第40話 メアリー師匠に初勝利
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2
サオリ・・・異世界転移者、王国語を話せない
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者の卵、守銭奴
メアリー・・四人の師匠、ドエス
翌日、オレ達美少女?戦隊4人はサオリのワープで南のダンジョン地下3階に来た。地下3階も同じく洞窟のダンジョンだった。いかにも鉱山の地下と言った感じであった。しばらく歩くと、鉄の球一個と岩の球二個が道をふさいでいた。
「え!これって、昨日のボス部屋と同じ魔物?」
リオが足を止めて聞いてきた。
「いや、キングロックボールはレベル10で同じだけど、アイアンボールのほうも同じレベル10で昨日のボスのレベル20よりレベルが低いわ。」
オレは三匹の魔物を鑑定して言った。昨日のボス戦ではリオが先走ってウオーターの魔法を使ったが、鉄の球に効かずに苦戦した。アイアンボールにはサンダー突きでオレが止めを刺していた。
「じゃあ、サンダーで楽勝ね。」
リオが聞いた。
「それが厄介な事に、キングロックボールのほうはサンダーが効かないのよ。」
「え!じゃあ、どうするの?」
「そうね。オレとサオリでウオーターとサンダーの魔法をかけるから、とどめはリオとセナが鉄棒で殴って。」
「「わかった。」」
オレはリオとセナに指示を出した。サオリには日本語で指示を出した。
「ウオーター!」
「サンダー!」
サオリの水の魔法で岩の魔物のキングロックボールは大ダメージを受け、オレの電気の魔法で鉄の魔物のアイアンボールは大ダメージを受けた。魔法でもろくなった岩と鉄の球の魔物はリオとセナの一撃で簡単に砕けた。
「やっぱり、地下二階のボスと同じアイアンボールを倒しても何もドロップしないわね。」
アイアンボールを砕いたリオが、昨日アイアンボールが宝石をドロップしたので今日も出るかと思って、言った。
「そうね。このダンジョンはボスしかお宝をドロップしないみたいね。」
キングロックボール二匹を砕きながらセナが言った。二人はよほどボスのドロップしたお宝の宝石が気に入ったんだろう。リオはその美しさに、セナはその買い取り額に。
「あんたたち、そんなに宝石が気に入ったの?じゃあ、サクサクと倒して早くボス部屋に行くよ。」
オレは二人に気合を入れた。
「「おう!」」
二人は元気に答えた。
しばらく歩くと今度はアイアンボールが三匹現れた。
「サンダー!」
オレがサンダーでアイアンボール三匹の動きを止めて、リオ、セナ、サオリの三人が止めの一撃を加えた。
オレとサオリの二人で魔法を唱えて、リオとセナの二人で止めをさすパターンでしばらく進んだ。止まった岩や鉄の球を鉄の棒で叩くだけの単調な作業にリオが飽きてきた。
「ねえ。アメリ。わたしにも魔法を撃たしてよ。せっかく覚えたばかりの魔法だもん。わたしも魔法の腕をあげたいよ。」
これは、またオレがリオにひどい目にあわせられるパターンのふりか?そういつもいつもやられてたまるか。オレがリオの意見を却下しようとしたときに。
「わたしも魔法を勉強したいわ。というより、岩砕きは飽きたわ。交代して。」
セナまで魔法を撃たせろと言ってきた。しかも、こいつは飽きたとはっきり言い切ったし。こいつらのわがままを即座に却下したい。しかし、和を以て貴しとなす元日本人のオレは独善的な事ができない。サオリにも聞いてみた。
「うん。良いんじゃない。やりたがってるなら、やらしてみれば。」
こうして、リオとサオリが魔法を撃って、オレとサオリで鉄棒で殴って止めを刺すことになった。オレの心配は危惧に終わり、順調にボス部屋まできた。
オレ達が入ると例によって入り口が閉まった。これでボスをたおすしか部屋からは出れなくなった。まあ、オレ達にはサオリのワープがあるから、たおさなくても出れるんだけどね。
