第38話 休日最終日
登場人物紹介
アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2
サオリ・・・異世界転移者、王国語を話せない
リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1
セナ ・・・賢者の卵、守銭奴
メアリー・・四人の師匠、ドエス
サオリのワープでオレ達4人はリオの部屋に戻ってきていた。しばらくリオの部屋でみんなとしゃべっていたが、退屈に我慢ができなくなってオレは言った。
「ねえ。今日はこれからどうする?」
「うーん。まあ、のんびりしようとは思っているけど、何にも考えてないけど。」
リオがあくびしながら答えた。
「わたしも特に予定はないな。」
セナもあくびをしながら答えた。
「実はオレ、ダンジョンに行ってみようと思っているんだけど。」
「「えー!」」
王国語のわからないサオリ以外全員が驚嘆の声をあげた。
「えー。今日は休みにするって決めてるんでしょ。バカじゃないの?」
リオに言われるほどバカじゃないつもりだけど。
「もちろん、今日は美少女戦隊の仕事としてじゃないわ。オレが行きたいから行くだけよ。昨日の温泉でたまった疲れもとれたから、体がなまらないように動かしておきたいから。それで、良かったら誰か一緒に行ってくれないかなーと思ってさ。」
「わたしは行ってもいいよ。どうせ何にもする予定はなかったし。」
「リオ。大好き。」
オレはリオに抱き付いた。
「もう、しかたないな。リオが行くのにわたしが行かないわけにいかないでしょ。その代わり、祝日手当をはずんでよ。社長さん。」
「もちろんよ。」
オレはセナにも抱き付いた。
「さっきから、何イチャイチャしてんの?」
蚊帳の外だったサオリが日本語で聞いてきた。オレは説明してやった。
「ふーん。熱心な事、頑張ってね。わたしは家(孤児院)に帰るわ。」
サオリが言った。
「何言ってんの。あんたが行かなかったら、どうやってオレらダンジョンまで行けっつうのよ。あんたに選択権はないわ。」
オレは嫌がるサオリの首根っこをつかんで言った。
「嫌だー。休みを不当に取り上げるなんて、労働基準局に訴えるぞ。」
「残念でした。ここはお役所も警察もない異世界よ。労働者は資本家にあらがう術はないのさ(笑)。」
「なんか、サオリが興奮して言ってるけど、何て言ってんの?」
リオが聞いてきた。
「うん。ダンジョンに行けてうれしい。今日はオレに任せろっていってるんだよ。」
「ふーん。嫌がって見えるけど、ま、いいか。」
オレ達は嫌がるサオリのワープで南のダンジョン地下二階に来た。サオリは不機嫌極まりなかった。これはまずいな。特にサオリは、気分に左右されて実力を出せたり出せなかったりしやすいタイプなのに。しかたないな。
「サオリ。ごめん。今度スイーツおごるから許して。」
オレは謝った。
「ル・クールのケーキ食べ放題ね。」
サオリはとたんに機嫌をなおした。相変わらず、ちょろい、ちょろすぎる。ちなみにル・クールは町一番の美味しいケーキ屋さんであった。
「今度はなんか急にニコニコし始めたけど、サオリになんて言ったのアメリ。」
リオが聞いてきた。
「うん。ル・クールのケーキおごるから。機嫌をなおせて言ったの。」
オレが正直に答えると。
「やっぱり。サオリは怒ってたんじゃないの。それで、サオリだけにおごるって事はないよね。アメリ社長。」
しまった。オレが一番ちょろかった。オレは三人にケーキ食べ放題を約束させられてしまった。まあ、でも、三人の機嫌が良くなって良かった。三人の感情をコントロールするのがチームリーダーのオレの仕事だからな。
しばらく歩くと、丸い岩の魔物が三匹現れた。
「また、ロックボール?楽勝じゃん。わたしの金棒で一撃よ。」
リオが走りだそうとした。
「待って、ロックボールLV4じゃないよ。キングロックボールLV10よ。やみくもにつっこんだら、また痛い目に合うよ。」
魔物を鑑定したオレはリオを止めた。キングロックボールは地下一階層のボスで、ロックボールと違い、一撃で倒すこともできず、転がる動きもでき、強敵であった。
