第52話 海賊船
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2、悪徳商人
サオリ・・・異世界転移者、お調子者
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者、守銭奴
カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官
どんなピンチでも逆転の目は必ずある。オレが日本で黒野時男だった時に読んだ漫画に描いてあった名言だ。考えろ。頭をまわせ。オレは今まで、創意と工夫で格上の相手に何度も勝って来たじゃないか。オレ達は瀕死の重傷を負っているのにリオはなんで平気なんだ。オレ達とリオの違いはなんだ。は!海賊の鎧を着ているからか。じゃあ、逆に海賊の武器はファントムパイレーツに効くんじゃないか。宝箱で取った武器でボスに攻撃するのは、アクションRPGの基本じゃないか。とにかく試してみよう。
オレはアイテムボックスから海賊のモリを取り出すと、ファントムパイレーツに投げつけた。
「ぎゃあー!」
ファントムパイレーツが悲鳴をあげた。モリはすり抜けることなくファントムパイレーツに刺さったままだった。ファントムパイレーツはモリの攻撃がよほど効いているのか、ブレス攻撃をしてこない。
チャンス。オレはアイテムボックスからすばやく海賊の斧、海賊の槍、剣を取り出した。海賊の斧をリオに渡し、海賊の槍をサオリに渡し、オレは海賊の剣を装備した。
「そろそろ、こちらのターンよ。消える魔突きー!」
オレは縮地で距離を詰めるとファントムパイレーツに突きを放った。
「必殺三点突きー!」
サオリの三連撃も決まった。
「とどめは、兜割―!」
リオだけはかっこいい技名が思いつかなったみたいだった。
ともかく、オレ達はラスボスのファントムパイレーツに全力で打撃攻撃をした。
「ぎゃあああああ!」
リオの地味な技がとどめとなったのか、断末魔の悲鳴をあげると、ファントムパイレーツは煙のようにかき消えた。
「やった。後はキングオクトパスだけよ。みんな油断しないで、サンダガビームよ!」
オレ達のサンダガビームの連発でキングオクトパスは倒れた。
「やったね。リオ!」
オレはリオと抱き合った。サオリとセナも泣きながら抱き合っていた。
危なかった。本当に危なかった。今までで一番の強敵だった。まじで死ぬかと思った。しかし、強敵を低いレベルで撃破したおかげでオレ達は全員レベルが3ずつ上がった。
「見事だ!さすがはわしの見込んだ冒険者だ。お前たちにはこれを授けよう。」
突然声が響いた。オレ達は武器を握りなおして身構えた。すると、後ろの壁に大穴が現れた。大穴の向こうには一隻の帆船が泊まっていた。
「いらね。」
オレは一瞥すると引き返そうとした。
「な、なんだと!なんでいらないんだ!」
声が慌てていた。
「ああ、オレ達誰も船を運転できないもん。」
「わ、わしが運転するから。」
オレがそっけなく答えると、ファントムパイレーツがあわてて姿を現した。
「それでもいらんわ。だって、オレ達、内陸部を回ろうと思っているから、船いらんわ。」
「頼む。もらってくれ。わしはこの船に縛られた魔物なんだ。この船の周りでしか行動できんのよ。この、船が動き出さんことには永遠にここに縛られるんだ。それで、何年も何年もこの船のオーナーとなってくれる強い冒険者を待ってたんだ。この船は人間のオーナーがいないとわし一人の力では動かせないんだ。もう、ここに縛られるのは嫌なんだよ。」
ファントムパイレーツは泣いて土下座をして頼んだ。
「アメリ。かわいそうじゃない。もらってあげなよ。」
リオが同情して言った。
「わかった。もらってやるけど。しばらくはいらんな。じゃあ、帰ろか。」
「待て、待て、待ってください。今あなた達に帰られるとわしはまたこの暗いダンジョンに独りぼっちになるんじゃー。」
オレ達が帰ろうとすると、ファントムパイレーツが泣いて縋り付いてきた。
「じゃあ、どうすりゃいいのよ。」
「わしを使い魔にしてください。そしてこの船で移動してください。そうすればこの船とあなたたちに付いてわしはどこでも行ける。」
「うーん。船はマジで今はいらんから、困ったわね。あ、そうだ。あんた。もしかしてこの船に魂で縛られてるんでしょ?だったらこの船の魂的な物を持ってくれば、船がなくても自由に移動できるんじゃない?」
「船の魂的なものですか。あ、しばらくお待ちください。」
そう言うとファントムパイレーツは船に消えて行った。
しばらくして、船の舵を担いで帰ってきた。
「何と言っても船の魂はこの舵でしょ。」
「じゃあ、それを担いでダンジョンの外に出てみなよ。」
オレ達は歩いてダンジョンの出入り口まで来たが中の魔物はみんなオレ達に道を譲った。さすがはボスであった。ファントムパイレーツは出入り口の扉を開けて恐る恐る外に出た。
「外に出れる。自由に動ける。こんな簡単な事に100年も気づかなかったなんて。わしのバカ。アメリさん。ありがとうございます。」
ファントムパイレーツは喜び勇んで走り回っていた。
「よかったね。じゃあ。オレ達は帰るね。」
「待て。待て。待ってくださいよ。アメリさん。わしはあなた達に心底惚れました。ぜひ、改めて、使い魔にしてください。」
ファントムパイレーツが土下座をして言った。
「うーん。困ったね。どうする?」
オレはみんなに聞いた。
「その骸骨顔じゃ連れて歩けないよね。」
リオが答えた。
「大丈夫です。変身!」
ファントムパイレーツの骸骨顔に肉や皮膚が付いていく。
「あんた。その顔は?」
オレはビックリして聞いた。
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ブクマ100以上が底辺作家を脱する基準なんだとか。エベレストよりも高い壁じゃないか。
心が折れそうになる。しかし、エベレストなら歩いて登れる。一歩一歩登っていけばいいんだ。
お願いします。一歩(一ブクマ)をください。




