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第37話 海辺の温泉街

 登場人物紹介


アメリ・・・異世界転生者、脳筋野郎2


サオリ・・・異世界転移者、王国語を話せない


リオ ・・・魔法剣士、脳筋野郎1


セナ ・・・賢者の卵、守銭奴


メアリー・・四人の師匠、ドエス

 翌朝、オレ達4人はサオリがかつて保護された、海辺の町ミヒにサオリのワープで来た。ミヒに来た理由は観光と買い物である。サオリのワープは、かって行った事のある所なら何時でもどこでも行けた。ミヒの町に入るには一人当たり銀貨3枚(約三千円)必要だったが、入場門から入ってないオレらはもちろんただであった。ミヒの町はダンジョン都市のセシルと違い、武器屋や防具屋があまりない代わりに海産物を扱う店が多かった。冷凍冷蔵の発達していないこの世界では海産物は干物や燻製にされる事が多かった。魚を食べる習慣のなかったリオとセナも、昨日の焼き魚と焼きガニで海産物に目覚めていた。


「アメリ。この干からびたミイラみたいな魚はうまいの?」


 リオが聞いてきた。干物は知らないのにミイラは知ってんだ。


「うまいよー。干すことによって旨味が凝縮されるからね。オレはむしろ干物のほうが好きだな。」


「えー。そんなにうまいの?このミイラが。よし。いっぱい買って行こう。いいよね?セナ。」


 リオが経理担当のセナに聞いた。


「うん。賛成。セシルじゃなかなか買えないしね。あのしょっぱい汁も買っていこう。」


 オレ達は手当たり次第干物を買った。生け簀で生きていたカニやエビも買った。


 干物があると言う事はあれもあるはずだ。オレは店の中を探した。あ、あった。オレは店にあるだけ買いしめた。


「アメリ。その黒い薄い板みたいなのは何?」


 リオが怪訝そうな顔をして聞いてきた。


「オレ達の世界では昆布って言うんだけど、こっちでは何と言うんだろう。おじさん。これ、何て言うんですか?」


 オレは店員に聞いた。


「え?お前さん。何かわからずに買ったんかい?それはコプだよ。」


「コプですか。お母さんがこれを買ってこいと言ったもんで。ありがとう。おじさん。

 リオ。コプだって。」


「名前を聞いてるんじゃないわ。その板をどうするか、聞いてんの?」


「コプはお湯で煮るといい出汁がでるのよ。」


 オレがリオに答えると。


「おっ。おねえちゃん。よく知ってるじゃん。その通りだよ。ここいらじゃみんなこいつで出汁を取ってるよ。」


 おじさんも教えてくれた。


 オレ達は買い物をすませた後、人通りのない小道に入ると、各自が両手に抱えた海産物を全部オレのアイテムボックスに入れた。そして再び手ぶらになると表通りに繰り出した。我ながら便利な能力だと思った。


 このミヒは温泉が湧いていて温泉地としても有名だった。温泉と言えば土産物屋である。オレ達は土産物屋を冷かして歩いた。一通り土産物屋や魚屋を覗いた後で、オレ達は食事を摂る事にした。食事は海を見る事ができる見晴らしの良いレストランに入った。4人全員でおまかせの料理を注文した。海の町らしく魚を使った料理が出てきた。魚を焼いてソースを絡めたものでうまかった。日本で言えば、白身魚のムニエルと言う所か。魚料理に目覚めてきたリオとセナがオレに、帰ってから再現するように言ってきた。難しい事を言いやがる。オレは冒険者であって、料理人じゃないつーの。見よう見まねで作ってもこの味は出せないつーの。ソースとか秘伝の味は再現できないよ。残したのをこっそりアイテムボックスに入れたから、後で研究しようとは思ってるけど。


 お腹いっぱいになると次は宿を探した。お貴族様の泊まるような高級なホテルもあったが、オレ達は庶民的な宿に決めた。サオリのワープですぐに帰れるわけだが、オレがみんなでお泊りしたいとごねたので、宿に泊まる事になったのだ。だって、毎日料理してんのはオレだぞ。たまには料理から解放されて楽をしたいわい。宿は町はずれの小高い丘の上にあって、海が良く見えたので、そこに決めた。もちろん、温泉も付いていた。オレ達はチェックインをすますと、さっそく温泉に入った。温泉は山の源泉から引いたもので、大きな池のような露天風呂だった。宿の女将さんによると、時間を決めて男女交代で入っているって事だった。まだ早い時間で他にお客さんがいないので女性専用の時間にしてくれた。


