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第373話 エルフのフローラ

 



「わ、わたしはフローラと申す者です。」


 森の中から返事が返って来た。


「フローラさん。助けてくれたのは感謝するけどなんで出てこないの?失礼じゃない?」


「そ、それは・・・・。」


 たしかにトシコの言う通りだけど、恩人に対しての言い方。


「あ、そこにいるよ。え!エルフ?」


 鑑定持ちのユウが森の中からフローラをすばやく見つけたけど、今エルフって言った?エルフってあのエルフよね?耳がとんがってて絶世の美女で、後長生きで。わたしはエルフについて思いつく限りを思い出した。まあ異世界だから亜人もありなのかな。


「なんでエルフって分かったの?まあエルフってバレたなら隠れてても仕方ないわね。」


 そう言いながらエルフのフローラは森の中から出てきた。その容姿はまさに物語でよく見るエルフそのものだった。


「みんな驚いているみたいだけど、エルフって初めて?」


「エルフどころかわたし達は亜人も初めてよ。へー。本当にいるんだね。」


「ちょっと珍しい動物を見たみたいな言い方は失礼よ。トシコ。ごめんなさいね。礼儀知らずで、フローラさん。あなたに聞きたいこといっぱいあるけどよろしいかしら?」


「ええ。別にわたしが答えられる範囲でなんでも答えるけどさ。その前にあなた方が何者か名乗るべきじゃないかしら?」


 エルフの年は分からないけど話しぶりからしてわたし達とそう変わらないとみた。それよりも一番気になる事があるんだけど、フローラの言う通りとりあえずはわたし達の素性を語るのが先ね。


「ごめんなさい。フローラさん。あなたのおっしゃる通りだわ。わたし達は・・・・・。」


 わたし達がジパンの冒険者でダンジョンを攻略中に誤って魔法陣を踏んでしまってこちらに転移してきてしまった事を告げた。


「ふーん。ジパンの冒険者ね。ジパンは良い国よね。わたしも行ってみたいわ。」


「その口ぶりだとここはジパンじゃないって事?」


 フローラの一言にトシコが食いついた。


「うん。ここはあなた達のいる世界とは別の世界なの。」


「え!異世界?」


 異世界の異世界ってどういう事?わたしは頭が混乱してきた。


「そう。言うならば異世界ね。わたし達エルフの世界はこの島が全てなの。まあ幻界とわたし達エルフは呼んでるけど。この島の周りの海はあなた達の住む実世界とは繋がってはいないの。」


「え!でもこうしてわたし達が来たじゃないの。」


「それはわたしがあなた達をこの世界に呼んだからよ。」


「え!あの魔法陣はあんたの仕業!」


「それでどれだけわたし達が死ぬような目に会ってると思ってるのよ!」


「まあまあ、ユウにトシコ、少し落ち着いて。フローラさんの言い分を聞かせてもらおう。フローラさん。どういうわけでわたし達をこんな物騒な所に呼んだの?返答次第ではわたしもあなたを全力で潰しますよ。」


「ごめんなさい。仕方なかったんです。」


 そう言ってフローラはなんと土下座をして謝った。この世界では土下座と言う物は存在しなかった。いや、見てないだけでジパンにはあるかも知れないけど。


「土下座?やはりあなたも元日本人ね。とりあえず今はそれはどうでも良いわ。理由を言って。」


「はい。実はあなた方も遭遇したように最近オークの集団がこの島にどこからか転移してきたんです。もちろん転移陣は既に消したんですけど何匹も島に残ってしまって。」


「そんなのあんた達の実力なら楽勝じゃないの?」


「トシコさんでしたっけ、それがわたし達エルフは全員で3人しかいなくて、しかも戦闘能力があるのはわたし一人だけなんです。どうにかしないといけないなと思って下界を覗いたら懐かしい日本語を聞いてしまって。悪いとは思ったんですけど、つい召喚してしまいました。厚かましいお願いですけど、わたし達エルフを助けていただけないでしょうか?お願いします。もちろんお礼はできる限りします。」


 そう言えば二号アメリ達一軍は王国語で会話してるよね。日本語で会話しているわたし達二軍を見て懐かしいと思ったのかしら、この元日本人と思しき糞エルフは。


「迷惑極まりないけど、やるしかないみたいね。分かった。助けるわ。」


「あ、ありがとうございます。」


「それでぶっちゃけわたし達は言わば二軍なんだけど、一軍の二号アメリ達は呼べないの?」


「え!二軍?」


「今、しまったって顔したね。」


「し、してません。」


「良いのよ。事実なんだから。それでどうなの?」


「それが転移陣を作るには大量のマナが必要で、今貯めている所なんです。」


「そう。やはりわたし達で何とかするしかなさそうね。でも、そのマナとやらが貯まればわたし達は元の世界に戻れるって事でよろしい?」


「マナと言うのはこちらの世界のエネルギーの塊みたいなものでそれで新たなエルフの子を生み出す元なのです。もちろんあなた方を元の世界に戻すために最優先で使わせてもらいます。」


