第45話 マッドシャーク
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2
サオリ・・・異世界転移者、お調子者
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者、守銭奴
カイエン・・冒険者ギルド長、悪徳代官
三階層も池のそばの小道を歩く形だった。
「ねえ。これって、船があればどんどん先に進めるんじゃない。」
先頭を歩くリオが聞いてきた。
「うん。だけど、マッドオルカにすぐひっくり返されて餌になるんじゃない。それに他にも凄いのいそうだし。」
池の中を鑑定しながらオレは答えた。
「リオ。横着はだめって事よ。地道に進もう。」
最後尾のセナが言った。
「いや。わたしはただ可能性の話をしただけで横着しようなんて言ってないわよ。」
リオがぶーたれて言った。
しばらく進むとリオが立ち止まって言った。
「みんな止まって、なんか天井にいるわ。」
オレ達は天井を見上げた。蝙蝠の化け物が三匹ぶらさがっていた。
「真ん中のはウォーズバットLV20よ。左右がビッグバットLV10ね。」
オレは三匹を鑑定して言った。
「で、どうする?」
リオが聞いた。
「そうね。飛ばれたら厄介だから魔法で仕留めよう。」
「わかった。サンダービームね。」
「いや。ぶらさがってるうちは無防備だから範囲魔法でいけるよ。安全を期して上位魔法のサンダガかファイガをセナが撃って。他のみんなは魔法が外れた時とマッドオルカの時みたいに横槍に気を付けて。」
オレはみんなに指示した。
「「「了解!」」」
「サンダガ!」
セナのサンダガ一発でウォーズバット一匹とビッグバット二匹が落ちてきた。
「それにしても厄介な奴が現れたわね。」
オレは三匹をアイテムボックスに回収しながら言った。
「え?サンダガ一発で楽勝じゃん。」
リオが能天気に答えた。
「バカね。たまたま止まってたけど、奴らは羽を持ってんのよ。空を自由自在に飛び回ってんのよ。そう言う事でしょ。アメリ。」
サオリが言った。
「うん。空から攻撃されんように気を付けないと。あと、水の中からもね。もちろん地上もね。」
「えー。陸海空すべて気を付けんといけんわけ。」
リオがどっかの自衛隊みたいなことを言った。
「うん。リオは前方の敵に目を凝らして。サオリは上空ね。わたしは水の中を見張るから。あと、セナは後ろに気を付けて。あと、不意打ちを喰らったらオレの指示を待たないで良いから自分の判断で攻撃して。」
オレはみんなに指示を飛ばした。
「サオリ。上空が一番やばいと思うからサンダガビームで撃ち落としてね。頼むわよ。」
「ラジャ。」
サオリが元気よく答えた。
しばらく進むと。
「上。三匹来るよ。サンダガビーム!サンダガビーム!サンダガビーム!」
サオリがサンダガビームの三連発でビッグバット3匹を撃ち落とした。サンダガビームはサンダガをレーザービームのように槍先から飛ばすもので、サオリのチート能力の無詠唱魔法を使えば連発も可能であった。撃ち落とされたビッグバットは次々と池の中に落ちた。
「あちゃー。池の中じゃ、取りに行けないね。」
リオが浮かんでいる3匹のビッグバットを見て言った。
「今、言うべき言葉はそれじゃないでしょ。」
サオリがむっとして言った。
「そうよ。ビッグバットにサンダガはもったいなかったでしょ?」
セナが言った。
「違うでしょ。サオリさん。凄い。天才でしょ。」
やれやれとオレは言った。
「アメリが正解。あんた達、少しはわたしを褒めなさいよ。」
「あっ。この人、称賛を強要するのね。痛い人。」
セナがボソッと言った。
「なんですって!あんたもわたしのサンダガビームを受けてみる?」
「ふん。撃ってみれば。わたしの剣が避雷針になってくれるわよ。」