「うわー。なにこれ。この池熱い。」


 露天風呂にちょっと足をつけてリオが言った。そもそも行水の習慣ぐらいしかなく、入浴の習慣のないこの世界の人であるリオとセナは温泉にビックリしていた。元日本人のオレとサオリは懐かしくて泣いていたけど。


「ちょうどいい湯加減だよ。最初は熱く感じるけど、すぐになれるから大丈夫だよ。ゆっくり体をお湯につけていってみ。」


 オレは温泉初心者のリオとセナにアドバイスした。


「あっ。本当だ。熱いのは最初だけで、今は気持ちいいわー。」


「本当。気持ちいいね。」


 リオとセナも温泉に慣れて大満足であった。オレもリオの巨乳が見れて大満足であった。


「温泉は体にすごくいいのよ。体の疲れもとれるし、ケガとかも癒してくれるのよ。あと、たまった疲れもとれるんだよ。」


 オレが温泉の効能について語ると。


「このお湯はポーションなの?」


 リオが聞いた。


「絶対に違うと思うけど。でも、まあ天然のポーションみたいなもんと言ってもいいかもしれんね。飲んでも効果があるらしいから。」


 オレの説明を聞いたリオがお湯を手ですくってごくごく飲み始めた。


「ちょっと、リオ。お腹壊すからやめなさいよ。飲むんだったら池のお湯じゃなくて池に注いでいるお湯にしなさい。」


 オレは注意したが、まあリオなら大丈夫だろ。


「ねえ。みんなは気になる男子いる?」


 リオが突然聞いてきた。お、やっと女子会らしくなってきたじゃんか。しかし、恥ずかしいのかみんな黙っていた。


「言い出しっぺのリオから言いなさいよ。」


 セナがリオに促した。


「わたしはロイ様よ。強いしかっこいいもん。」


 リオが答えると。


「ロイか確かにイケメンよねー。わたしも気になる。」


 セナが言った。ロイは今売り出し中の若手冒険者パーティのイケメン剣士であった。


「アメリとサオリは誰よ。」


 リオが聞いてきた。


 オレはサオリに日本語で聞いた。


「わたしはジョニーが好き。」


 サオリが答えた。


「え!ジョニー!」


 オレは思わず大声を出してしまった。


「ジョニーって誰?」


 リオが聞いた。


「ジョニーってもしかして、あのジョニー?」


 セナも聞いてきた。


「うん。チンピラのジョニーよ。オレの手下の。サオリが好きなんだって。」


「「趣味悪-い。」」


 オレとセナがハモった。ジョニーはサオリとセナがお世話になっている孤児院の仲間でオレの子分であった。もちろん、イケメンとは言い難かった。


「だって。わたしがこの世界に来て、言葉もわからず不安でしようがない時にやさしくしてくれたんだもん。」


 バカにされたと思ってサオリが口をとがらせて言った。ここにもちょろい人がいたー。


「うん。ジョニーはやさしいよね。やさしい人が一番だよね。」


 オレは生暖かい目でサオリにフォローを入れた。


「じゃあ。最後はアメリよ。早く言いなさい。」


 リオがせっついてきた。


「わたしはローク校長よ。」


「「「ローク校長!」」」


 リオとセナとサオリが絶句した。


「あのはげ親父のどこが良いのー?」


「あんたのお父さんよりも年上でしょ?」


「コーチョ。ハゲ。」


 みんなが口々にローク校長のダメ出しをした。だって、オレは半分男だし、別にイケメンに興味ないし、惚れるとしても自分より強い男だし。


「悪いか。オレはメアリー師匠と一緒で自分より強い男しか認めねえんだよ。」


 オレが開き直って言うと、リオとセナがかわいそうな子を見るような目でオレを見てきた。チャラい男が好きな二人のみならず、チンピラ好きのサオリにまでそういう目をされた。


 バカにされて悔しいのでリオとセナの乳をもんでやった。リオの巨乳ももみがいがあっていいが、セナの微乳もこれはこれでいい。当然、サオリにどつかれたが、今日は反撃してサオリももんでやった。サオリもリオほどではないが良い乳をしていた。オレはみんなの反撃にあい、乳やらあそこやらそこやらここやら全身をもまれて悶絶してしまった。オレ達があまりに大声で騒いだので、宿の女将さんに説教されてしまった。


 お風呂を上がった後は、自由時間にした。リオとセナはお土産屋を再び冷やかしに行った。オレとサオリは港の堤防で釣りをすることにした。昨日の反省を踏まえて剣だけは装備して行った。


