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第362話 ギャングのボス

 



「わ、わたし、恥ずかしくてもうハナハナに住めない。サオリ、お願い。わたしをそのワープでどこか遠くに連れてって。」


「ちょっと落ち着いて。ユウ。心配しなくても二日後には海の上だから。」


 ビーチで公衆の面前でおっぱいをさらす羽目になってしまったユウは泣きながらサオリに懇願した。それに対してサオリはこの旅の目的地がジパン本土であり、最終的には王国に帰る事を告げた。


「それで王都キンリーで冒険者稼業をするんだけど、良いかな?ユウにトシコにエリナは。」


 リーダーである一号アメリが新参者三人に聞いた。


「わたし、どうせもうハナハナには住めないからちょうど良かったわ。」


 ユウが泣きながら答えた。


「わたしもエリナもお尋ね者だからね。カタリナ以外ならどこでも良いよ。もともと二人とも孤児だからいなくなっても心配する人もいないしね。」


 トシコの方はあっけらかんと答えた。


「国外逃亡犯の二人はともかくユウはハナハナに家族とかいるんじゃないの?」


 サオリがユウに聞いた。


「うん。お父さん、お母さんに妹がいるんだけど・・・・・」


「お金を家に入れたいんだね?大丈夫。わたしに言ってくれれば、いつでもどこからでもハナハナに帰らしてやるよ。ただし運賃は高いけどねw」


「ありがとう。」


 ユウが泣きながらお礼を言った。


 高慢ちきな態度だったユウがいつの間にやらしおらしくなっていた。泥棒トシコはあまり好かないけど、今回はよくやったと言いたい。



 *



 トシコとユウのせいで、目の前に海がありながら宿に缶詰状態にさせられてしまった。宿から出たのはユウの乗船手続きで船に行った時だけであった。ちなみにユウはわたし達の一つ下の年であった。まあ生意気な妹が一人できたって感じかな。


「ねえ。ホノカ。みんな冒険者なのになんでトシコとエリナだけ職業が盗賊なの?」


 わたしの部屋に遊びに来たユウがわたしに尋ねた。


「ああ、あいつらは強盗を生業としていた本物の盗賊だからね。それにしてもよく分ったね?誰も言ってないと思うけど。」


「うん。わたし、鑑定持ちなんだ。名前と職業ぐらいしか分からないけど。」


「え!そうなの。我がチームのリーダーの一号も鑑定持ちだよ。」


「そうなんだ!これってわたしオリジナルじゃないんだね。ちょっと残念。ところでなんでアメリの事を一号って言うの?」


「うん。アメリは実は多重人格者なんだ。男っぽい一号と女らしい二号とのね。しかもアメリの凄い所はね。あ、ユウは式神って知ってる?」


「うん。知ってる。人や動物の生きた人形を作る術でしょ。」


「さすがはジパン人ね。アメリの凄い所はね。ただの多重人格じゃなくて自分の分身も式神で作れる所なの。あ、ちなみにユウと同じジパン人のイサキは最大二人の分身を作れるみたいよ。」


「あ、やっぱりジパンの技なんだ。もしかしてイサキが教えたの?」


「うん。わたしは知らないけど、そうみたいよ。代わりにイサキはアメリに魔法とか教えてもらってるみたい。」


「ふーん。持ちつ持たれつなんだね。その式神や魔法だけど、わたしにもできるかな?」


「式神はね。アメリやイサキみたいな多重人格者じゃないとできないみたいだけど、魔法はできるよ。だってわたしだってできたんだから。」


「ホノカができるからってわたしができるとは限らないけど。わたしは頑張って覚えるわ。だってトシコよりも強くならないといけないからね。」


「何を考えてるのかは知らないけど、わたし達の敵は人じゃないよ。魔物だからね。そこんところを間違わないでよ。」


「わ、分かってるよ。ただトシコにも痛い目見させないとわたしの気が済まないだけなんだ。」


 わたし達は仲良しこよしの集団じゃないけど、確執ができるのは良くないわね。そう思い嫌がるユウを連れてトシコの部屋を訪ねると腰ぎんちゃくのエリナの他にアメリも部屋にいた。でもさすがに一人部屋に五人は狭すぎる。わたし達は意を決して宿の外に出る事にした。と言ってもトシコとユウのせいで監禁状態になっているから変装をしてである。各自部屋に戻ると変装をして宿のロビーに集まる事にした。


 全員男に変装したのだったが、王国人のアメリは男の服を着たぐらいでは素性を隠しきれなかった。しかも逆に男装の麗人と言う感じで目立っていた。


「あんた。二号でしょ?一号だったらこんな半端な変装しないもん。まず、あんたはその金髪が一際目立つんだから帽子で隠しなさいよ。それにその顔をなんとかしなさいよ。そんなきれいな顔の人はジパンのどこにもいないんだから。」


 そう言ってわたしは二号アメリを部屋に追い返したんだけど、変装しなおして出てきた二号アメリは今度はどこからどう見ても王国人の娘には見えなかった。顔はベールで被われていて、頭にはギャングが被るような帽子を深々とかぶっていた。しかし今度は逆の意味で目立ってしまった。つまり堅気には見えないのだ。妖しさ満点の不気味な人になってしまった。


「こ、これは・・・。」


「wwwwwwww」


 トシコとユウは必死に笑いをこらえていた。


「ちょっと!笑われてるじゃないの!」


「いや!良いよ!良いよ!ギャングのボスって感じで良いよ!」


 二人に笑われて二号アメリは機嫌を損ねていたが、時間がもったいないのでわたしはもうこれで行く事にして二号アメリをなだめた。妖しい人と思われても美少女戦隊とばれなければ良いからね。



 ********************************



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