。」
「え。そうなの。わたし。アメリの異世界料理が好きだったのに。」
「あー。大丈夫。オレもたまに作るから。」
オレ達は朝のお仕事を済ますと、食卓に着いた。
「今日の朝ごはんは、具だくさんの魚介スープです。アメリさんにもらったイモも入っていますから、美味しいと思います。」
一皿ずつ、皿によそいながら、エイハブが言った。
オレは大皿に焼き立てのパンをアイテムボックスから出して並べた。
オレ達はいただきますをしてから食べた。塩で味付けをしたシンプルな味だったが、ジャガイモもどきがこくと甘味を出していて旨かった。もちろん、中に入っている魚介も良い味を出していた。
「やっぱり。うまーい。船長グッドジョブ。アメリとの勝負がますます楽しみだわ。」
リオががつがつ食いながら言った。
「あー。知ってる人もいると思うけど、今日から船長が料理長になったから、オレは平に格下げね。」
「え?もう負けを認めたの?」
リオが聞いた。
「ちがーう。暇な船長に仕事を与えただけよ。オレはお手伝いよ。それで、今日の予定だけど、予定通りセシルの北のダンジョンに行ってレベル上げよ。何か質問のある人?」
「はい。アメリはもう作らんの?」
サオリが聞いた。
「リオにも言ったけど、オレも腕が落ちないようにたまには作るよ。」
「うん。アメリの日本の料理はわたしの最大の楽しみだからね。良かった。料理勝負も楽しみにしているよ。」
「ありがとう。そんなんでエイハブが料理長になったけど、オレも手伝うからオレのファンの人は安心してね。」
「わかったわ。それで、肝心の仕事の話なんだけど、今日はどういう作戦で行くの?」
セナが聞いた。
おっと、家事よりもこっちが大事だよね。
「ごめん。ごめん。一番大事な話が後回しになってたよね。今日は北のダンジョンの最深部に潜って、鬼退治をしよう。レベルの上がったオレ達にとって、オーガは今更なんだけどね。そうだ、魔法禁止にして、剣や槍だけで倒すのはどう?もちろん、ラスボスは全力で倒すけど。」
オレはみんなを見渡して言った。
「いいね。今更わたしたちはレベルが簡単に上がらないと思うから、レベル以外の技を磨くのは良いと思うよ。技を磨けばレベルが上の相手でも倒せるからね。課題を持ってダンジョンに挑むのは良い事だわ。」
サオリが言った。実際、リオやサオリはレベルではメアリー師匠を圧倒していたが、剣技や体術の技でレベル差をひっくり返されて負ける事が多かった。
「わたしも賛成。剣はわたしの本職だからね。もっともっと精進しなくっちゃ。」
リオも賛成してくれた。
「セナは?」
オレはセナのほうを向いて聞いた。
「もう。脳筋ばっかりなんだから。みんなが賛成してるのに、わたし一人が反対できんでしょ。わかったわよ。わたしの剣技の冴えを見せてやるわ。」
「じゃあ、決まりね。今日は魔法はなしね。と言っても、緊急時と回復魔法は当然ありだけど。他に何かある人?」
オレはみんなを見渡して言った。
「あのう。剣で戦うなら、わしにも戦わしてくれんかの?」
エイハブがおずおずと、手をあげて言った。
「え!オーガはレベル40よ。A級冒険者と互角なのよ。レベル20のあんたなんてイチコロよ。やめときな。」
リオがエイハブを睨みつけて言った。
「いや。エイハブ船長は元々死んでるから、今更死ぬ心配しなくってもいいし。船長がそう言うからには剣に自信あるんでしょ。面白いじゃない。戦ってもらおう。」
オレはアイテムボックスから海賊の剣を取り出してエイハブに渡した。
食事が終わって、オレとエイハブが食器を洗って片付けている間、リオとセナが打ち込み稽古を行っていた。サオリは槍をぶんぶん素振りしていた。オレ達はメアリー師匠よりもレベルが上がり、ちょっと慢心していた。レベルに頼らない強さも身に着けないといけないと思って言ったオレの提案だったが、リオ達に火を着ける事に成功したようだ。あと、エイハブの戦いぶりも楽しみだ。
食事の片付けも終わり、お茶を飲んで一息入れたあと、オレ達はサオリのワープで北のダンジョン最深部へと飛んだ。
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