 二人してのんびりと糸を垂れた。まったりとした時間が流れていった。


「ねえ。アメリ。わたし達ってどうなるのかな?日本に帰れるのかな?」


 サオリがしんみりと聞いてきた。


「サオリはやっぱり日本に帰りたいんだ。」


「当たり前じゃん。わたしは日本人なのよ。あっ。ごめんなさい。」


「オレは半分だけ日本人だからね。ここでがんばるしかないからね。

 あと、オレ思うんだけどサオリのワープって空間移動の能力でしょ。その能力を突き詰めていけば、いつか日本にも行けるんじゃないかと思うんだけど。」


「そうだよね。いつか帰れるよね。」


「うん。帰れるさ。きっと。でも、別れ離れになるなら、オレは帰ってほしくないけど。」


「アメリ。」


「サオリ。」


 オレ達は抱き合った。もちろん、竿は置きざおにしてである。


 太陽が海に沈むころにリオとセナがオレとサオリを呼びに来た。夕焼けがきれいだった。オレ達はしばらく海を眺めていた。


「魔物だー!」


 突然大きな声がした。


 声のほうを見ると、またもやマッドオクトパスの巨体が見えた。港の労務者達が勇敢にも立ち向かったが、マッドオクトパスの柔らかい体に傷一つつける事ができなかった。マッドオクトパスには物理攻撃があまり効かないみたいだった。


「しかたない。行くか。」


 オレはみんなに声をかけた。


「「「おう!」」」


 オレ達はマッドオクトパスに向って走った。


「リオ。先走りしないでよ。みんなサンダーの呪文を唱えて。サンダー4発で倒そう。」


 オレは走りながら指示を出した。


「ちょっと、おじさん達どいてくれるかな。今から魔法をぶっ放すから。」


 オレはマッドオクトパスと戦っていた男たちをどかした。


「じゃあ、せーのでいっせいに撃とう。せーのっ!」


「「「「サンダー!」」」」


 4発のサンダーを受けてマッドオクトパスは即死した。


「すげー!なんだ今のは魔法か?」


「信じられん。こんなかわいい子たちが一発で仕留めたぞ。」


「オレ。初めて魔法って見たぞ。すげー。すげー。」


「かわいい。付き合ってくれー!」


 オレ達は口々に絶賛されて港の男たちに取り囲まれた。


「ありがとう。よくやってくれた。これは少ないが討伐料だ。」


 港湾労働者のボスらしき男が金貨一枚をくれた。


「こんなにもらえませんよ。」


 オレが辞退しようとすると。


「町の衛兵に頼むとそのくらいは取られるし、マッドオクトパスの肉はうまいから、切って売れば充分に元が取れるから気にすんな。」


 ボスは豪快に笑った。海に遊びに来て思わぬ収入であった。もちろん、経理担当のセナはニコニコであった。これから、うまいもんを食わせてやると言うボスの申し出を丁重に断ってオレ達は走ってさっさと宿に帰った。


「アメリ。せっかくおいしい物を食べさせてくれるって言うんだから、ごちそうになれば良かったんじゃないの?」


 リオが聞いてきた。


「バカね。娯楽の少ない町の人たちの前に見たこともない魔法を使う美少女が4人も現れたのよ。町の人達がほっとくと思う?」


「え?どういう事?」


「オレ達を見に人が集まってくるって事よ。」


「え?いいじゃん。べつに。」


「良くないよ。うざいよ。それにおいしい物は宿で食べられるじゃないの。」


 不満そうなリオをなだめて宿に急いだ。


 狭い港町である。他所から来た4人娘がどこに宿を取っているかはすぐに町の人の知ることになった。オレ達を一目見ようと、宿を取り囲むようにして多くの町の人達が集まった。おかげでオレ達は宿から一歩も出る事ができず、夜の町に繰り出すこととができなかった。


「アメリ。あんた。これがわかってたのね?」


 リオが聞いた。


「うん。かつてオレが町で魔法を使ったときがそうだったからね。オレの家の食堂がパニックになったからね。」


「で、これからどうする?」


「うん。予定変更して、明日は早朝から帰りましょう。宿のお金はもう払ってあるから、サオリのワープでね。」


 翌早朝、オレ達はサオリのワープで宿の部屋からひっそりと姿を消した。4人の魔法少女が門を通らずに突然町から姿を消したため、神の使いだの、幻の勇者様だとかいろいろと憶測が飛び交った。四人組の魔法少女は本人達の知らないところで、都市伝説の一つになってしまった。




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読んでくださってありがとうございます。おもしろいと思ったなら、ブクマ、評価をお願いします。

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