「分かった。フローラ、あなた、わたし達の仲間になりなさい。美少女戦隊に入隊しなさい。仲間のためならわたしもトシコもユウもエリナも命を懸けられるわ。」


「分かりました。エルフのわたしでも良いなら喜んで仲間に入れてもらいます。」


「亜人だからって卑下する事ないよ。仲間には幽霊も骸骨もいるからね。」


「え!本当?」


 フローラでなくてトシコがビックリして口を挟んだ。


「みんなには言ってなかったけど王国の本拠地にいるのよ。もちろん普段は人間の格好してるけどね。」


「でも一号アメリの許可なしでそんな事して良いの?」


「良いのよ。トシコ。一号アメリがダメと言うわけないでしょ。それにもしダメだと言ってもわたしの責任で絶対に入れさせるから。」


「あのさ、フローラ達エルフって、たった三人しかいないんでしょ。それで島を離れても良いの?」


「えっとユウさんでしたよね?たしか。」


「うん。ユウで良いよ。」


「じゃあユウ。それは大丈夫よ。わたしが島を長期間離れるような事になったら新たなエルフの子が生まれるから。」


「新たなエルフの子が生まれるってお父さんとお母さんが頑張るの?」


「それは違うの。わたし達エルフには人間みたいな明確な性別は無いのよ。三人の内の誰かが欠けると残りの二人の内どちらかが身ごもるの。まあ普通は若い方のエルフだけど。つまりわたしのお母さんがわたしの妹を生むから大丈夫って事。」


「え!それって単為生殖って事?」


 わたしはビックリして口を挟んだ。


「まあ、学術的に言うとそう言う事ね。わたしもおばあちゃんから初めて聞かされた時はビックリしたわ。まるで魚か昆虫みたいだしw。でもすぐにエルフならありかなと思ったわ。わたし達エルフっていろいろ人間離れしてるもの。病気やけがをしなかったら半永久的に長生きするしね。」


「やっぱりエルフって長命なんだ。でもせっかく長生きできるのに命の危険のある外の世界に出ても良いの?」


「うん。良いのよ。ホノカ。わたしは元日本人の転生者だからかな、外の世界を知ってるから退屈なこの島で長生きするよりも外の世界に出たいわ。たとえ寿命半ばで死ぬようなことがあってもね。それにホノカ達に助けてもらえなかったら元々全滅してたしね。」


「エルフの存続のためにも頑張らないといけないって事ね。それで肝心な事を聞くの忘れてたけど、敵のオークについて教えてよ。」


「そうね。一匹一匹数えた訳じゃないけど、ざっと見積もって三十匹はオークがいるわ。」


「三十匹って絶対に無理じゃないの!」


「トシコ。無理でもやるしかないでしょ。フローラ。続けて。」


「うん。それでほとんどはダンジョンとかでよく見るただのオークだけど、オークジェネラルが率いる小隊が三組はいるわね。つまりオークジェネラルが三匹、雑魚オークが三十匹って所ね。」


「小隊って事は訓練されたオークって事よね?」


「まあそう言う事ね。四匹で一チームを組んでいて雑魚オークでも戦闘力高そうよ。」


「オークジェネラルを一匹でも減らせたのは不幸中の幸いね。」


「え!オークジェネラルを!やはりわたしが見込んだ冒険者だけあるわ。」


「それがね。偶然か分からないけど、単独で行動していたのよ。だからわたし達でも倒せたのよ。チームで来られたら絶対に敵わないわ。オークジェネラルと雑魚オークがやられた事で敵も本気になったと思うわ。もう単独では来ないと思うの。集団で来ると思うの。それでしばらくは身を隠そうと思うんだけど。」


「それならわたし達エルフの里に来ると良いわ。ちょっとやそっとじゃ分からない所にあるからね。じゃあ善は急げね。付いてきて。」


 フローラの手招きでわたし達は森の中を進んだ。エルフの里はうっそうとした森の中にあり外からは見えず、その出入り口は何重にも隠されていた。しかし隠されていると言ってもオークの力技で木や岩をどけられたらいつかはばれてしまうだろう。




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