ボスはアイアンキングLV25が4匹だった。見るからに鉄球としか表現できない魔物が4個転がっていた。
「アメリ。作戦は?」
リオが聞いてきた。またリオが先走ってオレが被害を受けるパターンを予測してたので、リオが冷静に聞いてきたのは意外だった。
「うん。じゃあ、最初にセナがサンダーで4匹全体に攻撃して、とどめをオレとリオとサオリで刺すのはどう?」
「「「了解!」」」
セナは一歩前に出ると呪文を唱え始めた。
「サンダー!」
セナのサンダーがアイアンキング4匹に炸裂した。アイアンキング4匹はダメージを受けたが動きを止めなかった。それどころか、攻撃されて怒ったようで、ゴロゴロとオレ達に転がって向かってきた。オレはセナをかばうために前に出た。まずい事にオレに向って三匹のアイアンキングが向かってきた。
「アメリ!鉄棒を投げて、伏せて!」
セナの指示でオレは鉄棒をアイアンキングに投げて伏せた。
「サンダー!」
三匹のアイアンキングは動きを止めた。
「そして、突き!さらに突き!突き!」
セナのサンダー三連突きでアイアンキングはとどめをさされたらしい。残りの一匹はリオとサオリで倒したらしい。らしいと言うのはオレはセナのサンダーで気絶していて見てなかったからであった。
「アメリ!しっかり!ハイヒール!」
オレはリオに解放されていた。
「リオ。ありがとう。でも、気絶ぐらいだったらヒールにして。ハイヒールだとオーバーヒールになってオレ動けんわ。」
「ご、ごめん。じゃあどうしたら、オーバーヒールは治る?」
「う、うん。ダメージを与えれば良いから。魔法か打撃を頂戴。」
「わかった。」
「ぎゃー!」
オレはリオに鉄棒で思いっきりぶん殴られた。回復魔法がかかっていても痛い物は痛い。
「あ、ありがとう。リオ。渾身の一撃だったね。おかげで受けた大ダメージを治すためにオーバーヒールが治ったわ。このお礼はいつか利子をたっぷりとつけて返させてもらうわ。」
オレはよろよろと立ち上がって言った。
「いえ。お礼何て要りませんわ。殴って欲しい時は言ってね。いつでも殴ってあげるから。」
「いや。受けた恩は返さんと。利子をたっぷりとつけてね。」
「いや。要らねえよ。」
「なんなら、今返そうか?」
「あんたら、何どつき漫才してんのよ。」
セナが聞いてきた。オレはオーバーヒールになったいきさつを話した。
「ふーん。回復魔法も考えてかけないと怖いんだね。」
「そうよ。薬だって飲み過ぎたら毒になるでしょ。それと同じで回復しすぎは体を壊すのよ。具体的には心臓がバクバク言って、汗はだらだらと出て、目はかすみ動くどころか立ってもいられなかったわ。」
「それがオーバーヒールの症状ね。それがなんでどつき合いになったの?」
「うん。オーバーヒールを治す一番簡単な方法がもう一度ダメージを与える事だからね。あまり痛くない魔法でもかけてもらおうとリオに頼んだら、鉄棒で思いっきりどつかれたから、リオにお返ししてあげようとしてたの。」
「相変わらずバカねー。ところでなんでアメリまでサンダーを受けて気絶してたの?鉄棒をちゃんと離したんでしょ?」
「そ、それはなんでかな?」
オレが頭を掻いていたら。
「コレ!」
サオリが突然オレの腕をつかんで言った。そして、オレの両手のパワーリストを外した。
「あ、これ、ローク校長にもらったやつだ。アメリこれって金属だから電気を集めるやつじゃない。しかもこんな重い物を付けて戦ってたの。どおりで今日のアメリは動きに切れがないと思ったわ。」
「ごめんなさい。少しでも早く強くなりたくて。」
「みんな。アメリが実戦でもこんな重い物を手足に着けて戦ってたんだけど、どう思う?」
「別に良いんじゃないの。アメリにはもっともっと強くなってもらわないといけないしね。わたしの野望のためにも。」
リオがフォローしてくれた。リオ良いやつ。