「まず、魔法でダメージを与えてから、金棒でとどめをさそう。MPに余裕のあるオレとサオリで順番に魔法を撃つから、魔法で弱ったところをリオとセナは金棒でとどめをさして。」
オレは三人に指示を出すと呪文を唱え始めた。キングロックボールは近づくまでは岩のように動かない。
「ウオーター!」
水の範囲魔法であるウオーターをキングロックボール三匹に浴びせた。水をかけるだけの簡単な魔法であるが、土系の魔物であるキングロックボールに大ダメージを与える事ができた。オレのウオーターでダメージを受けて、転がる事ができなくなったキングロックボールを三人は軽々と一撃でとどめをさした。
「あんな手ごわかったキングロックボールがなんて簡単に。」
リオが驚いていた。
「うん。キングロックボールは近づかない限り動かないから安心だし、岩の魔物が水に弱いのはボケもんフリークの間じゃ常識よ。」
オレは魔法の優位性を説明した。
こうして、オレ達は易々と先に進む事ができたが、魔法がなかったら、鉄棒で何度も叩いて、あげくに反撃をくらい誰かが大けがしてたかもしれない。つくづく魔法を習っていて良かったと思った。オレはサオリと交代で魔法を撃ちながらボス部屋まで易々と到着した。
今まで金棒攻撃に専念していたリオが、飽きたのか、自分にも魔法を使わさせろと言い出した。習ったばかりの魔法を試してみたい気持ちは良くわかるので特に反対はしなかった。
ボスはアイアンボールLV20とお供がキングロックボールLV10が二匹だった。オレが指示を出す前にリオが走り出した。
「ウオーター!」
リオのウオーターが三匹の魔物を襲った。
「バ、バカ。」
オレは舌打ちすると呪文を唱え始めた。呪文を唱えて足を止めたオレ以外の三人が魔物三匹に襲い掛かった。右のキングロックボールをサオリが倒し、左のロックボールはセナが一撃で倒した。ボスのアイアンボールにリオが必殺の一撃を加えたがアイアンボールは平気だった。平気どころか転がって反撃をしてきた。リオはかろうじてアイアンボールの攻撃を横に飛んでかわした。
「みんな!鉄棒を置いて伏せて!」
オレはみんなが伏せると。
「サンダー!そして突きー!」
サオリの必殺技サンダー突きでアイアンボールにとどめをさした。
リオの攻撃にびくともしなかったアイアンボールが真っ二つに割れ、光の球になって消えた。後にはお約束のように大きな魔石とキラキラ光る宝石が残っていた。オレが魔石と宝石を拾うと三人が集まってきた。
「なんで?わたしの魔法が効かなかったの?」
リオが聞いた。
「アイアンボールは見るからに鉄の化け物じゃん。鉄の魔物には水よりも電気よ。あと、リオはオレの指示を聞いてから飛び出すように。」
オレはリオの頭を小突いて言った。
「でも、どうしてそんなことがわかるの?また、ボケもんの常識。」
セナが聞いた。
「まあ、それもあるけど、サンダー(電気)は金属に落ちるからね。金属の塊にサンダーを撃たない手はないでしょ?」
「そしたらさ。わたし達が伏せなくて金棒を離さなかったらどうなってたの?」
リオが聞いた。
「まあ、メアリー師匠の二の前になるでしょうね。」
「怖い。ボスの前で気絶したら、潰されるじゃないの。」
リオが抗議した。
「だから、みんなが伏せて金棒を離すのを確認してから撃ったよ。」
オレは弁明した。
「でも、王国語で言ったみたいだけど、サオリに通じたの?」
セナが聞いてきた。セナは痛い所を突いてくるな。
「ま、まあ通じたんじゃないの?大丈夫だったみたいだし。」
オレが答えると。
「アメリ。あんた。わたし達に当たっても構わないと思って撃ったわね。」
リオが抗議した。
「そ、そんな事ないよ。て、言うか。リオ。あんたがオレの指示を聞いてりゃ、こんな苦戦しなかったんだから、あんたに言われる筋合いはないわ。」
オレが逆切れすると。
「リオはボーナス査定マイナス10ポイント、アメリもマイナス10ポイントね。」
経理担当のセナ(守銭奴)が言った。
「「そ、そんな。」」
オレとリオは同時に声をあげた。そして、二人してリオのご機嫌取をすることになった。
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