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第57話 白神親子

登場人物紹介


アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人


サオリ・・・異世界転移者、お調子者


リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1


セナ ・・・賢者、守銭奴


カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官


エイハブ・・船長、骸骨野郎、セクハラおやじ

「うわー!うわー!」


 エイハブの悲鳴とともにオレ達はミヒのダンジョンの前に現れた。


「船長。うるさい。あと、いいかげん手を放して。」


 エイハブの手を振りほどいてサオリが言った。


「すみません。わし。ビックリしてしまって。」


 サオリに謝るエイハブ。


「まあ、まあ。サオリ。誰だってビックリするって。これがサオリのギフトであるワープよ。船長。一回行った事のある場所ならどこでも行けるの。」


 オレはサオリとエイハブを見て言った。


 そして、冒険者ギルド長のカイエンが付けたドアを開けてダンジョンの中に入った。オレ達を発見したビッグクラブが集まってきたが、エイハブを見つけるとすぐに戻って行った。ダンジョンのラスボスの威光はまだ健在であった。ダンジョンのラスボスの威光?


「ねえ。船長。あんたはこのダンジョンの主なんでしょ。主のあんたが抜けても大丈夫なの?」


 オレはエイハブに尋ねた。


「ええ。まあそうなんですけど。わしにもしもの事があったら、タコ(キングオクトパス)が代わりを務めるように仕込んでありますから大丈夫ですよ。その代わり、ボスを倒しても船は手に入りませんけどね。」


 タコはバカだと言ってたはずだけど、ちゃんと仕込めたのかしら。まあ、細かい事は触れずに置こうと思った。


 ボスのマッドクラブまで通路を確保して道を譲ってくれた。たしかに、ここでは戦闘をする気がおきんわな。襲ってこないものを、いくら魔物と言っても、一方的になぶる趣味はないわ。


 マッドクラブの開けてくれた入り口を通って二階層目に出た。通路の横には広い池が広がっていた。


 さて、まずは話の通じる相手の白神から何とかしようか。エイハブの話が本当なら、エイハブが白神を説得してくれるはずだし。


「船長。白神と親友なんでしょ。今、呼べる?」


 オレはエイハブに尋ねた。


「ええ。簡単に呼べますよ。」


「じゃあ、今呼んで。」


「はい。わかりました。」


 返事をするやエイハブが指笛を吹いた。ダンジョンの中にその大音量が響き渡った。しばらくすると、波一つなかった穏やかな水面を突然突き破って、一匹の大きな白いシャチが飛び出した。その巨体にオレ達の間に緊張が走ったが白神は何をするでもなく、ただ池に浮いているだけであった。


「ねえ。本当に何もしてこないの?」


 オレは恐る恐るエイハブに尋ねた。


「ええ。おとなしいもんですよ。基本的に自分に害を与える者以外は襲いませんから。」


 エイハブが白神に魚をやりながら答えた。


「わたし達、襲われたんだけど。」


 セナがオレの陰に隠れて聞いた。


「え!そんなばかな。ちょっと、本人に聞いてみますわ。」


 そう言った後、エイハブは白神に何か話しかけていた。白神はキュイー、キュイーと甲高い鳴き声を発した。


「タコ(マッドオクトパス)と間違えたと言って謝ってますな。人間がここに来るのは100年ぶりなので人間と思わなかったって。」


「やっぱりそうなのね。オレ達も触っていいかな。」


 オレは興奮して聞いた。


「ええ。大丈夫ですよ。」


「サオリ。良いって。触らしてもらおう。」


「うん。」


 オレとサオリは白神をおそるおそる触った。


「キャー。キャー。」


 サオリが歓声をあげた。まさに水族館のイルカショーのノリであった。エイハブに頼んでジャンプもしてもらった。ダンジョンの天井も突き破らんばかりの大ジャンプは見事であった。その後の水しぶきで全員水の中に引き込まれそうになったが。全身ずぶ濡れになった事で、リオとセナも警戒が解け、白神を触るようになった。オレもアイテムボックスから魚を出して白神にやった。


 遊びはこれくらいにして、さて、本題である。


「ダンジョンに入らないように頼んでもらえる?」


 オレはエイハブに白神に伝えるように言った。


「わかった、と言ってます。子供の乳のために簡単に餌が食えるここに来ていたが、もう来ないと。」


 そう、エイハブが答えると、小さな(と言っても、オレ達より大きいが)シャチが顔を出した。


「ねえ。かわいそうじゃない。人間を襲わないと約束できるなら、ここで狩ぐらいさせてあげようよ。」


 子シャチの頭をなぜながら、リオが言った。


「うーん。でも、ギルド長のあの口ぶりからして、白神を目の敵にしているのは間違いないわね。かわいそうだけど、やっぱり、出て行ってもらおう。その代わり、わたし達が魚を捕ってあげるのはどう?」


「えー!漁師でないわたしたちがどうやって魚を捕るの?」


「リオ。あんた忘れたの。一年前、あんたが魔法で魚を一網打尽にしたのを。」


「ああ。そうだったね。思い出したよ。」


 オレ達は白神をダンジョンから出て行ってもらうかわりに、餌を与えると伝えた。しかし、餌は自分で捕るものだと、白神は固辞した。餌をもらっているくせに。簡単に餌が手に入ると、今、乳離れしようとしているこの子が餌を捕れなくなってしまうって事だった。なるほどねえ。オレ達の考えが浅はかだった。オレは白神に謝ると、友達になってほしいと伝えた。すると、白神はこの子の友達になってくれと子シャチを推した。もちろんだと伝えると白神親子は嬉しそうに大ジャンプを繰り返した後、池の底に消えて行った。


「白神の子、かわいかったね。」


 サオリが言った。


「オレ達あの子と友達になれたんだね。良い名前を付けてあげないと。」


「アメリの脳筋。えらい目にあったのもう忘れたの?」


 サオリがオレをたしなめて言った。


「あ。そうか。」


「本当に脳筋なんだから(笑)」


 サオリ達は笑った。脳筋野郎のリオまで手を叩いて笑っていた。くそ。


「さて、次はサメ(マッドシャーク)ね。話が通じないんだったよね?」


 気を取り直して、オレはエイハブに聞いた。


「ええ。奴らは食う本能だけで生きてるようなもんですから。」


「じゃあ。退治するしかないよね。」


 オレはアイテムボックスから肉の塊を取り出した。


「アメリ。それは?」


 リオがその血が滴る肉の塊を目をしかめて見て言った。


「これはマッドボアの臓物よ。いつか食べようと思って、取っておいたんだ。」


「え!臓物何て食べられるの?」


「うん。見た目は悪いけど、美味しいよ。ねえ。サオリ。」


 どうもこの世界の人達はホルモンは食べないようなので、元日本人のサオリに同意を求めた。


「うん。ハツとかもつとかうまいよね。」


「で、その臓物をどうするの?」


「こうするのさ!」


 オレは木の容器から臓物を池にぶちまけた。血をたっぷりと含んだ腸やら胃やらがプカプカと浮いていた。


「うえー。気持ち悪い。アメリ。何てことするのよ。」


「まあまあ。リオ。黙って見てて。」


 しばらくすると、池の底から反応があった。


「アメリ!」


 リオが叫んだ。


「うん。来るよ。みんな、水辺から離れて!サンダガの呪文を唱えて!」




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読んでくださって、ありがとうございます。ブックマーク入れてくださった方ありがとうございます。

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