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第369話 オークソルジャー

 



 違和感の正体にはすぐ気づけた。ダンジョンの中にいるオークと違ってこいつは裸じゃなかった。正確には剣道の胴のような簡素な鎧を着こみ、腰には剣らしきものまで下げていた。


 ユウに気付いたオークは腰の剣を抜くといきなり襲い掛かって来た。装備をしている事からもしかして話しの通じる相手かと思ったら、やはり単純にわたし達の敵みたいね。安心したわ。これで思いっきりやっつけられる。


「ファイアーボール!」


 正面のユウに気を取られていたオークは物陰から撃たれた魔法には全く反応できなかったわ。わたしの魔法は見事に命中したわ。魔法ファイアーボールの着弾を合図にわたし達は一斉に草むらから飛び出した。


 まず一太刀目を浴びせたのは動きの素早いトシコだった。魔法で怯んだ魔物に剣戟を加えて仕留めるわたし達お得意の必殺パターンだった。オークごときはいつもこれで一発だった。


 しかしこの魔物オークは違った。トシコの一撃を耐えたのみならず、あろうことか反撃までしてきたのだった。


 仕留めたと思い、反撃が来るとは思ってもいなかったトシコはオークの反撃を受けてしまった。


「トシコー!」


 オークの追撃を倒れたトシコの代わりにユウが防いだ。防いだと言っても地力の差は歴然だ。つばぜり合いでユウも吹っ飛ばされた。


「ファイアーボール!」


 あわてて撃ったわたしの魔法ファイアーボールはまたしても命中したが致命傷にはならなかった。しかしオークの攻撃の矛先をトシコとユウから変えさせるのには成功した。こちらに向き直るとわたし目掛けて突進してきた。


 わたしは腰を落として防御に全力を尽くした。おかげでオークの爆風のような凄まじい上段斬りを剣で受け止める事ができた。


「今よ!エリナ!」


 わたしの陰から飛び出したエリナがオークの胴を斬った。バカ。このオークは鎧を着込んでる。剣道じゃないんだ。胴を斬ってどうする。


 案の定エリナの剣戟は鎧でふさがれて致命傷とはならなかった。おかげでわたしまで突き飛ばされてしりもちをついてしまった。


 当然のごとくオークは畳みかけて来る。


「これでもくらえ!」


 とっさに掴んだ土砂をオークの顔に投げつけてやった。目くらましになったおかげでオークの追撃を防げた。


「エリナ!」


 無言でうなづいたエリナは今度は首を狙って剣を横に振った。首をはねるまではいかなかったが致命傷は与えられたようだった。


 首から噴水のように血を噴き出したオークはやっと倒れてくれた。


「トシコー!」


 勝利の余韻に浸ってる暇はない。わたしはケガを負ったトシコとそれを介抱するユウの元に駆けつけた。


「ヒール!」


 幸いな事にトシコの傷はそんなに深くはなかった。とっさに左手で急所をかばったみたいで左手を斬られていたが傷は骨までは達していなかった。よかったこれならわたしの拙い回復魔法でも助けられる。トシコの傷はみるみるうちにふさがっていった。


「ありがとう。ホノカ。」


「トシコ。大丈夫?いける?」


「うん。大丈夫。治った。いける。いける。」


「良かった。」


「あれ?ホノカ。泣いてんの?」


「当たり前じゃないの。心配したんだから。」


「ありがとう。心配してくれて。」


 トシコまで釣られて泣いてしまった。


「ちょっとホノカにトシコ!泣くのは無事に家に帰った時にして!まずは止めを刺してくれたエリナにねぎらいの言葉とあと反省会でしょ。」


「ごめん。ユウの言う通りだわ。わたしがしっかりしないとね。エリナ。ありがとう。よくやった。」


「どうも。」


 日本語の良く分らないエリナは通訳のトシコの言葉を聞くと一言だけ日本語で言ってぺこりと頭を下げた。


「次は反省会ね。みんなも気づいたと思うけどそこに倒れてるオークは只者じゃないわ。魔法を節約しろと言ったけど、そんな裕著な事言ってる場合じゃなかったわね。これからは一匹一匹がボス級に強いと思った方が良いわね。毎回全力で行くわよ。魔法の出し惜しみもなし。あと、オークが消えない所から見てもここはダンジョンの中ではないわね。」


「うん。わたしの鑑定でオークソルジャーって出てるわ。」


「やっぱりただのオークじゃなかったわね。それでそのオークソルジャーって経験値多くもらえるのかな?どうユウ?」


 わたしは鑑定持ちのユウに尋ねた。


「うん。みんな。一から二程いっぺんでレベルアップしたよ。」


「そうか。経験値が多いのはありがたいわね。これからどんな敵が出てくるか分からないけど地道にレベルアップして行けばなんとかなりそうだもの。」


「それでこいつはどうするの?」


 地面に転がったオークソルジャーを指さしてトシコが尋ねた。


「そうね。こいつ中々良い装備をしているから身ぐるみ剥いでもらっときましょう。あと、オークの肉と特にキンタ〇は良いお金になるらしいから体ももちろん回収よ。よろしくトシコ。」


 アイテムボックス持ちのトシコにわたしは頼んだ。


「肉はともかくキンタ〇なんかどうすんの?」


「オークってわたし達女を殺しはしないのよ。トシコ。」


「え!じゃなんで襲って来るの?」


「わたし達女を犯すためよ。つまりオークって凄い精力が強いの。そのキンタ〇って事は抜群の精力剤になるって事ね。だからまずい肉は二束三文だけど、キンタ〇は良いお金になるってわけよ。」


 一号アメリの受け売りだけど、わたしの知っているオークの話をした。



「えー!こいつ本当に女の敵なのね。この大きなキンタ〇踏みつぶしてやりたいわ。」


「ダメ。ダメ。これ本当に金になる玉なんだからw」


 わたしとトシコが強敵を倒した安堵感でつい気が緩み笑っていたが、ユウだけは笑わずに何か考えてるようだった。


「どうしたの?ユウ。難しい顔して。」


「ねえ。こいつただのオークじゃないんだよね。と言う事はオークの中でもエリートよね。そのエリートがなんで一人で歩いていたのかしら?どう考えても散歩って雰囲気じゃないよね。」


「そうね。腕の立つやつの単独行動ってわたし達人間で考えたら適地を探る先遣隊って所かしら。一人で目立たずに敵地の情報を集めてくるの。」


「え!と言う事は?」


「そう。考えたくないけどオークの軍団がいるわね。」


「軍団?一匹でもこんなに手こずったのに。もう詰んだよ。」


「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」


 もう詰んだよと言うユウの言葉にわたし達は黙り込んでしまった。





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