「まあ。まあ。仲間割れは家に帰ってからやってよ。とにかくサオリは凄いってセナもリオも言いな。凄いのは間違いないんだから。」
「はーい。サオリ凄い。」
「凄い。」
リオは素直に言ったが、セナは舌を出して言った。
ほんと、めんどくせえ奴ら。このわがまま娘3人をまとめるのもオレの仕事だから全く疲れるぜ。
そのとき、オレは水の底から猛スピードで上がって来る物を感知した。
「水の中から何か来るよ。凄いスピード。気を付けて。」
マッドシャークLV80がビッグバットを一飲みにすると、再び水中へと消えて行った。
「今のは何?」
リオが刀を構えて聞いてきた。
「マッドシャークLV80よ。あ、もう2匹来た。」
2匹のマッドシャークが残りのビッグバットを貪り食って水の中に消えた。
「船で行ったらオレ達もああなってたのね。」
オレはぼそりと言った。
「水に落ちたら命の保証は無いって事ね。超危険なダンジョンじゃない。」
セナが震えながら言った。
「探索を止めて帰る?怖いなら帰って良いのよ。お子様は。」
サオリが嫌な笑顔を浮かべて言った。
「怖くなんかないわよ。相手にとって不足は無いって言ってんのよ。」
サオリを睨みながらセナが言った。
「また、あんたらは。握手して仲直りしなさい。」
オレは二人に握手をさせた。小さなわだかまりが命の危機を招くかもしれない。ダンジョンはそれだけ危険なんである。わだかまりを取り除くのはリーダーのオレの仕事だ。
「アメリ。剣を出して。槍じゃサンダガビームを撃つのに都合が悪いわ。」
サオリが嫌な雰囲気を変えるように言った。
オレはサオリから槍を受け取ると代わりに片手剣をアイテムボックスから出して渡した。
「やっぱり、剣よ。槍じゃサンダガビームは連射できないわ。」
片手剣を振り回しながらサオリが言った。
「よし。蝙蝠の化け物はわたしにまかせて。全部撃ち落としてあげるから。」
「頼もしいけど、MPの残量にも気をつけてよ。」
「オーケー。」
サオリの無詠唱は魔法が連発できて非常に便利だが、魔法の使用回数には限度がある。連発しすぎてMPを枯らさないようにオレは釘を刺した。
「アメリ。わたしにもサンダガビームを撃たして。」
セナが訴えた。
「サオリに対抗してるの?」
「うん。それもあるけど。4匹が空から襲ってきたら、いくらサオリでも撃ちきれないと思うの。」
そこは否定しないんだ。
「サオリはどう?」
オレはサオリに意見を求めた。
「うん。良いんじゃないの。4匹はさすがのわたしでも厳しいし。いっその事全員で撃てば。」
「そうしよう。それで撃ち落とした数を競うってのはどう?」
リオが口を挟んできた。
「リオー。あんた。ナイスアイデア。ボーナス査定10ポイントよ。じゃあ、今から蝙蝠射的大会を始めるよ。」
「ちょっと待ってよ。連続して魔法を撃てるサオリに敵うわけないじゃないの。」
セナが言った。
「大丈夫。サオリにはハンデ5を付けるから。」
「えー。ハンデ5じゃ。わたしが勝てないじゃない。」
サオリが文句を言った。
「わかった。じゃあ、ハンデ3ね。リオもセナも良いわね。優勝者はボーナス査定30ポイントよ。」
「おう。腕が鳴るぜ。」
リオが長剣をライフルのように構えて言った。
「頑張る。」
セナも気合を込めて言った。
命をやり取りするダンジョンでふざけ過ぎかもしれないが、単調な殺戮が続けば気が滅入ってくる。たまにはゲーム的な要素を取り入れるのも良いだろう。かく言うオレが一番楽しみにしてるんだけど。単純な魔法じゃ専門職のサオリとセナには敵わないかもしれないけど、射撃には自信を持ってるんだ。
と、言うわけで蝙蝠射的大会が始まった。
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あなたの救いの蜘蛛の糸でわたしは底辺という名の地獄から這い上がれます。