「わたしが言いたいのは。実戦までこんな重い物つけて魔物にやられたらどうするのって言ってるの。」
「あー。それだって。それ付けてもセナより強いから大丈夫だよ。セナがもう一人増えたと思えばね。」
「ぐぬー。じゃあ、足手まといが二人になっても良いって事ね。」
「セナ。あんた自分で足手まといって言っちゃうんだ。」
「もう。わかったわよ。好きにしたらいいわ。」
オレはリオのおかげで魔物と戦うときもパワーリストを手足に装着するのを許された。
オレ達は地下4階にいったん降りてからサオリのワープでリオの部屋に戻った。
リオの部屋で昼食をとった後、メアリー師匠の家を訪ねた。メアリー師匠に魔法や剣を習った後、最後はいつものように組手をした。今日は竹刀を使わない組手であったが、オレは何とかサオリを下し、最後まで残った。もちろんサンダー対策にパワーリストは外していた。というわけで、メアリー師匠と最後に戦う事となった。審判はリオがすることになった。
「メアリー師匠。縮地で来てください。」
オレはメアリー師匠に頼んだ。
「なんか企んでるわね。良いわよ。縮地で行ったげる。」
「企んでなんかいませんよ。少しでも早く覚えたくて見たいだけですよ。」
「ふん。どうだか。」
オレは見えないパンチに備えて充分に腰を落とし、急所を隠すボクシングのような構えを取った。
「それでは、始めー!」
「ハイ・・・」
リオの合図と同時に、オレは前倒しで呪文を唱えていた魔法を唱えようとした。しかし案の定その前にパンチをもらった。前もって腰を低く落として構えていたのでパンチで突き飛ばされることは無かった。
「・・・ヒール!」
急所を守って構えていたので、気絶する前に呪文の残りを言えた。
メアリー師匠はオレに突き(パンチ)を決めたまま、動かなかった。
「ハイヒール!」
オレは目を覚ますとさらに呪文を唱えた。
オレは倒れた。ややあってメアリー師匠も倒れた。
「アメリー!メアリー師匠!」
審判のリオがオレ達に駆け寄った。手前にいたメアリー師匠を抱きかかえた。
「いかん。回復魔法を唱えなくっちゃ。」
「バ、バカ。メアリー師匠を殺す気か?」
オレは大声でリオを止めた。
「は、そうか。」
リオは大きくうなづくと、倒れているメアリー師匠に蹴りを入れ始めた。駆けつけたサオリとセナも蹴った。
「痛い。痛い。リオ!やめろ!セナも凶器はやめろ!」
メアリー師匠が目を覚まして言った。
「負けたわ。アメリの勝ちよ。でも、いったい何をしたの?」
「ハイヒールをかけたんです。」
「へ?ハイヒール?それがなんで?」
「うーん。やっぱり、メアリー師匠も脳筋だ。オレはメアリー師匠のパンチが来ると予想して、オレの周りに範囲魔法のハイヒールを呪文前倒しで唱えたんですよ。」
「でも、わたしの突き(パンチ)が先に決まったぞ。」
「ええ、見事に決まりましたよ。おかげで気絶しましたよ。でも、急所をガードして深く腰を落としていたので、気絶する前に呪文の残りを言えました。唱えたハイヒールのおかげでダメージを受けていたオレは意識を取り戻して、縮地を使いパンチを繰り出したメアリー師匠はオーバーヒールに陥って脳みそも心臓もオーバーヒートしたんですよ。とどめのハイヒールもプレゼントしましたしね。」
「凄い。見事にアメリにやられたわ。それでオーバーヒールの時はどうしたらいいんだい?」
「ダメージをあたえればいいんですよ。簡単に言えば魔法か打撃をあたえればいいんですよ。」
「それで、さっきリオ達がわたしをけってたのね。ところで、さっきからアメリも倒れたままだけど、オーバーヒールになってるんじゃない?」
「いえ。だ、大丈夫ですよ。」
「脂汗流して何を強がってんだい。リオやっちまいな!」
「わかりました。メアリー師匠。」
「ぎゃー!痛い!痛い!もう治った!リオ、やめろ!セナまで蹴るな!」
こうしてオレは袋叩きにあって、また気絶してしまった。
読んでくださってありがとうございます。




